第212話

「お頭遅いの・・・。まさかシーは捨てられたの?」

「あわわわわ、それは違うと思いますよ?」

「多分船の改造でもしているんですわ。さっきのままじゃ私達と戦えませんもの。」

「しーちゃんなかないでー?」

「まぁ最悪迎えに来なかったら俺達が送って行ってやるよ。いる場所は解るんだろ?」

「うん・・・・。」


あの後、おやつタイムからシーちゃんがなぜカーラの仲間になったのかを聞いた。どうもシーちゃんはこことは別の海で暮らしていた人魚の子供で、売り払おうとした悪人からカーラが助け出したらしい。だがその頃のシーちゃんはまだ幼過ぎた。自分の元居た場所も、自分の名前もまだ言えなかったシーちゃんは家族の元に帰る事が出来なかった。


だがカーラはシーちゃんにシーと言う名前を付けて仲間として養う事を宣言した。それからはボンとカーラと3人で家族の様に過ごしていたらしい。海賊の真似事をしているのはカーラの趣味だとさ。実際に何かを奪えたら夜にこっそりシーちゃんが返しているそうな。


「生きて行くなら海の仲だけで十分なの!!海賊ゴッコはお遊びなの!!」

「まぁ食料は海の中の方が豊富でしょうから。」

「お宝も沈んだ船から回収すれば良いのですわ。」

「あれだけ海賊がぴったりな人も居ないと思いますが?」

「すっごいにあってた!!」

「本物だと思ったもんなぁ。」

「お頭は凄いの!!でもお頭達来るの遅いの・・・。」


とこんな感じで、カーラ達の話をしているとホームシックになったシーちゃんだったのだ。


「多分そろそろ来るんじゃねぇか?」


ザパァーーン


【シー!!迎えに来たぞ!!】

「ほらな?」

「お頭とボンちゃんなの?ボンちゃんに羽が生えてるの!!凄いの!!」

「あらま、本当ですわ。船の横に翼型の骨がくっついてますわ。」

「船尾の方にも似たような骨が付いてますが・・・あれは鰭ですかね?」

「かっこいい~!!」

【シーちゃん今行きますぞ!!】


海から飛び出して来たボーン・ダッチマン号の側面には大きな翼を模した骨がくっついていた。その骨が上下にゆっくりと動きこちらに向かって来る。なるほど、船尾の鰭は舵を取る為にくっついてるのか。


「それじゃあ上に出てお迎えを待つか。」

「うん!!ご馳走様でした!シーは帰るの!」

「しーちゃんばいばい。」

「また来てくださいね。」

「またお菓子を用意してお待ちしておりますわ。」

「元気でねシーちゃん。」

「うん!!」

「行くぞー。」


曲がり間違っても衝突しない様にリダに操舵をお願いして俺とシーちゃんは飛行船の上に出る。するとアルバトロスのすぐ横にボーン・ダッチマン号が横付けされた。


「シー!!」

「お頭なの!!来るのが遅いのよ!」

「あっぶない事するなぁ・・・・。」


ダッチマン号の甲板からこちらに飛び移って来たカーラ。一歩間違えばそのまま海に落下してたぞ今の。アルバトロスの上に降り立った彼女は駆け寄って来たシーちゃんを抱きしめた。感動の再開っぽいけど元々はカーラが忘れて行ったのが悪いんだぞ?


「大丈夫か?なんともないか?ひどい事されなかったか?」

「お菓子一杯貰ったの!美味しいジュースも飲ませて貰ったの!!」

「そうか、無事で良かった・・・・。」


うん、さっきからカーラの表情には母性的な物が溢れてますな。普段海賊っぽいのってキャラ作ってるのかね?


『どっちもお頭なんですよ。まぁ今の方が私は好みですが。』

「あっやっぱり?海賊家業はごっこらしいし、もう止めたら?」

『止めてしまえば密売や密貿易を抑えられませんので。』

「あー、もしかしてそっちが本命?」

『ですなぁ。』


いつの間にかボーン・ダッチマン号がアルバトロスに覆いかぶさるように上を飛んでいる。で、俺の上に船首に取り付けられたボンさんが居て事情を説明してくれた。


元々カーラ達はシーちゃんを助けた事で分かる通り、義賊としての海賊をやっている。海って結構広いから、海上での違法な人身売買や密売、既製品の密貿易なんかが起こっていたらしいのよね。そんでもってその中にはまぁ海の中に住む種族を勝手にとらえて売り払う連中もいたわけだ。


ボンさんを手に入れたカーラはシーちゃんを助けた事でその事実に気づき。シーちゃんみたいな子を出さない様にここらへんで海賊幽霊船の騒ぎを起こした。するとまぁものの見事にこんな危険な海域に居られるかってんで密売組織が手を引いたらしい。


まぁ手を引くまでにカーラ達が密売組織に再起不能なほどの痛手を負わせたってのも理由の1つになるのかな?でだ、カーラ達のおかげで海での違法なやりとりは激減した。じゃあなんで俺達が襲われたのかって話なんだけど、ありゃさっきシーちゃんが話していた通りに趣味だと。襲って奪って、夜には元に戻す。そして噂を流させて海で違法を働こうとする奴等を牽制する。結構良く考えられてると思うよ?


