ふわっとした

紫鳥コウ

01. あなたと繋がっていたくて――詩

なんであれ

悪口を言うなんて

わたしにはできないけれど

これを言えばわたしは嫌われてしまう

そう言い切れるほどのひどいことを

思ってもいないし思うはずもない

とびっきりのでたらめを

みんなに聞こえるところで

前おきもなく言ってしまいたくなる

みんなに見えるところで

前ぶれもなく書きこんでしまいたくなる


こんなことを言うわたしを

 あなたは受けいれてくれる?


賭けごとは嫌いだし

石橋はたたいて渡りたいし

自分ののぞんでいることを

むりにがまんしてでも

あなたと繋がりあえることを大切にしたい


それなのに

ふとした拍子に

これを言えばわたしは嫌われてしまう

そう言い切れるほどのひどいことを

思ってもいないし思うはずもない

とびっきりのでたらめを

みんなに聞こえるところで

前おきもなく言ってしまいたくなる

みんなに見えるところで

前ぶれもなく書きこんでしまいたくなる


言ってしまった

書きこんでしまった

そのあとのことを想像して

勝手に傷ついて

あなたに憎しみを覚える

あえて憎しんでみることで

大切なひとだということをいったん

わたしの想いから切り離したくて

そうすれば

あなたから嫌われてしまうことによる

死んでしまいたくなるほどのつらさを

いくらか軽くできると思うから


そんな予行練習を繰り返してばかり


わたしのことを嫌いなのではなかろうかと

疑ってしまうあまりに

わたしのことを嫌っていないのだと

安心したいあまりに

さりげなくさぐりをいれてみるのだけれど

その遠まわしのしかけが

あなたを傷つけてしまっていたことに

あとになってから気がついて

取り返しのつかないことをしてしまったのだと

びくびくして

気にしてないよの一言をもらえるまで

なにも手につかなくなる


あなたを独占したいという気持ちが

わたしの頭のなかを独占している

あなたを縛るがゆえに

わたしが縛りつけられている


わたしがあなたのことだけを考えつづけて

あなたはわたしのことだけを想いつづける

そんなことはありはしない

わたしとあなただけの世界というものがあれば

そういうこともあるのかもしれないけれど

そんなところはありはしない

わたしのこころに浮かぶひとは

絶えまなく移りゆくのに

あなたのこころには

わたしだけがあってほしいだなんて

わがままだ


そんなこと

わかってはいる

わかってはいるのだけれど

オトナになれない

わがままなコドモのままの

わたし

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