きらきらひかる、赤ちゃんが欲しい

秋雨千尋

こんにちは、あかちゃん。こんばんは、お星様。

 一月一日。

 ずっと好きだった人と結婚した。

 最高に幸せ。


 一月二日。

 引っ越しの片付けを一人で頑張ったから疲れてしまった。お夕飯をお弁当にしたら叱られてしまった。明日は頑張ろう。


 一月三日。

 五時間煮込んで作ったビーフシチューを五十秒もかからず食べ終わる旦那様。そんなに美味しかった?良かった。


 三月四日。

 なかなか子供が出来ない。年齢的な事もあるし少し焦る。今夜は通販で衝動買いしたセクシーな下着にする。


 四月五日。

 あの人の帰りが遅い。春だから飲み会とか色々あるんだろうけど、寂しい。


 五月六日。

 寝不足で接客を手抜きしたら怒鳴られて、土下座しろと言われたから「しね」と言ったら解雇された。新卒で十五年働いたのに上司はかばってもくれなかった。


 六月七日。

 部屋が散らかっている、風呂が汚い、飯がまずい、家でも化粧しろと旦那様に叱られた。言い返したら喧嘩になって、ババアのくせに家事もできないのかと罵られた。


 七月八日。

 旦那様が帰ってこない。


 八月九日。

 そろそろ子どもが欲しい。子どもがいれば全部うまくいくはず。旦那様も毎日帰ってくるし、一人でいても寂しくない。毎日寒い。あたたかい赤ちゃんと一緒に寝たい。 


 九月十日。

 あかちゃんほしい。

 あかちゃんほしい。

 あかちゃんほしい。


 十月十一日。

 奇跡が起きた。チャイムが鳴って玄関を開けたら赤ちゃんがバスケットに入ってスヤスヤ眠っていた。

 かわいいかわいいかわいいかわいい。

 神様からのおくりもの。


 十一月十二日。

 久しぶりに帰ってきた旦那様が、綺羅星とぅいんくるすたあを見てビックリしてすぐ出ていった。娘が可愛すぎたのね。


 十二月十三日。

 警察がやってきて、綺羅星とぅいんくるすたあを返すように言われた。なんで?どうして?旦那様と愛人の子だって。捨てられた腹いせにうちの前に捨てたんだって。入籍したその日にもう浮気してたんだって。うそよ。わたしたち愛し合ってるの、だからこの子が生まれたのよ、返さない。わたしの子よ。

 本当の母親が泣いて反省しているから、返せ?


 わたしはこの子と幸せになるの。未来を照らして、綺羅星とぅいんくるすたあ



 一月一日。

 警察の静止を振り切って赤ん坊を連れて逃げた女が死体となって発見された。赤ん坊は衰弱していたが一命をとりとめた。発見時、なにも出ないはずの乳房をくわえていた。

 本当の母親は赤ん坊の顔を見るなり引き取りを拒否し、彼女は児童養護施設に預けられた。逃亡中に怪我をしたのか、不思議なことにその額には

 星のような形のあざが出来ていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きらきらひかる、赤ちゃんが欲しい 秋雨千尋 @akisamechihiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