第180話
「おー、遅かったなお前等。」
「すまん、ちょっとトラブってな。それで?飛行船の状態はどうだ?」
「ばっちりですよ!みて下さいこの世界初の飛行船『ルシファー』の姿を!!」
飛行船の搭乗口に集まっていた面々と合流する。全員が完成した飛行船を見上げて驚きの声を上げていた。
メガネの説明によるとルシファーと名付けられた飛行船は全長330m、高さ70m、幅60mとほぼ大型タンカーと同じ大きさだ。
機関部は船の中心に備え付けられていて。舟艇の前後には2つずつ、計4つの浮遊機関が内蔵されている。燃料は空気中の魔力や魔石、搭乗員の魔力が使える。推進力としてジェットエンジンもどきが船の脇に備え付けられていて、船首脇から取り込んだ空気をそこから吐き出して進む。
武装としては船の側面に付けられた銃座から放たれる魔法弾。甲板備え付けられた1門16発発射の大型魔法誘導弾。魔力に余裕が無い場合の2連装無反動砲がある。銃座は側面に計8門。大型魔導誘導弾の発射台は艦橋を挟むように後ろに4門、前方に4門の計8門。無反動砲は飛行船下部と甲板に4門ずつ備え付けられている。
そして目玉は艦首に備え付けられた主砲だ。艦首中央のどこかで見たような穴から発射される波〇砲・・・じゃなくて魔道砲。船のエネルギーのほぼ全てを使って発射されるロマン兵器だ。これを使ったが最後、しばらく飛行できなくなるらしい。
搭乗人員は最大1万人の超大型飛行船がここに誕生した。メガネの説明を聞いて集まった連中、特に男性が歓声を上げている。まぁ男ならこういうの大好きだろうからな!!気持ちは解るぞ!!
「スピードはどうなったんだ?」
「開発部が頑張ってくれましたよ!!時速400キロを出せます!!」
「まっ、そんなに速度を出し続けるとエンジンがオーバーヒート起こして爆発するけどな。非常用だ非常用。巡航速度は時速300キロだ。想定していた通りだな。」
「それでも十分速いと思うぞ?」
普通の飛行船だったら確か時速125キロくらいか?倍以上何だから十分早いだろ。
「ルドさん達のおかげで外装が早々に出来上がったのが良かったですね。色々武装にも手を加えられました!!」
「無反動砲なんて当初使えないと思ってたんだけどな?万魔図書の知識で飛躍的に飛距離が伸びたんだよ。他の兵器も射程がかなり伸びて実用的な物になってなぁ。この都市の市長夫妻は一体どうなってるんだ?メガネ達と話をしただけで色々改善点出してやがったぞ。」
「あー、元々発明バカ夫婦何だよ。それがこんな物を作るって聞いて気合入ったんだろうな。」
「まぁそうだろうよ。これが飛び立ったらすぐに2番艦作るって言ってたからな。」
「万魔図書にもいつか行きたいと言ってました。」
あの2人があの図書館に・・・・・。『英知の図書』の二の舞になる未来しか見えん。城塞都市の運営も在るんだから自重して貰わないとな。
「旅人とは凄いのですね。まさかこんなに大きな船が空を飛ぶとは・・・。」
「手助けしたとは言え、信じられん光景だ。」
飛行船のスペックの説明を受けていると、そこにローズとタイハクが姿を現した。
「お2人をお待たせしてしまって申し訳ない。ですがこれで徒歩よりも早く巨人の村にたどり着けますよ!!」
「我々の為にそこまでして頂き、本当にありがとうございます。」
「私からも礼を述べさせて頂く。」
「我々の都合もありますから。気に病まれることはありません。」
「そうだぜ2人共。村を救ったらそこを拠点に色々冒険したいだけなんだからよ!!」
「俺は巨神の話に興味あるからな。聖地の問題を解決したらしばらく調べさせて貰うから良いんだよ。」
俺達の言葉に涙を浮かべて頭を下げる2人。さて、だいぶ時間は食ったがそろそろクエストを進める為に巨人の村に向かいますか!!
俺達を先頭に飛行船の中に皆乗り込んでいく。今回の主要メンバーは艦橋に、他のメンバーは客室に案内された。
艦橋は船の中央より少し後部に備え付けられている。そこから見える景色は絶景だった。運転を担当する英知の図書、森の人の面々は各々着席し、俺達も席に着いて出発の準備を眺める。
艦長席に座ったのはウケンだった。副艦長としてメガネが各員の動きをモニターしている。
「食料の積み込みはどうだ。」
「完了しています。」
「動力部とエネルギー伝達路のチェック。」
「問題ありません。」
「エネルギー残量はどうですか?」
「現在98%。稼働に問題ありません。」
「搭乗員のチェック。」
「機関士、運転士、オペレーター、監視員、戦闘要員、全て搭乗確認しています。」
「乗客のチェック。」
「今回のクエストに参加を表明した2000名、全員搭乗完了しています。」
「保安部に連絡。艦内の注意事項を乗客に伝達。立ち入り禁止区画の警備を厳重に。」
「伝達完了しました。」
「うっし!!それじゃあそろそろ炉に火を入れろ!!」
「吸気機構チェック良し。外気より魔力吸収開始、魔力転換炉起動します!!」
ヴオォォォォォン!!
