第470話

処刑会場はなんと王城の中に在る中央庭園を開放して行われる事になっていた。現在見物人が入れるように城の門は解放され、稀代の悪女と言われている王妃の処刑を見ようと多くの見物客が中に詰め掛けていた。こここの国の重要施設だよな?こんな事して防犯は大丈夫なのかねぇ・・・・。


「こう人が多いと身動き取り難いわね。」

「いざとなったら巨大化して人の頭を跨ぐさ。」

「見えないー!」

「ヽ(`Д´)ノプンプン」

「はいはい。じゃあパパの肩に乗りましょうか。ほら頑張ってパパ。」

「あいよ。ほら2人共おいで。」

「わーい!人が一杯!」

「ヾ(*´∀`*)ノ」


俺とイルセアは旅行者の人が着るような頭まですっぽりと覆うローブを身に纏い会場に入っている。中に入るのにチェックも何も無かったからこそ、防犯の心配をしたんだなぁこれが。こんな怪しいローブを来た子供連れを通すか普通?



じゃあなんでそんな怪しい格好をしてるんだって?これだけ大勢の人の前で顔を出したらどうなるか分からんからな。なんせ俺達この大陸じゃ犯罪者扱いだから。自衛の為だよ。


「どうだシア?厄災は居そうか?」

「うーん、人が多くて良くわかんない!」

「アイギスちゃんはどう?」

「(<●>ω<●>`)じ──── ((-ω-*≡*-ω-))んーん」


どうやらまだ厄災は来ていない様だ。こんな美味しい場面を逃す訳が無いからどこかに居ると思うんだけどなぁ。処刑の瞬間に出てきたりするんだろうか?警戒しておこう。


「出て来たぞ!!」


見物客の誰かがそう叫んだ。すると、庭園から見える城の門が開きその中から兵士に連れられて1人の女性が歩み出てきた。その女性が、今から処刑されるにも関わらず胸を張り堂々と歩いて来る王妃様が見物人たちを一瞥する。


その瞬間、会場の音が消えた。


着ている物は襤褸の服とも呼べない物。最低限体を隠すだけの物だろう。靴も履かず裸足のままだ。足と手には囚人だと示す為か、鉄の輪が嵌められていてその先に鉄球が繋がっている。


だが彼女はそんな物気にも留めずに堂々と歩いて来る。見に纏う物が襤褸だろうと、扱いが囚人だろうと、自分は王族なのだと。最後まで、王族として規範となるのだと、自身の身の振り方で示している王妃の凛とした姿に全員が話す事を忘れていた。


「あぁ言うのがオーラが違うって言うのかね?」

「もうすぐ自分が死ぬかもしれないのに全く怯んでないわ。自分にやましい事なんか無いって態度で示してるのね。」


イルセアの言う通り、何も恥じる事は無いとばかりに堂々と中央迄歩いて来る王妃様。その姿に見物客の中には免罪では?とまで言い始める奴も出始めた。


「クイナお姉ちゃんと同じだね!」

「°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°」


ん?クイナと同じ?どういう意味だ?


「あの人祝福持ってるよ!」

「(´―`*)ウンウン」

「つまりあの人がこの大陸の英雄だって事?」

「そうだよ!」


おいおいおい!イオク隊長が英雄だと思っていたが本当の英雄はこっちかい!だとしたら絶対に助けないとまずいぞ。英雄が居なくなったら、厄災が好き勝手に暴れて大陸が滅ぶって公式に書いて在ったんだから!!


「救出の合図はまだか!」

「まだ出てないわ。」


急がないとまずい事になるかも知れんぞ!早く騒ぎを起こしてくれバルド!!


一方、騒ぎを起こす予定のバルド達はと言うと・・・・。


「「どうしてこうなった!!」」

「こっちが聞きたいですねぇ・・・・。」


私達は仲間の手引きで王城の中に侵入していました。最初の予定では、引き連れてきた手勢と一緒にタイミングを見て兵士を襲い大きな騒ぎを起こします。城の兵士達が私達の襲撃に対応している間に王妃様とクインさんを助け出す手筈だったのですが・・・・。


「「ここに厄災が居る何て聞いてねぇぞ!!」」


そう、王城内に侵入して手頃な兵士を見つけたまでは順調だったのです。その後発見され易い場所まで拉致して倒れて貰おうとしたまさにその時。その兵士の姿がぐにゃりと歪んだかと思うえばバルドの姿に変わっていたのです。


過去の姿にしか変化出来ないと予想されている厄災。最初はなぜバルドの姿に化けられたのか疑問でした。ですがバルド自身がその答えを口にしたのです。


「「しまった!!俺姿弄ってねぇ!!」」


そう、バルドは旅人で言う引継ぎ組で在り、この世界に戻ってくる時にその容姿を全く弄っていなかったんだそうです。そこを厄災に突かれた形ですね。この人を今回の計画に選んだのは失敗だったでしょうか?


