第199話


『すまんな。我が子の面倒を見て貰って。』

「大丈夫ですわ。だってこの子達可愛いんですもの。」


墜落したルシファーの近く・・・ではなく、ちゃんと着陸して整備点検中のルシファーの前で、ルシファーほどの大きさのドラゴンと、人のひざ下程の大きさの子ドラゴンが討伐隊と一緒にくつろいでいた。子ドラゴンは討伐隊が持っていた飛行船の模型を使ったゴッコ遊びに夢中だ。


「飛行船の模型を作っていて良かったです!!」

「うわー、堕ちるー!!」

『がおー!巣に近づく悪い奴は倒しちゃうぞー!』

『僕は正義のドラゴン!!むやみに他の人を襲っちゃダメなんだよ!!』

『ドラゴンってこういうのでしたっけ?』

「まぁまぁ、巨神様の居た時代と違いますから。」


仲良くルゼダやクリン、他の旅人と遊ぶ子ドラゴンとそれを温かく見守る親ドラゴン。そしてそんなドラゴンの様子に昔はこうじゃなかったなぁと遠い目をしている巨神様と、それを慰めるリダ。何ともほのぼのとした空間がそこに広がっていた。


「まさかドラゴンが会話できるほど知的な方達とは思いませんでしたわ。」

『かつての巨神戦争で世界の敵として戦った我らはあの戦いの後反省したのだ。たとえ生み出してくださった親を裏切ろうともこの世界で生きている物達と手を取り合わねば生き残れないとな。だから言葉を覚え、相手を理解して交流を図ったのだよ。』

「まさか飛行船で目的地に向かってたらドラゴンの群れに囲まれるとは思ってなかったからなぁ。」

「あの時は死んだと思ったっす・・・・。」

『ははは、すまぬすまぬ。なにせ久方ぶりの客人だった故、皆盛り上がってしまったのだ。』


そうあれはドラゴン討伐艦隊がドラゴンの巣に近づいた3日前、突然地上から多数のドラゴンが飛び上がってきて艦隊を囲んだのだ。即座に戦闘準備に入ろうとした討伐艦隊。だがそれよりもドラゴンの行動の方が早かった。


飛び上がったドラゴン達が喉を膨らませ、赤く輝いたと思えば吐き出されるブレス。防御態勢も碌に取れなかった艦隊の乗員は全員その時生存を諦めた。だがブレスは艦隊に直撃する事は無く、それ所か艦隊の上空に文字を浮かび上がらせた。


【ようこそ!!ドラゴンの治める国、ドラゴニア公国へ!!】


艦隊に乗っていた者たちが空を見上げてポカンと大口を開けていたのは言うまでもないだろう。


その後、艦隊が無事に着陸できる平原にドラゴンの先導で着陸し、ここまで来た理由を説明。まさか観光ではなく討伐が目的だとは思いもよらなかったドラゴン達が驚きに目を見開き、ルゼダが慌てて話が出来るなら討伐しないと説得し、今に至る。


「しかしこれではドラゴン装備は夢の又夢ですわね・・・。」

『なんだ?主らはわし等の素材が目的か?』

「そうっす。ドラゴン装備はロマンっす!!」

『だったら店で売っておるぞ?』

「「「「「「「なんですと!?」」」」」」」


現代のドラゴン達は空の神に従っていた時とは違い、人の社会の事も勉強した。その際に鍛冶や調剤等も学ぶ必要性を感じて人に近い形になろうと奮闘。そこに通りがかった賢者が人化の術を教え、その最初のドラゴンが初代ドラゴニア公国の代表として国を興した。


人化できるようになったドラゴン達はその姿で人の生活を学び、街を作り商業を起こして店を持つまでになったという。そしてその店では脱皮や生え変わりで取れた鱗や牙、爪なんかを加工して装備を売っているのだそうだ。


ドラゴニア公国は草原と森、そして中央に聳え立つ山脈で構成されていて。街は山脈の洞窟の中に作られているという。土人種から学んだ建築技術が、ドラゴンの暗く狭い所に巣を作るという習性に合っていたからそうなったと説明された。


