第390話
「ちょっとベニ。成長し過ぎやない?」
「えへへ、さっきのボス倒したら色々と成長しちゃった。」
「まぁ、ものの見事に火力職ですわねぇ。盾はもう要らないんじゃありませんの?」
「この盾が無いとバランスが取れないんです。」
「この武器おっきいねぇ!」
「(((((((( ;゚Д゚))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル」
「そうだな。大分禍々しいなこれ。」
ベニが入手した厄喰いと言う武器なんだが・・・・。見た目は完全にあの金魚だ。金魚の口が砲口になっていて、尻尾の付け根を掴んで振り回すらしい。刃の部分は何処に行ったのかって?近接攻撃時には顔を覆うように大きな鰭が捻じれながら収束して槍になるんだよ。紫と黒のグラデーションが何とも怪しい雰囲気を出す槍になるぞ!!
「攻撃力1000とかぶっ壊れだよなぁ。」
「しかもチャージが進化して上がる攻撃力も増えとるやん。」
「それを補助するスキルも在りますわ。」
「そのうち盾がブースターになったりして・・・・・。」
「ちょっとクリン君?普通にありそうな事言わないでくれるかな?心を擽られたじゃないか。」
「カイト君そう言うの好きそうですもんねぇ。」
「MP回復効果も凄いよ?」
「(´―`*)ウンウン」
武器も合わせて成長したベニはまさに我がクランの最終兵器だな。さて、そんなベニを見て密かにライバル心を燃やしているお人が1人・・・・。そう、今回全く活躍できなかったリダである。
「むぅ~・・・・・。」
「まぁまぁ、今回はしょうがないじゃないか。」
「スキルをきちんと使いこなしていたらこうならなかったんです!!練習する時間さえあれば・・・・・。」
「もともとリダのスキルは環境も使って戦うスキルだって書いてあるもんな。」
「そうなんですよ!!本来なら海を割る事無く使える筈なんですよ!!」
リダの使う闘仙格闘術は自然環境も使って戦う格闘術の名前なんだそうだ。本当であれば海流を使って戦う事も簡単に出来る筈だった。だが、このスキルを覚えたのが先のイベントの後で、そのまま今回のカイトからのお願いを聞いたもんだから試す時間も練習する時間も無かった。その所為でスキルを覚える前よりも悲惨な結果になった訳だ。
「師匠に使い方を習おうとしても何処にも見当たらなくて。探していたら召集が掛かったんです!!今回活躍できなかったのはその所為なんです!!ルドさんは解ってくれますよね?」
「解ってる。解ってるから。次は期待しても良いんだな?」
「バッチリ任せて下さい!!次回迄には使いこなしておきますよ!!」
ふぅ・・・。これで不機嫌な猫も機嫌が良くなったしそろそろ下に降りるか。俺のHPも十分回復した。そろそろ下の階層に降りるか。
「病気が広まってるとまずいしな。」
「そうですね。急ぎましょう。」
「皆!今行くよ!!」
「魚人さん達も運び出さないと駄目よカイト君。」
「そこはルドさんにお任せですわ!!」
「おう!巨人の力見せてやるよ!!」
「わー!パパカッコいい!!」
「( ゚Д゚ノノ”☆パチパチパチパチ」
「なんや落ちが見えるなぁ・・・・。」
「私も同じ事思ってたよお姉ちゃん・・・・。」
26人を13人ずつ脇に抱えて立った俺に向かって、双子が不安そうに見上げて来た。そしてルリとベニが発した不穏な会話は現実になってしまったのである。何と!20メートルの巨体になった俺は階段を下りられなかったのだ!!普通に頭をぶつけた時はとても恥ずかしかった・・・・。
「ブハハハハハ!!ゴンッて!!ゴンッて言うたで!!」
「もうルド兄さん!ちゃんと周りを見ないと!!・・・ププッ!」
その所為でルリとベニには大爆笑され、他の仲間には謝られた。まぁ26人も1人で運ぶっていうのが無茶だった訳だ。ではどうやってこの負傷者達を運ぶのか?その答えを俺達は持っていたのだ。そう、ここでマロの登場である!
