第1話 入籍は突然に
自分の婚約者が視線で私達の関係性の説明を求めているというのに、蒼空ときたら全く吉崎様を見ていない。
なんとなく昔の面影のある表情を見せるものだから、私は心の中で溜め息をついた。
「吉崎様。月島様と私は小学校時代からの幼馴染なんですよ。ずいぶんとお会いしてなかったのですが、まさかこんなところで再会するなんて思ってもみませんでした」
どうして私が説明しなければならないんだと思いながらも、吉崎様をいつまでも怪訝な顔にさせておくわけにはいかないと、私はざっくりとした説明をした。
別に過去に何かあったわけでもないのだから、事細かに説明しなくとも問題はないだろう。
私はそう判断したのだが、吉崎様は私には目もくれず、「蒼空さん、そうなの?」と蒼空の腕に手を回しながら上目遣いに聞き返した。
「そうですよ」
蒼空はさらりと温度のない声で答える。
これが自分の婚約者に対する態度なのかと、私は少し気になった。
「蒼空さんの知り合いなら、もっといろいろアドバイス貰いましょうよ。人数もプランも、本当は私、こっちの方がいいと思うのよね」
「いえ、それだけは変更なしで。他は由香さんの好きにしてかまわないので」
「どうしてそんなに小さく纏めようとするの?一生に一度のことなんだから、盛大にしたいっていう女心、わからない?」
「ではプランは引き上げてもらってもかまいません。人数だけは最小で頼みます」
「そこを最小にしてしまったら、全然盛大にならないって言ってるの!結婚式はある意味女の戦場なのよ?これでマウンティングされることだってあるんだから」
突然始まった二人の言い合いに、私は事が落ち着くまで口を挟まないことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます