第245話

「なるほどなぁ・・・・。」


50年という長い期間行われていた戦争はアメロ法国が主導で引き起こした物だったみたいだな。戦争の前からチョコチョコとロロキー、ニノヒ、ソノーハの三国にちょっかいを掛けながら、裏で準備を着々と進めていたらしい。


そして俺達旅人が訪れなかった、もしくは不穏分子を入れる訳にはいかないと言っていた国を抱き込んで武装蜂起。自分達が受け入れなかったくせに、旅人のもたらした技術で発展している国に対して嫉妬心から戦争を始めたんだと。


まぁ旅人が居なくなったから戦争を始めた、というのもあるみたいだな。なんせ旅人はすぐに強くなるし、成長の度合いによっては万の軍勢を一発で行動不能にできるからな。ビビって手が出せなかったみたいだ。


そんな旅人達が来れなくなったからと、戦争を吹っかけて領土を奪取。その勢力を勢いのままに広げて行ったのか。ニノヒとソノーハの領土が初期で結構取られてる。


そこで危機感を覚えたロロキーは両国に支援を開始。ニノヒとソノーハもお互い協力して戦い始めたんだな。旅人が居なくなっても技術は残ったし、ソノーハには万魔図書もあったから個々の力では三国が上。数ではアメロ法国連合が上という状態で膠着したと。


三国よりも人が多い事で戦争の維持費を賄えなくなってくる法国連合。逆に三国の方はしっかりと内政も行い兵士達を支援し続けた。このままいけば物資量の差で三国の勝利・・・・と言う所で法国が馬鹿な一手に出たのか。


それは神の石という名の、 “魔力が大量に込められた爆弾”に改造した人が首から下げられる魔石を人々に配って起爆させるという物。うん、人間爆弾だね。


神の石を使い敵兵を倒せば死後に天上に行けると謳って兵士達を爆破しまくった。さすがにそれは無いと巨神様達が否を出したんだけど、法国は耳を貸さないどころか巨神様達を邪神認定。神敵として三国にドンドン人間爆弾を送り込み始めた。


武装してない唯の一般人(兵士や志願兵の偽装)が突然街中で爆発する。しかも街を守る門や、城壁の傍で何十人も爆発すれば簡単にそれらが壊れてしまう程の威力だったらしい。


テロ戦法で拮抗していた戦力が法国に傾き、その勢いに乗って攻め始める連合側。逆に人を信じられず、疑心暗鬼になって協力関係を疑問視する声が上がり勢いを失っていく三国の人達。法国はその混乱に乗じてさらに軍を進めた。


そんな時にふらっと街に現れた熊人の魔法使いが、神の石を持っているかどうか判別する魔法を伝え歩き始めた。しかも、その神の石を無効化して動力にする技術まで一緒に広める。


後に賢者と呼ばれたその熊人は、疑心暗鬼に陥る街に積極的に赴いて神の石を無効化して行った。時折神の石を弄って真っ黒になっていたみたいだ。城壁を吹っ飛ばすほどの威力がある爆発を受けて無事だったと武勇伝として書かれている。うん、この人絶対ベアンさんだろ。間違いない。


神の石の対処が出来るようになってからは戦線がまた膠着状態に。三国側も被害が大きかったけど、法国連合も兵士を使い捨てにするような使い方で戦力が激減。その隙をついて三国は連合に反撃を始めた。


その時に活躍したのが鬼神と呼ばれるハルバートを振り回す男と、魔獣使いと呼ばれる老夫婦、一夜街と呼ばれ今でも残っている街を作り上げた大工、韋駄天と呼ばれたどんな所にも補給物資を運ぶ商人達だった。うん、全部心当たりあるぞ。親父とサンクチ夫妻とゲンさんとエンヤさんだろそれ。


取られた領土を取り返し、逆に侵攻を始める三国軍。それに慌てた法国は、その中心人物たちの出身地である城塞都市を攻める事に決めた。そこに住む人や家族を人質に取るか、街を滅ぼして心を折ろうとしたんだな。


神の石を大量に準備して城塞都市に攻め入った法国軍はまず黒くて固い城壁(黒龍城壁だろうな。)の攻略に苦戦した。神となった旅人(たぶん俺の事)が残した城壁は、持ち込んだ神の石の三分の二を使わなければ破壊できず、攻め入ってから一カ月かかってやっと破壊出来たんだと。俺の作った城壁すげぇな。あれただ握り潰して置いただけなんだぜ?


