第182話

ジェット気流に乗った飛行戦艦の航行は順調だった。時折ワイバーンやグリフォン何かの飛行型魔物の襲撃はある物の、レイドクエストに参加しようって猛者たちが乗っているこの艦の火力の前に全てが沈んでいった。自動運転機能も問題無く使えるって事で地上に降りる事も無かったしな。


長い事戦艦の中に閉じ込められていると皆何かとストレスが溜まるよね。そのストレスの解消の為に魔物の襲撃は皆に凄く有難がられたよ。その所為で戦いになると獲物の取り合いとかも発生したんだけどね。


経験値やドロップアイテムは相変わらず攻撃を加えた人が持っていくから俺には一切入ってこない。まぁドロップアイテムは守って貰っているからと分けてくれる人も居たけどね。でもなかなか手に入らない素材って自分で使いたいもんでしょ?だから俺から遠慮してレア素材は貰わなかった。


俺も防衛に出たり、ルシファーの中にある訓練場で特訓したりと時間を潰して過ごしたよ。飛行船を何かの拍子に手に入れた時の為に運転方法を習ったりもしていた。


ローズやタイハクとも良く話していた。特に巨人の村に伝わっている巨神伝説について話を聞く事が出来たよ。まぁ内容はあの絵本とほぼ一緒だったけど少しだけ違う所が在った。それは予言が伝わっていた事だ。


蘇りし巨神、その血に宿りし死にて巨神にあらず。後継よ、死を調伏せよ。


この一文が最後に付け加えられるそうだ。何やら不穏な気配がするけど。一体何を言ってるんだろうと皆と頭を悩ませる毎日だ。


「パターンとしては復活した巨神が今回のボスって事なんだろうがな。」

「そんな簡単な話でしょうか?」

「情報が足りなさすぎますわ!!これじゃ考察も出来ませんわ!!」

「まぁまぁ、落ち着いてルゼダ。」

「申し訳ありません、我らに伝わっているのはこれが全てなのです・・・。」

「タイハクさんが謝る事じゃないだろ。」

「ちゃんとヒントを残していない先祖の落ち度ですわ。」

「もしくは残せなかった。ですね。」

「破壊神関係かぁ~。」


どれだけ過去の人は破壊神の事を警戒してたんだろうな?少しでも情報が渡らない様に気を配り過ぎだろう。それだけ頭が良かったのか?破壊神って粗雑なイメージだがなぁ。


『そろそろ到着するぞ。各員下船の準備だ。』


あーでもないこーでもないと話していると、目的地にしていた巨人の村がある山の麓に到着した。ここはタイハクさんが村の巨人を閉じ込める為に封じた入り口がある場所だった。


降り立った所は広い草原になっていて、そこから山の上の方の様子を見る事が出来た。山の上には雪が積もっているのか白く染まっている。タイハクさんによるとあの山の天辺に湖が在り、そこが聖地何だそうだ。


そしてその山を囲う様に何やら重厚な石で出来た壁がずっと続いている。これは過去の巨人族が作り上げた物で、外からの侵略と、“中からの侵攻”を食い止める為に作ったんだそうだ。予言が在ったんだから何かしら対策くらいはして在るって事だな。


そんでもってその壁何だけどね?


ドガンッ!!ドゴンッ!!バガンッ!!


ずっと打撃音が鳴り響いているのですよ。まぁ上空から壁の中が見えていたから状況は解ってるんだけどさ。


「ミアズマが大分暴れてんなぁ。」

「ルシファーで降り立つ所を見られちゃいましたからね。獲物と思われたんでしょう。」

「村の住民が壁の破壊に来ているとは・・・・。」

「まぁまぁタイハクさん、ここは村人がまだ残っていた事を喜ぶ所ですわよ?」

「おうルド、『森の人』と『英知の図書』はルシファーで上空待機しておく。援護できそうなら知らせるから注意しとけよ。」

「おう、ウケンも気を付けろよ。壁役が居ないんだからな。」

「さっきここら辺のは粗方片づけたからしばらく大丈夫だろ。じゃあ頑張れ。」


ウケンとメガネ達はルシファーに乗り込み上空に飛び上がって行った。地上班はルゼダが指揮を取り、まずは壁を破壊しようとしているミアズマ:ジャイアントに対処する事になっている。


隊列を整え、いつでも戦闘状態に移行できるようにした所で、傍に来ていたローズに声を掛ける。最初は俺とローズで『後光』の効果を試すわけだな。


「ローズ、準備は良いか?」

「大丈夫ですルド様、いつでも行けます。」

「うし、巨大化」『タイハクさん門を開けてくれ!!』

『心得た!!』


ゴゴゴゴゴゴ


巨大化していたタイハクさんが、石で出来た門の封印を操作するとゆっくりと扉が開いていく。扉の隙間を注意深く見ていると、向こう側に居る体から黒い煙を立ち昇らせ、赤い目をした巨人達がこちらを睨んでいた。


扉が完全に開き切り、通れるようになると先を争う様にミアズマ:ジャイアントがこっちに向かって駆けてくる!!


