4.本名

「ふぅ~」


私は息を一つつく。


今日は交換日記で本名を教える日。


交換日記を開くと、もう『ゼロ』くんの本名が乗っている。


二人は交換日記の隠し場所を決めていた。そこは、木の裏。


「あった」


当然のように交換日記はそこにあり、それをぎゅうっと抱きしめたあと、私はゆっくりとページを開いた。


一ページ目から振り返ると、楽しかった毎日がよみがえってくるようだった。


まず、零夜との絶交。彼とは連絡先を削除してないものの、連絡は取ってない。


でも、絶交の次の日にこの交換日記を見つけた。それが『ゼロ』くんとの出会い。


それから『うみちゃん』と名乗り、毎日交換日記を続けた。


でも、もう私は……『ゼロ』くんに恋をしてしまっているかもしれない。


確かに零夜のことは好きだった。でも、『ゼロ』くんが今は好き。


零夜は今も好き。『ゼロ』くんと話したから。


あー、もう!わからなくなってきた!


でも、まずはこの『ゼロ』くんの本名が気になる。


他校の人?知らない大人?後輩?先輩?同期?先生?


意を決して、ぺらりと最後のページをめくった。


「……え?」


真凛は固まった。お気づきの方もいるかもしれないが、真凛にとって一番予想外の人物だったからだ。


「海里、零夜……」


そう。ノートにはそう書かれていたのだから。


『俺の本名は海里零夜。知ってるかな?この学校の人だったら知ってるかもね。うみちゃん、本名、教えてください。待ってる』


まさかの零夜だったのだ。零夜と喧嘩して、その傷を癒してくれたのは『ゼロ』くん、いや零夜。


これじゃあ零夜に傷つけられ、零夜に助けてもらってる。


ふふっと笑みがこぼれた真凛は、もう一度ノートに向き合って、なにやら文を書き始めた。


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