第511話

「砂と情熱の国サンドリアにようこそ!!」


そう言ってビキニアーマーを来た褐色美女が出迎えてくれた。そう、俺達はサンドリア王国に到着していた。だがそんな魅力的な美女よりも気になる光景が美女の背後に広がっている。だから俺は思わずその人に質問してしまった。


「なぁ、あれは大丈夫なのか?」

「あれとは何でしょう?」

「いや、後ろに物凄い砂嵐が発生してるけど?」


そう、サンドリア国の入国場所では現在超巨大な砂嵐が発生していた。祭りの為に出ていたであろう屋台が宙を飛び、ついでに人も飛んでいる。あっ、旅人が巻き込まれた。


「かなり街に被害が出てるみたいだが?」

「いつもの事なので大丈夫です。」


お姉さんは平然とそう言った。これがいつもの事?この大陸は一体どうなっているんだ?


「元々砂嵐が発生しやすい地域みたいですわね。」

「や、厄災が暴れた影響が残っているのでしょうか?」

「違いますよ?」


えっ?違うの?重力を操る敵が暴れたからその影響で砂嵐が発生しやすいのかと思ったんだが?


「おや?砂嵐の中に人影が見えますよ?」

「本当ですね。何やら両手を広げた人が宙に浮いてます。」


リダとクリンの言葉に砂嵐をよく観察してみると、砂嵐の中央部分に本当に人影が見えた。なんかポージングしている気がするんだがあれは一体?


「あー、あれもいつもの事です。」

「だーはっはっはっはっはぁ!愚かな人間どもよ!俺の供物となる為に集まってくれてありがとう!その命有難く頂いて行く!!」

「あんな事言ってるけどいつもの事なのか?」

「はい、いつもの事です。」


肌が真っ黒で黄色い瞳をした赤髪の男が高笑いを上げながら人類殲滅を宣言しているが、いつもの事らしい。いや、これはさすがに異常だろ!!


「大丈夫ですよ。そろそろ来ますから。」

「来る?来るって誰が来るのかしら?」

「この大陸の英雄ですよ。」


お姉さんが太陽の方を見る。俺達もつられて太陽の方を見る。この街に在る一番高い建物、その頂上に太陽をバッグに人影が立ち上がる。


「むっ!!貴様!何者だ!」

「ゴミ屑に名乗る名前は無い!とう!!」


そう言って飛び上がった人影は、そのまま騒ぎを起こしている男に飛び掛かって行った。その手にはシミターという湾曲した剣が握られている。そして・・・・・・。


「さっさとくたばれこの雑魚魔人ガァァァァァァァァ!!」

「グワァァァァァァァ!!」


さっくりと魔人と呼んだ男の額にシミターをぶっ刺し。相当な憎しみが籠った表情で一緒に地面に落ちた。いや、なんであんなに怒ってんのあの人?


「お前等の!」ザクザクザクッ!「所為で俺は!!」グサグサグサッ!!「厄災討伐から今まで!」ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!「休みが無いんだよぉ!妻達との時間を返せ!俺の休みを返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「アジーズさんもうその辺で!もうそいつ死んでますから!!」

「・・・・。ほらね?簡単に解決したでしょう?あれくらいの魔人何てそこら辺に埋まってるんです。そいつらが復活する度に英雄さんが片付けてくれるんですよ。」

「どれだけの魔人が埋まってたら、あんなブラックに努めて狂気に陥った人になるんだ?」

「さぁ?どれくらい埋まっているのか私達も知りません。何せ生まれるたびに埋めて来ましたから。」


いや、そこは討伐して数減らして置けよ。なんでそんな簡単に埋めちゃってるんだよ。


「砂は売る程在りますから、封印の代わりにしたらしいですよ?」

「なんかあの人が可哀そうになって来ました・・・・。」

「あれ完全に狂気に陥っとるやん。SAN0になっとるで絶対。」


ベニとルリの目線の先では、今もなお恨みの籠った視線を事切れた魔人に向けながら武器を振るうアジーズと呼ばれた人が居る。あれ本当に英雄?悪鬼羅刹の間違いじゃなくて?俺には完全に鬼に見えるんだけど?


「さぁさぁそんな事よりこの街の名所を案内しますよ!」

「人一人の生活を奪っておいてそんな事よりって・・・・。」

「この街にはあの英雄と共に厄災を討伐した旅人さんの像が在るんですよ!!」


このお姉さん俺の言葉を完全にスルーしやがった!そんな事してるとその内あの英雄さんが闇落ちして復讐に来るぞ!!