『行くぞローズ!!『後光』発動!!』

『皆!!元に戻ってぇぇぇぇぇぇっ!!』


ぶわぁぁぁぁぁん


後光の名が刺す通り、俺とローズの背後から光りが広がり、目の前のミアズマ:ジャイアント達を飲み込んでいく。


光りの届いたミアズマ:ジャイアントの頭の上に何やら表示が浮かんだ。


浄化まで1:29:59


『ミアズマの浄化まで1時間半だ!!それまで粘るぞ!!』

「ルドさんは作戦通りお願いしますわ!!回復班は予定通りにルドさんのフォロー!!テッタさんは念のためにルドさんの後方で待機!!攻撃班は敵の妨害に集中!!周りを気にしなくても大丈夫ですわ!!私たちには頼れる盾が付いてますのよ!!」

『よっしゃーーー!!奥義行くぞ!!『城塞』発動ぉぉぉぉぉっ!!』


ズゴゴゴゴゴゴッ!!


地面から城壁がせり上がり、今回の攻略班をその中に閉じ込めて行く。次に指示を出していたルゼダの足元から塔が立ち上がる。せり上がった城壁には内側から登れる階段がニョキニョキ生えて、そこを攻撃班が昇って行く。


最後に俺の後ろに大きな扉を備え付けた城門がせり上がる。その上には回復職がいつでも援護出来る様にスタンバっていた。


「師匠大丈夫ですか?」

『MP全部持ってかれたが大丈夫だ!!それより来るぞ!!ローズも下がって後光を頼む。俺も発動を続ける!!』

『はい!!』


城門の前にローズが陣取り、後光の発動を続ける。ローズの前にはテッタが守るように立ちふさがり、そのさらに前に俺が居る状態だ。


城塞の上から状態異常攻撃の様々な光りがミアズマ:ジャイアントに降り注ぐ。効果が在るかどうかは実験できなかったが、麻痺や睡眠に掛り足が止まる敵が居るから効果は在るって事だな!!


「状態異常の効果を確認!!」

「麻痺と睡眠を中心に攻撃を続けますわ!!城塞に取り付きそうなら風魔法で吹き飛ばしてくださいまし!!間に合いそうになければ近接が城塞から引っぺがして!!」

『その前に俺が止めるがな!!』


ガインッ!!

『GUUUUU!?』


ミアズマ:ジャイアントは元が半巨人だからか3mくらいしか身長が無い。俺は10mまで身長を伸ばし、盾で襲い掛かるミアズマ:ジャイアントを弾き飛ばした。いやぁいつでも道場での経験は役に立ってるなぁ。


もちろん瘴気汚染の状態異常は貰うが、城門に待機している回復職がすぐさま浄化を掛けてくれるし、瘴気汚染耐性のおかげで前よりきつくない。


城塞の上から攻撃して来ようとするミアズマの動きを止めてくれるから今回の方がさらに楽なくらいだ。


だがここで問題が発生。俺は声でヘイトを稼いでいる関係上、声の届かない場所まではヘイトを稼ぐことが出来ない。その欠点を補うために毎度巨大化してる訳なんだが。


今回相手の数が多い上に声のでかい半巨人が相手だった。叫び声の大合唱を上げながら突っ込んでくるミアズマ達に俺の声がかき消され、後ろの方のヘイトが稼げていなかった。


俺に向かって来る集団の脇を抜ける様にミアズマ達が城塞に向かってしまったのだ。慌ててヘイトを稼ごうと思っても目の前に山ほどミアズマ:ジャイアントが居る為に声を上げようとして邪魔をされる。どうにかしなければと思っていた時に活躍したのがテッタとリダだった。


「『要塞の歌』『誘引の歌』ララァ~♪」

「『心当』(しんあて)!!吹っ飛びなさい!!」


テッタの透き通る声は相手の叫び声の中でも良く響いた。そしてヘイトを稼いだテッタの前でリダが新しく覚えた技でミアズマをこちらに飛ばしてくる。


『助かる!!俺も歌唱スキル取ろうかな!!』

「ボイストレーニング大変ですよ!!それでも良いなら僕が教えます!!ラァ~ラァ~♪」

「ルドさんの歌っている所が想像できません!!『心当』!!」


失礼な!!俺だってカラオケくらい行ったりするんだぞ!!えっ?採点機能?点数?・・・・・30点以上だとは言っておく。


数が多すぎて抜けて行く奴がちょくちょく出ているが、リダの対応を見た近接職がノックバックスキルを使って城塞から引きはがしてくれていた。城塞の方も何度かミアズマ:ジャイアントに殴られているが、俺のステータスが反映された上に、城塞の腕輪の効果のおかげで耐久値が2倍近くになっている。そうそう壊れる事は無い!!


『後30分だ!!皆頼むぞ!!』

「「「「『「「「『「「「おう!!」」」』」」」』」」」」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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