『普段は人の姿で暮らしておるが窮屈でな。時たまこうして元の姿に戻って暮らしておる。中には人との間に子を儲けた者もおるよ。』

「だそうですよ巨神様?」

『そうですか・・・。ここにも私の思いを引き継いだ者達が居たのですね。』


話を聞いていたリダと巨神様は何処かしんみりとした雰囲気になっている。だがその後ろは違った。


「お前等ドラゴン装備が欲しいかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「「「「「「ほしぃぃぃぃぃっ!!」」」」」」」」

「お前等金は持ってるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「「「「「「「あるぅぅぅぅぅぅぅ!!」」」」」」」

「では全軍迷惑にならない様に店に突げぇぇぇぇぇぇぇき!!」

「「「「「「「わーーーーーーっ!!」」」」」」」


他のドラゴンから店の場所を聞き、その勢いのまま突撃していく討伐隊もとい買い物部隊。突然大勢の旅人に押し寄せられた店側が困惑する様子が目に浮かぶ。


「落ち着きの無い人達ですわ。」

「そういうルゼダも速く行きたそうにソワソワしてるけど?」

「これはどんな商品が在るのか気になるだけですわ!!」

「すみません、私達の仲間が騒がしくて・・・。」

『構わんよ。にぎやかで良い。』

『ふふふ、皆さん元気ですね。』


草原に残ったメンバーが残ったドラゴン達とゆっくりしていると、遠くに黒い影が飛んでいるのが見える。


「あれは何でしょう?」

『むっ、いかん。主らは早くあの空飛ぶ乗り物で逃げよ。』

「どうしたんですの?」

『あれはリュウジャ帝国の黒龍だ。恐らくわれらの元に来た客人を偵察。あわよくば連れ去ろうとしておる。』

「なんでそんな事しますの?」

『あれらは親の思想を受け継いだ者達だ。すべての命を消し去る為に人の知識を欲しておる。連れ去られれば何をされるか分からんのだ。我も子らを避難させる。急ぐのだ!!』


突然の敵襲、ドラゴニア公国のドラゴン達は旅人の事を心配して避難を呼びかける。だがお忘れだろうか?彼らの目的が何だったのかを。


「あれらは倒してしまっても問題は無いのですわね?」

『もとより我等と袂を分かたれた者達だ。妄執にとらわれ救う事も出来ぬ。』

「ウケンさん聞きまして?」

「おう!!早速こいつの出番だな!!」


するといつの間にかドラゴン装備を買い集めた買い物部隊の面々が草原に集結していた。


「さぁお前等!!ドラゴンスレイヤーになる機会が巡って来たぞ!!目標はあの黒龍!他の色のドラゴンさん達は仲間だから間違うなよ!!」

「戦闘要員はルシファーその他の飛行戦艦に乗って戦闘準備!!まずは撃ち落としますよ!!」

「ドラゴンの戦闘データは少ないです!!ブレスと爪や牙の攻撃に注意を!!翼での風起こしも甲板上では馬鹿になりませんからご注意を!!」

「引付役はルシファーに居るテッタがやる!!他の奴らは横からあの黒龍を叩け!!ドラゴン装備の初陣だ!みんな楽しめよ!!では戦闘準備!!」

「「「「「「おー!!」」」」」


ウケンの激励。メガネの指示、ノートの注意喚起、最後にウケンの号令で飛行戦艦は空中に上がっていく。その様子を唖然として見ていたのは子ドラゴンを逃がして彼等にも避難してもらおうと戻って来たレッドドラゴンさん。


『お前達はいつもあんな感じなのか?』

「まぁそうですわね。私たちは旅人、この世界には遊びに来ているわけですわ。」

「そしてドラゴン討伐は僕たちの中でも特に力のある、それこそ英雄が成し遂げる偉業として伝わってます。」

「ドラゴンを倒した人はドラゴンスレイヤー、もしくはドラゴンキラーと呼ばれて英雄の仲間入りをしたりするんですよ。」

『なんと、旅人にはそのドラゴンスレイヤーが何人も居るのか・・・・。』

「まぁ逆に仲良くなって背中に乗って一緒に戦うドラゴンライダー何て人も居ますわ。」

「全部空想上のお話なんですけどね。」

『ふむ、ドラゴンライダーか。我らの背に乗って戦うと・・・・。それは良いな。』


レッドドラゴンさんの目がキラリと光るのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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