「えっとその・・・・すまなかった。」

「ん、まぁ実害も無かったし、理由が理由だし、シーちゃんから事情は聴いてるから気にすんな。しっかしいきなり船が飛んできてビックリしたぞ?」

『ほっほっほ!翼に込められた“飛ぶ”という思いを利用して飛行しているのですよ!いやぁ集めるのに苦労しました・・・。』

「集めたのは私だろうが!!」

『色々変な物を持ってきたから時間が掛かったんですぞ!!最初から私の話を聞いて置けばこんなに時間は掛からなかったんですぞ?お頭はもっと人を頼る事を覚えるのですぞ!!』

「えぇいうるさい!!その話はあとだ!!迷惑を掛けたわびに何かしてやる!!何が良い!!」

「いつものお頭達で安心するの。」


こっちをビシッと指さしながら顔を赤くしてそう言うカーラ。うん、身内のノリを見られたら結構恥ずかしいよね。さて、何かして貰うとして何をして貰おうか?


【ルドさん?エッチなのは駄目ですよ?】

「いや何でもするとは言ってないだろ?」

「何でもするぞ?」

「ん?今何でもって言った?」

【ルドさん?】

「冗談!冗談だから。まぁやって貰う事なんて1つだけどな。」

「何をすればいい?」

「海底に沈んだお宝を分けて下さい。おなしゃーっす!!」


空中都市作るのに金が必要だってんで沈没船探しに来たんだから。その目的を達成しないとね。


「そんな事で良いのか?まぁ案内するくらいは出来るぞ。でも本当にそれでいいのか?」

【それで良いのですわ!!早速案内して欲しいのですわ!!】

「仲間もこう言ってるんで早速だが連れてってもらってもいいか?」

「わかった、おーいボン!!先導するぞー!!」

『お頭は船遣いが荒いですぞ・・・。』


問う事で、無事にカーラの元にシーちゃんを返す事が出来たのでお宝探索に戻ります!!


「こっから潜るが本当に大丈夫なんだな?」

「あぁ、こっちの船は海中でも行けるぜ!!」

「じゃあボン、行ってくれ。」

『目的地、船の墓場に向かってヨーソロー。』


ブクブクと泡を立てながら沈むボーン・ダッチマン号。あっ横についていた翼は船の中に吸収されるように消えて行ったよ。


【ルドさん、こちらも潜りますわ。中に戻ってくださいまし。】

「あいよ。」

【せんすいすいっちおーん!!】

「まったまったまだ中に戻ってないから!!俺だけ死んじゃうから!!」ギィ、バタン、プシュー「ふぅ、あぶねぇ。」


操作室に戻った俺は今度は火器管制の席に着く。アルバトロスの操作は順番にやってるからな。例外は全部の操作を一度に出来るシアだけだ。


『ふふふ、海の中というのは楽しいものですね。』

「あっ、もはや置物になってる巨神様が久しぶりに声を出した。」

「ルド殿、巨神様に失礼ですよ?」

「ローズも巨神様の世話大変だよなぁ。」


はい、影の薄かった巨神様とローズですがちゃんと居ます。巨神様は人の形をとるのは結構力を使うってんで水晶の姿に戻ってる。でローズが水晶になった巨神様を持って色々と代わりにやってる感じだな。今はアルバトロスのお客様シートで海の中を見ながら座ってるよ。


「結構速いですわねあの船。」

「追いつけるか?」

「楽勝ですわ。出力上げて下さいまし。」

「了解です。」

「レーダーに今の所敵影は無いです。」


いまはルゼダが運転をしている。リダが出力調整、クリンがレーダーだな。俺もいつ戦闘になっても大丈夫なように準備しておくか。


しばらく海中を進む、すると海底火山が沢山ある場所に到着した。


【もうすぐ到着だ。ほら、見えて来たぞ。】

「おぉっ!!こりゃすげぇ!!」


先頭を行く船の甲板に立ったカーラが指さした先には、多くの船の残骸が積み重なるまさに船の墓場とでも呼べるような場所が広がっていた。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る