第503話

後方で今日もいそいそと生産活動に勤しんでいた俺の元にローズが戦争勝利の報告と共に駆け込んで来た。どうやら厄災を倒せたらしい。


「勝ちましたよルド様!それとこちらも取り返してきました!!」


そう言いながら巨神の血晶を取り出して来た時は腰を抜かすかと思った。危うく注文のチャーハンを焦がす所だったわ。


「待て!落ち着け!解ったから一旦外に出てくれ!」

「どうしてですか?私頑張って貴方の力を取り戻して来たのに?なんでそんなに冷たくするのですか!!」

「今ランチのピーク中だからだよ!!周り見て見ろ!!」

「パパ注文まだぁ?」

「(;´Д`)」

「ルド君さぼって無いで早く料理作る!お客さんが待ってるわよ!」

「おーい俺のチャーハンセットまだぁ?」

「ラーメンと餃子!腹減ったよー!」

「無限に出て来る料理より手作りが食いてぇんだよぉ。」


そう、あのMPを消費すれば無限に復活する料理はバフ効果を選べたりもして便利なんだが、味の方が数段落ちる仕様になっていた。旨味UP何かのバフを付ければある程度改善されるが、それでもちゃんと作った料理の方がうまい。だからこそ、ビルダーの力で合成せずに手で作り上げてる訳だ。


まったくこんな忙しい時間に突撃してきやがって!まぁ取り返してくれたのは嬉しかったが、ちょっと状況を見て欲しかった・・・・。めちゃくちゃ客に注目されてるし、とりあえずさっさとインベントリに放り込んでおこう。


「あっ!」


俺や客たちの様子を見てさすがに状況が解ったのか気まずそうな顔をするローズ。ピークの厨房を止めたんだからこのまま逃がす訳にはいかんなぁ?


「ついでだからローズも手伝え!ほいチャーハンと餃子お待ち!」

「えっ?あっ?えーっと?」

「シアちゃんローズに配膳教えて上げて。」

「はーい!」


こうしてローズにも店が落ち着くまで働いて貰った。さすがに人や神と接する事の多い巫女。すぐに慣れて人気者になってたぞ。


店が落ち着いて詳しい状況を聞けるようになったのは、ランチが終って殆ど夕方に差し掛かってからだった。んでだ、戦争の詳しい状況を改めて、店の中で聞いた。


帝都の城門を破った後、影の奴はすぐに討ち取られたらしい。俺の昔の姿を取った奴は、ローズに力を剥奪されてかなり弱体化してたんだと。俺以外の小動物の姿になって逃げようとするも、長時間俺の姿を取っていた弊害で変身出来なくなっていたそうだ。それで逃げられないまま討ち取られたんだとか。ずっと俺の姿だったから全身凝り固まっちまったのかね?


でだ、戦況が悪くなるとすぐに笑の奴は影を見捨てて撤退。城に逃げ込んだのを王国軍はそのまま追撃した。王城に入り、抵抗する魔物兵を打倒しながら城の奥に到着すると笑と鏡を発見。


すると影が倒された事に怒る鏡と、仕方ないと笑う笑の奴が居たんだと。鏡の目的が影が取り込んだ神の力を影を通して自分の物にして、父神に会う為だったと聞かされたんだとか。あんな親父に会いたいとか鏡の奴の好みは一体どうなって居るんだか・・・・。いや、他人の好みに口は出すまい。


でだ、その目的を邪魔した笑は鏡に殺されたんだとか。そうそう、笑と影の奴は厄災は厄災でも分体だったらしいぞ?鏡が帝国の皇帝の体と影を分離して、自分の力の一部をそこに流し込んだんだとか。そんな事出来るんだな。


でもってだ。笑を殺した鏡の怒りの矛先は影を倒した旅人と王国に向かった訳だ。で、全軍対鏡の魔人戦に突入。鏡を額に装着した真っ黒いボスとの戦闘になったらしい。どうも鏡自体の主人格は女性で、男の方は晩年の皇帝を模した物だったらしい。