「それがこの銀の像です!!」

「わぁー、かなり大きいですねぇ。」

「凄いドヤ顔をしているわね。」

「なんで銀で作ったんやろ?ここは銅か石ちゃうの?銀はやわいで?」

「どうせ本人が強く要望したんでしょ。あいつならやりそうだわ。」


お姉さんが案内してくれた先では、ピカピカと眩しい位に輝く銀で出来た巨大な像が立っていた。何やら仮面ラ〇ダーの変身ポーズを取っている。こいつの顔どこかで見た事ある様な?


「そしてあの像の前で同じポーズを取っているのがご本人です。」

「本人居るのかよ!」

「おんなじポーズをとって私が本家です!って顔してるわ。」

「通行人の人に笑顔を向けまくってますわね。」

「あの歯を輝かせるのはスキルか何かですかね?無駄なスキルも在るんですねぇ。」

「す、スキルは使い方次第ですから・・・・。」

「無理にフォローせんでええんやでモッフルはん。」

「そうですよ。それにあの人は凄く楽しそうです。」

「そう!この私が!この大陸を救った英雄の片翼!シルバーその人であーる!!」


うわっ!結構離れてたのにこっちの会話聞いてた!しかも歯をキラリと輝かせながら笑顔を向けて来るサービス付き!正直いらねぇ!っていうかこっち見るな!


「あっこっち来るわよ。」

「面倒臭そうだ。さっさと移動するぞ。」

「その必要はないみたいやで?」

「お前は!一体どこをほっつき歩いて居るんだ!!」


殺気。じゃなくてさっき居た魔人を滅多切りにしていた英雄さんがこちらに来そうになっていた奴に近づいて行く。英雄の怒りの表情にきょとんとした顔をする像の男。


「私の功績をこの大陸に始めて来た人々に語って聞かせていたのだが?」

「そんな事の為に持ち場を離れたのか!お前は私と一緒に魔人退治の途中だったろうが!!」

「私の威光を広める事により、魔人襲来によって傷ついた人々の心に安寧を齎しているのだ!そう!この厄災を倒したこの私が居る事によってだ!」

「その話は良いからさっさと次の魔人を倒しに行くぞ!さっさと来い!」

「放せ!私はまだ語り足りないのだ!」

「誰が待つか!さっさと終わらせて休みにするんだ!!」


砂の上に引き摺られた跡を残しながら2人は消えて行った。本当に大丈夫なのかこの大陸は?イベント何て出来るの?


「さぁ、お祭りの本会場はこの先の王都ですよ!移動には砂舟をお使いください!これより先の飛行は禁止となっています!」

「飛んじゃ駄目なのか?なぜだ?」

「上空は熱と重力異常で正常な空間じゃなくなっています。砂舟でしたら影響が少なく安全に航行出来ますので。」


バッチリ厄災が暴れた影響残ってるんじゃねぇか。魔人復活が多いのもその所為じゃ無いのか?


さてその砂舟と言う代物だが。広大な砂漠に住む砂鯨と言う生き物(魔物じゃない)の骨を使って作られた船になっている。骨格は骨で他の部分は木材を使用している感じだな。帆の柱なんかも巨大な骨で出来ているぞ。船の船首には巨大な骨製の槍が、後部には大きな銅鑼がくっ付いている。あれは何に使うんだろうなぁ。


「王都行き砂舟間もなく出発しまーす!お祭り参加者の方は無料ですので乗船をお急ぎくださーい!」

「ほらほらルドさん!早く乗りますよ!」

「そうです!早く会場に行きましょう!」

「ホームページでどこを回るか決めてるんだから、逃げられると思わないでね?」

「やっとルドきゅんとゆっくり絡めるわ。もちろん体も絡めるわよ?」

「だぁー!引っ付いて来るな!乗る!乗るから!」

「やっぱりルド兄はモテモテやなぁ。」

「お姉ちゃんは参加しないの?」

「うちは一緒に物付くれたらそれでええもん。」

「は、早く行きましょう。帆を張り始めましたよ。」

「やれやれ、空を飛べないとは私の存在意義が無いじゃ在りませんか。この憤りは主様を鞭で打って解消しましょう。」

「そんな馬の尻を叩くような鞭どっから持って来た!?」


ディアの振り回す鞭から逃げながらなんとか砂舟に乗船し、俺達は一路イベント本会場の王都に向かうのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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