えっ?マロは半分生物なんだからロアみたいに溺れるだろうって?いや、こいつ元々バイクだし呼吸してないから。まぁそれ以前にロアは潜水形態なる物を持っていた。
つまり水の中でも普通に動けるのだ!水中でのマロの姿だが、ほぼバイク形態と同じだ。違いはと言えば浮遊装置が付いていた頭が持ち上がり上部から見たら三角形のボディになっている。サイドカーと本体が完全に一体化してとても広い空間が搭乗場所になり、透明なキャノピーで守られている。サイドカーの後部には移動用の水流ジェットが付いているぞ!インベントリから飛び出して、水中だと解ったらすぐに形態を変えたロアに俺達が驚いた。
登場場所は俺達が乗っても大分スペースが余るくらいだからな。倒れている魚人を20くらいなら寝かせられた。残りの6人はちょっと苦しいが俺が脇に抱えて運ぶ。少しの間だから我慢してくれ。
そして、ボス部屋から階段を下りて行った俺達が見たのは・・・・。変わらず青空が投影されている海底都市の天井と、枯れ果てた御神木の周りに倒れる魚人達の姿だった。そして倒れた魚人達の中に、カイトの探し人も居た。
「クロナミさん!!ミナタさん!!ミーノ!ロロ!フノノ!!」
名前を呼びながら駆け寄るカイト。その声に反応してクロナミさんだけが目を覚ました。
「なんだぁ?カイトの声が聞えたと思ったら違ったのか・・・。とうとうお迎えですかい?鮫の神様が迎えに来るなんて俺にはもったいないくらい豪勢な迎えだなぁ・・・・。」
「クロナミさん!俺です!!カイトです!戻って来たんですよ!!」
「・・・・。そうか、お前さんカイトか。久しぶりだなぁ・・・・・。」
とてもゆっくりと喋るクロナミさん。まずいな、普通に話す元気も無いのか。ちょっちシアちゃんや?こっち来てくれるかい?
「俺達も頑張ったんだけどすまねぇなぁ・・・。お前の帰る場所、守れなかったわ・・・・。」
「大丈夫ですよ。すぐ皆元気になりますよ。」
「・・・・もうな、手遅れなんだよ。最後の希望に縋ってここに全員集めたが、病気の進行が思ったよりも早くてな・・・・・。」
「そんな・・・・。」
まぁ見回した所ほとんどの魚人が真っ白に染まっている。普通だったら絶望的だろうなぁ。どうしたシア?あっそうそう、全力でやっちゃって。うん?あぁ良いから良いから。どーんと行こうどーんと。調整は頼むな。あとは俺が絞って・・・。さてと、これで準備は出来たな。
「最後にお前の顔が見れただけでも良かったよ。仲間も居るみたいだし、元気でやれよ?俺達は深淵から見守ってるからよ・・・・。」
「クロナミさん!!」
「あぁ、もう眼が霞んできやがった・・・・。俺もここまでだ、じゃあなカイト・・・・・。」
「クロナミさーーーーーん!!」
「そぉぉぉぉぉぉぉい!!」
ざぱぁぁぁぁぁん!!
「「「「「「「「「「「「すっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」」」」」」
「ふぅ、いい仕事したぜ。」
俺はシアが作ってくれた巨大な葉っぱをひっくり返して黄色い液体をぶちまけた。黄色い液体の洪水は倒れていた魚人達の体に襲い掛かり、どんどん口に入った。口に液体が入った魚人は倒れていたのが嘘みたいには飛び上がって驚いている。やったぜ。
「ねぇパパ?だーいせーいこー?」
「おう、大成功だな。」
「ぺっ!ぺっ!ぺっ!なっなんだぁ!?って巨人の兄ちゃんか?」
「久しぶりだな。どうだ?元気になったか?」
「あっ?確かに体が楽になってるような・・・・・。」
「よく効いたみたいだなぁ。“世界樹”の素材をたっぷり使った栄養剤はよ。」
「「「「「「「「「「世界樹!?」」」」」」」」」」」
盗み聞きしていた連中も驚いているな。あの金魚を倒した時にドロップした世界樹の苗、ここで使わせて貰ったんだぞ?クロナミとカイトが涙の再開をしている裏で、シアに頼んで御神木が在った場所に植えて、魔法で成長させて実まで作り上げて置いた。どーんと行ったぜ。天井に突き刺さってるくらいだからな。
「ちなみに、他のメンバーは完成した栄養剤を持って街に行ったぞ?」
「はっ!?いつの間に!!」
「葉っぱと樹液と果汁と果肉。世界樹の素材を余すことなく使った特製配合のビタミン剤だ。死んだ奴も生き返るんじゃないか?良くあるエリクサーの材料になるみたいだしな。」
「それは本当か?」
「音聞けば分かるだろうよ。」
街の各所から驚きと、喜びの声が響いて来てるからな。うんうん、さすが世界樹だ。いい仕事してくれてるぜ。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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