鏡は過去の映像と真っ黒い影の様な自分の体の一部を使って次々に眷属を作り出して軍団を生み出した。その中にはALO時代の俺達旅人の姿も在ったんだとか。これには攻め込んだ王国側も大苦戦!飛行船や兵器なんかも作りだしたからそれはもう城を完全に破壊する程の戦闘になったんだとか。


双方、消耗戦の様相を呈してきた所で俺がやって来た事で王国側は救われたそうだ。まずは用意していた食事アイテムが味方に強力なバフを与え、壊れた時にと思って作っていた武器の性能が過去に使用されていた武器を上回っていた。ついでに飛行船の装甲に良いかと思って作っていた装甲版は、敵の攻撃を防ぐのも良し、装甲版として使うもよしで使い勝手がかなり良かったんだと。


逆に過去からしか物を持って来られない厄災は、物を作り出すたびに自分の体を削っていたらしい。それで後方から次々送った物資の量に押され、眷属を碌に生み出す事が出来なくなって最後にタンケの狙撃に寄って額の鏡を叩き割られ死んだそうだ。もちろんこの厄災戦に参加した旅人全員に報酬が在って、タンケの奴は厄災武器を手に入れたんだと。どんな形にもなる影の武器だそうだ。いやぁ、俺も実際にこの目で見たかったなぁ。準備してた物も在ったんだが・・・。


「準備していた物ですか?」

「おう、イルセアやシアにアイギスに協力して貰ってな。作ってる物が在ったんだよ。」

「それはどんな物なんですか?」

「あー、裏に置いてあるんだ。ちょっと来てくれ。」


そう言って俺は店の裏にローズを案内した。そこには全身金属で出来た巨大なロボが膝立ちで座っていた。


「なっなんですかこれ!?鉄の巨人?」

「まぁその通りだな。鉄で出来た巨人だ。これで前線に出ようかなと作ってた。間に合わなかったけどな。」

「動力は私が魔法で、体の制御はシアちゃんが、武器関係はアイギスちゃんが、操縦はルド君が、ディアちゃんには索敵をお願いするつもりだったのよ。」

「どうやって使うのですか?」

「簡単に言えば鎧の延長なんだよこれ。」


パワードスーツって言えば良いのかね。俺の体に機器を取り付けて、体の動きに連動してロボの体が動く仕組みだ。パワーを出す為にイルセアの魔力を使って、短時間の飛行も出来る様に目指していた。各部間接に強度問題が出たから、そこはシアの魔法で補って、武器は作ることが出来ないからアイギスにお願いする感じだな。ディアにはレーダー代わりに空を飛んで貰って周辺状況を教えて貰うつもりだった。


「まっ、開発上色々問題が出てな。それで間に合わなかったんだ。」

「その問題とは?」

「シアとアイギスはともかく、動力係のイルセアは俺と密着しないと乗れない。さすがにそれはまずいだろ?」

「もう、気にしなくて良いって言ったのに。」


そうは言うがさすがに俺も動きにくかったからな。だからといってこれ以上大きくしようとすれば動かす為の力が余計に必要になって戦闘に耐えられなくなるし、どうするか考えていた所だったんだ。


「まっ、ローズが持って来てくれたこれのお陰でこいつはお蔵入りだけどな。」

「そうでした!早速使って下さい!」


じゃあ遠慮なく血晶を使わせて貰う。えっと確か飲み込めばいいんだったよな?ゴクリ。


「うっ!」

「ルド君!?大丈夫!?」

「パパ!」

「(; ・`д・´)」

「いや、大丈夫だ。腹の中が熱くなって来ただけだから。」


この感覚も久しぶりな気がするなぁ・・・・。おっ?


ピコン♪ 奪われていたスキルが元に戻りました。


「うっし!戻った!!」

「やったねパパ!!」

「お(・∀・)め(・∀・)で(・∀・)と(・∀・)う!」

「おめでとうルド君!」

「ルド様おめでとうございます!」

「あぁ、皆のお陰だありがとう。」


まだ事後処理している前線メンバーにも豪華な料理送ってやるか。さてと、ちゃんとステータスチェックしないとな。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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