今度は兵士を犠牲にせずに起爆させて、城壁を突破した法国軍は城壁内部を荒らしながら第二城壁まで侵攻。といってもあったのは畑と物置小屋だけだったみたいだし、一カ月も外で軍が囲んでいたら物資や物なんかは綺麗に引き上げられる。何もない場所をただ進んだだけだったみたいだな。


次の城壁に取り付いた法国軍はそこでまた苦戦する事になる。うん、ゴーレム城壁だね。自動迎撃装置の付いた城壁は壁に近づこうとすると魔法で反撃する。まぁでもそこはさすが法国だったのか、魔法攻撃を無効化、もしくは軽減する結界を張って壁に取り付き、残った神の石で城壁を爆破して先に進んだ。ここは黒龍城壁よりも簡単に抜けられて、三日粘ったくらいだったらしい。物理攻撃よりも魔法攻撃の方が多かったのが問題だなぁ。物理攻撃は兵士がするようにしてたし。


それで、最後の城壁に近づこうとしたところで同じ道着を来た者達と交戦状態に入った。老夫婦が街の上役だと自ら名乗り、言う事を聞かせたかったら倒して見ろと啖呵を切ったんだそうだ。うん、シンハ夫妻と門下生達だね。


門下生達と法国軍との戦闘はなんと一カ月にも及んだ。しかも1回も第1城壁、つまり街の中に退避して休憩や補給を受けなかったって書かれてる。大分無理したんだなぁ・・・・。


でも数は力とは良く言ったもので、数の差で追い詰められたシンハ夫妻達は第1城壁の入り口まで追い詰められた。その時に、街の中からドラゴンと巨人族が現れて法国軍を蹴散らしていったんだそうだ。なんでも、多大なる恩がある旅人の故郷を守る為に、神の啓示を受けて馳せ参じたんだと。


巨人族は巨人の村の人達で、ドラゴンは公国と帝国の人かな?その光景を見てシンハ夫妻は遺言を残して息を引き取ったと書かれている。


ドラゴンと巨人族、果ては一部友好関係にある魔物達の協力を取り付けた三国軍はそのまま一気に攻め入り、連合国の国を次々に落としていった。


法国軍はというと、まさかドラゴンや巨人が敵に現れるとは思っていなかったのか首都に籠城。攻め入って来た三国軍と長い籠城戦を強いられる事になった。うん、法国って自国を守る結界を張れたんだってさ。そのおかげで戦争が20年長引いたんだそうだ。


引き籠るなら降伏しろという通知に一切耳を貸さずに結界の中で力を蓄えようとする法国。逆に三国は協力してくれた人々の力を借りて法国を完全に封じ込める城壁を作り上げた。それは神の石でも壊せないくらい固い城壁で、いっそ空も覆ってしまえと言う意見を取り入れて結界に沿って全て壁で覆ってしまったんだってよ。


困ったのは法国の人々、太陽も月も無い法国内部は明かりが不足。魔石を使った魔道具や、魔法使いが明かりを確保する事で何とかしていたんだけど、まぁ続く訳無いわな。亡命を望む一般の住人は壁を叩いて許しを願ったんだと。でも法国はそれを許さなかった。壁の近くに兵士を配置して逃げ出そうとした人を処分して行ったんだそうだ。


文字通りの暗黒時代と法国のあった場所に伝わる時代は、住人が武装蜂起して法王を打倒するまで続いたみたいだな。法王を倒して結界が解かれると、結界を支えにしていた壁は崩れて法国は解放された。


そして戦争を主導していた国が倒れた頃には他の参加国は全て三国が統合していて、三国も1つの国となる事で合意。世界を守った神の種族が巨人だったという事からジャイアント王国と名を改めて今に至るらしい。うん、めちゃくちゃ恥ずかしいなコレ。


「この国の名前はルドさんから取ったんですのね。」

「俺そんなに立派な人じゃないんだけどなぁ・・・。」

「何を言ってますの?世界を守ったんですから十分立派ですわよ?」

「・・・・ただただ恥ずかしいわ。」


とりあえずこれで歴史の確認は済んだ。後はイリノさんに親父達の墓の場所を聞くか。


「イリノさん、すみませんが親父達の・・・・あー、この本に書かれている英雄達の墓ってどこにあるか分かります?」

「英雄の墓ですか?それならばずっと見えていると思いますが、あちらになります。」


そう言って教会の窓の外を指し示すイリノさん、その先には城だと思っていた白い建物が見える。あれって墓だったのか!!


「なんでも、いつか戻って来る旅人がすぐに解るようにと建てられたそうですよ?」

「・・・・・ははは、親父。やりすぎ。」


イリノさんの言葉に俺は唇の端をヒクヒクさせながら苦笑するしか無かった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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