「魔力転換炉正常起動。続いて魔導駆動機関に接続。」
ガチン、ウィンウィンウィンウィンウィィィン、フイィィィィィィィンッ!!
「魔導駆動機関の正常起動確認。浮遊ユニットに接続!」
「浮遊ユニット1番から4番正常起動。浮上、いつでも行けます!!」
「館内放送準備。」
「館内放送準備完了です。」
『艦長のウケンだ。これより飛行船は巨人の村に向かって移動を開始する。俺達の夢が詰まった飛行船の初フライトだ!!全員楽しめ!!大型飛行戦艦『ルシファー』発進!!』
「浮遊ユニット出力上昇!!浮上開始!!」
「各種計器正常稼働。高度100・・・500・・・・1000・・・5000・・・高度1万m到達。」
「ブローユニットに魔力伝達。エアタンク内圧力正常。」
「ブロー開始!!巡航速度300を維持、目標まで一直線に進め!!」
「ブロー開始!!速度上昇!50・・・60・・・100・・・200・・・300!!巡航速度300で固定!!」
「ふぅ、何とか無事に上がれたな。」
目の前で繰り広げられる飛行船の起動シークエンスに年甲斐も無くワクワクしてしまった!!クリンの奴も目がキラキラしている。解る、解るぞ!!これぞロマンだよな!!ウケンもテンション上がって飛行戦艦とか言っちゃってるし。まぁ武装積んでるから間違いでは無いかな?
他のメンバーも外の景色に目を輝かしている。上空1万mって言ったら雲の上だからな。目の前に広がる雲海に感動してもしょうがないと思う。
「これでしばらくは進むだけだ。特段問題が無ければ60日の旅だな。」
「ログアウトは大丈夫なのか?」
「運航要員は交代でログアウト出来る様になってる。もしログインが合わなかったら一度地上に降りる事になるだろうな。」
「一応自動航行システムを搭載していますので、私かウケンがログインしている時にテストしてみます。もし正常稼働する様でしたら地上に降りる必要は無いでしょう。」
「システム周りは突貫で作った部分もあるからなぁ。テストしながら様子見だな。」
それでも十分凄いと思うけどな。こんな大きなものが空飛んでるんだから。ローズやタイハクなんかも窓の外に釘付けだ。浮かび上がる時は結構緊張していたのにな。
「ルドさん、僕達も飛行船作りませんか?」
「確かに欲しいよな。こんなに大きくなくても良いから。サイズをちょっと小さくして、動かしやすい物が欲しいよな。」
「こんな高い物買える訳ありませんわ。値段は聞きまして?」
「いくら何だ?」
「一千億マネくらいか?」
「払えるか!!」
「国からの依頼を受けてたらすぐだぞ?」
「こちとら地方公務員だわ!!」
城塞都市の守備隊長の給料がそこまで高いと思うなよ!!前の金はしばらく貯金した結果なんだからな!!
「現実的に考えたら、ブリンガーを改造して宿泊できるようにする事ですかね?」
「キャンピングカーに改造か。それぐらいが無難だろうなぁ。」
「クエストが片付いて戻ったら市長夫妻に相談ですわね。」
「それはそれで色々盛り込めそうで楽しみです!!」
「くるまでおとまりするの?しあもたのしみ!!」
ブリンガーの動力がどれくらい出力あるかによって変わって来るよな。まぁ乗ってる感じかなり余裕がありそうだから大きく改造しても走る事は出来るだろう。無理なら動力部をメガネ達に改造して貰おうかな。
ビー!!ビー!!ビー!!
ブリンガーの改造に思いを馳せていると、艦内に警告音が鳴り響いた。
「どうした?」
「飛行魔物の襲撃です。」
「やっぱり来やがったか。各員迎撃用意!!ルド達も参加してくれ!!」
「よっしゃ!!どこに行けばいいか指示をくれ!!」
「ルドさんは甲板に出て魔物の誘導をお願いします。他の方々は指示した銃座と魔導誘導弾の発射席にお願いします。」
『艦内に連絡!!本艦は魔物の襲撃を受けている。迎撃に協力してくれるものは係員の指示に従って戦闘準備をしてくれ!!初手は艦搭載の兵器で数を減らすが襲撃数が多い。ルドに誘導を頼むから取り付いた魔物の殲滅を頼む!!以上だ!!』
「さぁて、ルシファーの初陣だ!!派手に行こうぜ!!」
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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飛行船の名前は適当ですw
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