「まったく、すぐに飛び掛かるからどちらが厄災か分からなくなるのですよ?反省して下さい。」

「「うるせぇ!!敵が目の前に居たら殴るだろうが!」」

「普通は様子を見ますよお馬鹿さん。」


相手がバルドに化けたのなら別の者が相手をすれば良かったのです。ですが、喧嘩っ早いバルドがいの一番に殴り掛かり双方入り乱れる乱戦に突入。今やどちらが厄災なのか全く分からない状態となってしまいました。それこそが厄災の狙いだったのでしょうけどね?


「こんな時にイオクさんが居れば・・・・。」


厄災を見分ける眼を持つイオクさんは、王妃様救助の為の退路を確保する為に別動隊として動いて居ます。私達もまさか王妃様が処刑される場ではなくこちらに厄災が来るとは予想していませんでした。


今連絡を入れたとしてもここに来るには時間が掛かるでしょう。その間に王妃様の処刑時間を迎えてしまいます。残念ですが、彼女に頼る事は出来ませんね。


「スクショという物を撮ってみれば良いのでは?」

「「こいつ俺のマネをしてスクショ出すんだよ!」」

「あぁ成程!昔の旅人も風景を切り取る術を持っていたそうですね。だから厄災も真似が出来るという訳ですか。」

「「なんで解説口調で喋ってるんだ?」」


しかも写真加工?と呼ばれる物を使って相手の方が影になるように写し取った風景が作り替えられているそうです。本当に面倒な相手ですよ厄災は・・・・。さて、時間も在りませんしどう致しましょうか?


「厄災がここに居てバルドのマネをしてくれるのであれば、王妃様の処刑を邪魔は出来ないと考えられますね。という訳で貴方達は他の場所で騒ぎを起こしなさい。ここは私がバルド達の喧嘩を見張っています。頼みましたよ。」

「はっ、了解しましたプリムラ様。必ず作戦を成功させて見せます。おい行くぞ!」


一緒に連れて来ていた者達が、私の指示を聞いてこの場を離れて騒ぎを起こしに行きました。それを見て先程からこちらを伺っていたバルドの片方が慌て出します。


「ちょちょちょっ!ちょっと待ってよ!ここはどちらが本物か当てるゲームをする所でしょう?なんで君達は僕を無視するのさ!もっと遊ぼうよ!」

「貴方のお遊びに付き合って居られないからですよ。それにあなたの遊び相手はそこに居るでしょう?」


ここに厄災が居るという事は時間稼ぎが目的だと推察出来ます。この厄災は頭があまり良く無さそうですので、別の厄災が入れ知恵でもしたのでしょう。


頭の切れる厄災は確実に王妃様の処刑を実行したいと見えます。つまり、厄災達にとって王妃様が一番邪魔な存在なのです。ならば、王妃様救出を優先するのみ。


「おっしゃ!!じゃあ俺はこの厄災を押さえておけば良いな!」

「えぇ、そのまま自分相手にスパーリングでもしておいて下さい。まぁ過去の姿でしょうが。」

「えぇ~!そんなの狡いよ!色々やって遊ぼうと思っていたのに!!もっと皆で遊ぼうよ!」

「うるせぇ!お前は俺と喧嘩してりゃいいんだよ!!」


厄災に殴り掛かるバルド。せっかく厄災が自分から正体を明かしたのに、又入り乱れての殴り合いを始めてしまって全て台無しです。まぁ、どんな相手に対しても引かずに己の信念を貫こうとする姿はとても素敵だと思いますが。早く私を倒して娶って欲しい所ですね。


「「なぜそこで頬を染める?」」

「気にしないで下さい。ささ、存分に殴り合って己を高めて下さい。」


そして早く私を打倒して下さいな。未来の旦那様。


さてそろそろ作戦開始です。王妃様を頼みましたよ、ジャイアント王国の盾神様。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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