よかったこと日記をつけてる?
永嶋良一
よかったこと にっき を つけてる?
『よかったこと日記』をつけてる?
私は毎日つけてるよ。
えっ、『よかったこと日記』って何だって?
『よかったこと日記』っていうのはね、その日の終わりに、その日一日を振り返って、「ああ、あれはよかったな」って思うことをさあ、何でもいいから日記に書いていくことなんだよ。
えっ、そんなに毎日よかったことなんてないよって?・・・
毎日、嫌なことばかりで、よかったことなんて一つもないよって?・・・
私にもそんなどうしようもない嫌な日があるでしょうって?・・・
そりゃあ、私にもそんな嫌な日は一杯あるわよ。
たとえばね、お茶くみの当番だったんで、みんなにお茶を入れて持っていったら、先輩のスカートにお茶をこぼしちゃったとか・・・
伝票のコードを間違えて発行しちゃって、経理から散々絞られたとか・・・
コピーを頼まれて、カラーコピーを取って持っていったら、白黒でいいのにもったいないって叱られたとか・・・
いつも乗る電車に乗り遅れてしまったとか・・・
同僚の女子社員に意地悪されて、口紅を隠されたとか・・・
上司から突然、残業するようにって言われたとか・・・
こんなのってね、一杯あってさあ、とても書ききれないよね。
そうなのよ。嫌なことって、不思議なことに毎日、毎日、一杯起こるんだよねえ。それにさあ、嫌なことが一つでもあると、もう大変。その日一日、誰でも気持ちが沈むよね。そんな日は、私も今日は本当にどうしようもない一日だったなあって思うわよ。
だけどね、そんな、嫌なことが一杯あった日でも、『よかったこと日記』をつけてごらんよ。
えっ、そんな日はよかったことなんて一つもないんだから・・・『よかったこと日記』なんてつけることはできないって?
そうだよね。その気持ち、私にもとってもよく分かるよ。じゃあね、『よかったことなんて、何かあったかな?』じゃなくてね、『その日、一番よかったことは何かしら?』って考えてごらんよ。『よかったこと』はなくてもね、『一番よかったこと』なら必ずあるはずだよね。
何でもいいんだよ。あなたが、その日を振り返って、一番よかったことを思い起こせばいいんだよ。さあ、あなたには、何があるかな? 考えてごらんよ。
たとえばね、会社に行く途中の道に綺麗なお花が咲いていたということでもいいんだよ・・・
あるいは、朝、お化粧をしたときに、お化粧のノリがすごく良かったっていうことでもいいんだよ・・・
別に仕事で褒めてもらわなくても、普通に仕事をこなすことができたっていうことでもいいんだよ・・・
雨が降るって天気予報で言ってたので、傘を持っていったんだけど、結局、雨は降らなかったということでもいいんだよ・・・
何もあなたでなくてもいいんだよ。
電車の中でね、女子高生がおばあさんに席を譲っているのを見たということでもいいんだよ・・・
このようにね、あなたの周りの人にいいことがあって・・・それがあなたの『その日一番よかったこと』になってもいいんだよ・・・
別にね、人や生き物でなくてもいいんだよ。
駅のトイレに入ったら、昨日まで修理中で使えなかった個室が使えるようになっていたって、そんなことでもいいんだよ・・・
そんなことでも『その日一番よかったこと』になるんだよ。
どうかしら? そんな『その日一番よかったこと』はあなたにも一杯あるんじゃないかな? よ~く考えてみてごらんよ。・・・・・ほ~ら、私の言った通りでしょう。やっぱり、『その日一番よかったこと』はあなたにも一杯あったでしょう!!!
えっ、しかし、それは単に気持ちだけの問題だっていうの?
そうなのよ。これは気持ちだけの問題。
だけどね、お金が儲かるとかさあ、時間を得したとかさあ、そういった実利がでなくても別にいいじゃない。なんにも得してなくても、とっても嫌なことが一杯あっても、『その日一番よかったこと』があればいいじゃない。
そしてね、さっきも言ったようにね、そんな嫌なことが一杯あった日でも、『その日一番よかったこと』は必ずあなたにはあるんだよ。
だからね、その日一日が終わるときに、『その日一番よかったこと』を思い起こしてごらんよ。そしてね、それを毎日、毎日、『よかったこと日記』に書いていくんだ。そうしてね、『その日一番よかったこと』をいっぱい、いっぱい、貯めていくんだよ。『その日一番よかったこと』の貯金をするようにね、あなたの『よかったこと日記』に貯めていくんだよ。
えっ、よく分かったって。
じゃあね、さっそく今日から私と一緒に『よかったこと日記』をつけていこうよ。私との約束だよ。今日からだよ。きっとだよ。
了
よかったこと日記をつけてる? 永嶋良一 @azuki-takuan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
のんびり古都散策/永嶋良一
★75 エッセイ・ノンフィクション 連載中 30話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます