第196話

シアからの連絡を受けて急いで雑貨屋に向かっている。だがその進行方向から何やらとてもどでかい物が当たりの物を蹴散らしながらこっちに向かって来るのが見えた!!


「なんだありゃ!?」


よく見ると蜥蜴の様なシルエット、だけどその身に纏う鱗は大きくそして固そうだ。そして逃げ惑う人々の波を掻き分ける為に5mまで巨大化した所で、あの巨体が何を追いかけているのかが見えた。


「親父にカマーンさんにシル!?一体どうなってんだ!!」


店に置いてあった荷車に親父とカマーンさんが乗り、シルが全力疾走でこちらに向かって来る。そのすぐ後ろでデカい魔物が今にも3人を喰おうと口を開けて迫っていた。


「ありゃまずい!!巨大化!!」『こっちだシル!!』


逃げまどう人には申し訳ないが、あの巨体を受け止めるにはこちらも大きくなるしかない。20m程に巨大化してヘイトスキルを発動し、逃げるシルに声を掛ける。シルの方も俺に気が付きこっちに向かって走り。シル達を追いかけている魔物も一緒になって付いて来る。俺は盾を構えながら荷車事3人に転痛を使い、いつでも城壁が発動できるように準備をした。


「ルドにぃごめん!!」

『ルドにぃ!?始めてそう呼ばれたぞ!!』

「そんなこと気にしてる暇が在ったらあいつを止めてくれ!狙いはカマーンだ!!」

『妊婦を狙うとか性格悪いぞ蜥蜴野郎!!とりあえず止まれ!『城壁』!!』

「GYUOOON!!」


ドガガガガガガガガッ!!


巨体の突進力を考慮して縦横10m厚さ30mの城壁を生み出すルド。突進してきた蜥蜴は城壁にぶつかり止まるかと思えば、そのまま城壁ごとこちらに向かって突き進んでくる。


ピキッビシッバキッ!!


徐々にひび割れて行く城壁。俺は何時でも突進を受け止められるように腰を落とし腕と足に力を入れる。


バガンッ!!


とうとう城壁が割れ、その中から魔物が姿を現す。あの突進力のまま固い壁に当たったからなのか鼻先が潰れ血を垂れ流しているが、その目はまだ死んでいなかった。それどころか自分の邪魔をする奴への殺意で溢れた目をしていた。


『こいやゴラァ!!』

『GAAAAAAAAAA!!』


ドゴォーーーーーーン!!


城壁で突進力を削られたはずなのにその威力は凄まじかった。俺の足は石畳を割り、地面を削りながら後退する。巻き起こる土埃は俺と魔物の姿を隠した。


50mは引きずられただろうか?いつの間にか御神木の在る広場の入り口まで来ていた俺は、目の前の蜥蜴をどうするかを考えていた。なんせ俺には攻撃力が無い、受け止めたのは良いがこっから先打てる手は何もなかった。


土埃が落ち着き、俺達の姿が露わになる。なんと相手の魔物の潰れた鼻先が盾の間をすり抜けて体に当たっていた。正面を守っていた盾は魔物の爪が突き刺さり、左右にズラされていた。受け止める事に集中しすぎるあまり、盾を動かされた事に気が付かなかった。かなり頭の良い魔物なんだなこいつ。


『GRRRRRRRRR』

『はんっ、受け止められたのが不本意だってか。こっちだって盾壊されて不本意だっつうの!!』


耐久力∞のはずの盾に傷が付くどころか穴が開いた。これは単純に盾の防御性能が低いために起こった事だ。いくら耐久∞だと言えども、自身の固さ以上の攻撃を受ければ穴も開く。


『GOOOOOOOOOOOOOO!!』

『あっち!!あっち!!あっちぃ!!!』


相手の爪を盾で受け止めている現状、そのまま硬直状態になれば応援が駆け付けてこちらの勝ちだと思っていた。だが相手もそう考えたのか、突然潰れた鼻から火を噴きだし、俺の体を焼く。鼻から出る粘液(鼻水じゃないと信じたい!!)が着火剤なのかこびりついた火は消えずに燃え続け、いつしか状態異常『火傷』になってた!!


『徐々にHPが減る!?自動回復が間に合ってないのか!!』

『GYA GYA GYA GYA』

『笑ってんじゃねぇよこの野郎!!』


回復アイテムはログアウトする前に追加で購入してインベントリに入ってはいる。だが火傷と火炎攻撃がある分長期戦は難しいぞ。


『誰かこいつにダメージ入れてくれー!!』

『GYUOOOOOOOOOO!!』

『こら!!暴れんな!!こんの!!』


俺から攻撃が来ないと分かった魔物が、盾から爪を引き抜こうと暴れ始める。何とか抑え込もうとするが力も向こうのほうが上なのかこちらが振り回される始末。


『いい加減に!しろ!!』

『GYA!?』


爪を盾に絡めたまま俺は最大まで巨大化する。相手の体長はさっきの俺と同じ20メートル程、50mになった俺の目の前では、大きくなった盾に爪を突き刺したまま、下半身をプラプラさせる蜥蜴の姿があった。


『さぁこれで煮るなり焼くなり俺の自由だな?』

『GYA!!GYA!!GYAUUUUUUUUUU』

『ふははははは!!もう暴れても無駄だぞ!!こうなったら俺の方が力は強い!!』


何とか爪を引き抜こうと後ろ足や尻尾で俺の体を攻撃する蜥蜴。だがその攻撃は全て効かん!!いやちょっと痛いよ?ダメージ貰ってるし、でも火炎よりはましだ。


「おーい、ルドやーい。」

『あれ?シンハさん?どうしてこんな所に?』

「いやぁすまんの~。ルド君が留守の間に城壁が破られたんじゃ。わしとミオカがそやつの迎撃に出たんじゃが逃げられてしもうての。」

『あらま、そうだったのか。それでこの蜥蜴どうする?』

「捕まえたのはルドじゃから好きにしたらええぞ?素材取るならわしが協力しちゃる。」

『GYAU!!』


シンハさんには敵わないと思ってるのか何やらウルウルした目でこっち見始めましたが?いや、親父達を襲ったんだから許すはずないだろ?特に身重のカマーンさん狙ったのは絶対に許さんぞ?


「おうルド、そのまま捕まえとけや。」

『あっ親父。カマーンさんは?』

「大事を取って病院連れてった。ったく都市中大騒ぎだぞこの蜥蜴野郎。」

『GYAUGYAU!!GAUUUUUUU!!』


親父の冷めた目線が気に障ったのか再度騒ぎ始める蜥蜴。ってこいついつの間に尻尾を俺の腕に!!やばい爪が抜ける!!


『親父危ない!!』

「武器さえありゃお前何て雑魚なんだよ!!」ザシュッ!!

『GYAAAAAAAAA!!』


親父の手には愛用のハルバードが握られていて、一刀のもとに蜥蜴の首が落ちた。そんなあっさりと終わるとは思っていなかったのか蜥蜴の顔は驚愕に歪んでいる。


「ったく、あー、今後は常に武器を携帯しとくか。」

「ほっほっほ、お疲れ様じゃの。気がゆるんどるんじゃないかの?」

「その通りかもな。面目ねぇ。」

「守備隊の方ももう少し厳しくした方が良いかものう。」

「地竜に負けるくらいなら鍛え直しだな。あールド、助かった。」

『いやそりゃいいけどよ。なんか手馴れて無かったか?』

「そりゃお前過去に巣を1つ潰したからな。」

「地竜の巣を1つ丸々潰すなんて偉業、こやつしか達成しておらんからの。地竜の返り血を浴びまくって帰って来て、その真っ赤になった姿からリトルオーガっちゅう字名が付いたくらいじゃし?」

「あんまり茶化すなよ爺さん。」

「まぁそうなった理由も解らんでもないからの。これ以上は言わんて。」


さてさて、これで騒動も一段落したと思うけど、この死体どうすっかなぁ・・・。ん?


『親父親父。』

「なんだルド。」

『こいつ雌だ。』

「おうそうだな。あれが付いてないもんな。」

「馬鹿もん!蜥蜴はあそこを収納できるんじゃぞ?つまり別の理由でルドは雌じゃと言ったんじゃ。」

「あー、で?何を見つけたんだ?」

『こいつ卵持ってる。』

「「はぁ?」」


親父が首を一撃で切り飛ばしたから体の方は丸々残っていた。地竜なんて言ってたから興味があって体を調べていたら、お腹の所に袋を発見。その中には5つの卵が入っていた。


『もしかしてこいつ。餌探しに来た?』

「聞いた事あるのう。確か竜種は強い者を見つけるとその身を子供に食わせて力を付けさせようとする習性があるんじゃとか?」

「じゃあなんでカマーンを狙ったんだ?」

「血族でも良いそうなんじゃよ。つまり食べさせやすい赤子を狙ったんじゃろ。」

『うへぇ~。俺竜とは仲良く出来そうにない・・・。』

「同感じゃ。おそらくどこかでルバートに目を付けたこやつが、ルバートの血を一族に取り込もうと狙っておったんじゃろ。竜種は一度気に入るとしつこいからのぉ~。」

『つまりこいつは親父のストーカーって事か?』

「まさにその通りじゃの。」

「はた迷惑な事だな全く!!」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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