第158話

「これは魔導王様、ご機嫌麗しゅう。」

「どの口でそれを言うかザコーノよ。お主が魔法を受ければこのような騒ぎにならなんだものを・・・。」

「それもこれも私を嵌め、ひいては魔道国に不利益をもたらす不届きな旅人を炙り出す為、是非ご容赦を。」

「魔導王陛下。此度は決闘の見届け人になって頂き誠に感謝いたします。」

「ゴレオンか。お主は良く国境を収めてくれている。このような細事に手を煩わせて誠に申し訳なく思う。許せ。」

「勿体なきお言葉。」


ハジンさん達が膝を着いて臣下の礼を取って王様と話をしている。あれが魔導王さんかぁ。一部の人達から大変人気が出そうですね。


「それで其方が他国の?」

「お初にお目に掛かります。ロロキー王国城塞都市ルド所属、第5守備隊隊長ルドと申します。以後お見知り置きを。」


俺は失礼にならない様に頭を下げながら自分の所属国と所属部隊を告げる。あーあ、ザコーノの奴まさか相手が他国の守備隊隊長だとは知らなかったのか目を見開いて驚いているよ。下手したら国際問題だしなぁ。


「他国の守備隊の者がなぜ我が国に?」

「城塞都市より使いとして参った次第。その最中にゴレオン殿の御息女を助ける事と相成りました。その犯人を捜していた所犯人と思わしき者の名前が上がり、取り調べをしようとすればお聞きになった通り拒否をされ決闘騒ぎとなりました。」

「なるほど。それは真かゴレオン?」

「はっ、間違いは御座いません。娘の証言もありますれば、この者達の目的も証明できます。城塞都市よりの書状を私がお預かりしておりますので。」


親父から預かった書状はソノーハ魔道国に在る工房への手紙だったんだけどね。きちんと任務として受けてるからには領主様に報告しとこうと思って見せたら、預からせて欲しいって事で渡してある。


「そなたが言うのであれば真であろう。では最後の確認だ。ザコーノよ、自白魔法を受ける気は無いと申すのだな?」

「はい魔導王様。私は何もやましい事がありません。ですので自白魔法を受ける必要性はありません。」

「その言葉が嘘でない事を祈っているぞ。では決闘の条件を確認する。」


ザコーノの要求は不当な罪をでっち上げられた事を理由に俺達全員の奴隷落ちと所持品の没収。俺達の要求は自白魔法を受ける事と、財産の全没収と貴族籍の剥奪と奴隷落ち。関与している者に厳格な処罰を下す事。


「そのような条件は聞いて居ない!!」

「黙るが良いザコーノよ。他国の守備隊長を奴隷とする条件を出したのだ。それぐらいの条件は飲まねばならん。」


他国の都市を守る重要人物の一人なのよ俺。しかもその都市からの正式な使者としてこの国に訪れている。そんな使者を一方的に奴隷にしようなんて言うんだからそれ相応のリスクを負って貰わないと。俺が守備隊の隊長と聞いて驚いた時に条件変えるべきだったねぇ?もう遅いけど。


「勝利条件は互いの戦士が戦闘不能もしくは場外になった場合のみ。友魔やそれに準ずる物は禁止。武器や防具は自身が身に付け持ち込んだものだけとする。スキルの使用は自由。このルールは間違いないな?」

「間違いございません。」

「・・・間違いございません。」


おん?ザコーノの奴まだ余裕の表情だな。その表情に気が付いてゴレオンさんの返事がちょっと遅れた。なんかあるんかねぇ?とりあえずシア、周りの警戒しっかりと頼むな。


「では両選手舞台に上がれ。」


舞台に上がる途中、無いか透明な膜の様な物を通り過ぎた感覚がした。たとえるならシャボン玉に指突っ込んだ感じ。これが死んでも大丈夫な結界かな?


【両者舞台の中央へ。】


王様の取り巻きの1人が魔法で審判をしてくれるらしい。俺は盾を準備しながら舞台の中央へ進んだ。俺の後ろで皆が応援してくれている。


相手の方は何やら鎖を使用人みたいな人が引っ張って中央まで持って来た。繋がれた人が怖いのか中央に立たせるとすぐに鎖を手放して離れて行ったけど。


【それでは決闘を開始する。始め!!】


バツンッバツンッバツンッ!!「UOOOOOOOOOOOOO!!」


審判が始まりの合図を告げたと同時に相手の拘束具がはじけ飛んだ。手足に鎖をジャラジャラつけたまま、俺に向かって突進してくる。いや白目だし牙むき出しだし涎は垂らしてるしでこえぇな。とりあえず一撃受けてみるか。


「UWOU!!」

「ふんっ!!」


相手の拳が俺の頬に突き刺さる。だけどダメージは軽微だな。すぐに自動回復効果で治る範囲だ。何度も何度も俺の事を殴るけど、俺に致命的なダメージは入らない。それ所か相手の拳の方が壊れたのか、血が噴き出し始めている。


「何をしている!!早くそいつを潰さんか!!」


何やらザコーノが叫んでいるけどこれなら俺何時間でも受け続けられるぞ?鎖を鞭みたいに使ってきたりもしたけどそれも全て受け止められるし。場外負けをしない様に気を付けるだけだしな。


「こうなれば仕方ない。“解除”だ。」

「UOOOOOOOOOOOON!!」


おっと~?巨人の血を引いてるってのは嘘じゃなかったのか。ザコーノが解除と行った途端に体が大きくなった。5mくらい?俺の初期の大きさよりデカいじゃないの。


「ふはははは!!これで貴様に勝ち目は無くなった!!さっさと潰れてしまえ!!」

「ふーん。こいつがどっから来たのか聞かないと行けなくなったなぁ。と言う事で巨大化。」

「なっなにぃっ!?」


相手の倍のサイズ10mになって見ました。いやぁここまで大きくなると決闘場の4分の1くらいを占拠しちゃうから動きにくいね。俺が巨大化したのを見て相手も動きを止めてるし。ってか泣いてないあれ?


「UUUUUU~。」

「どうした!!何をしている!!お前も同じ様にでかくなれ!!そして戦え!!」


ザコーノの指示で俺の体を殴るなり蹴るなりし始めるけど、まぁ効かないよね。


『そろそろ良いか?それじゃあまぁ、お疲れさん。』

「UO~N!?」


このゲーム、ATKが無いから筋力が無いわけじゃない。ほら別のゲームだったらSTRとATKが違うじゃん?あれだよあれ。このゲームだとSTRは秘匿データになってるけども。


だから攻撃力が無くても重い物は持てるし、ダメージは与えられなくても持てさえすれば岩とかも移動できる。まぁつまり俺よりサイズの小さい相手を捕まえて場外にポイしました。


【勝者ルド!!】


審判の宣言に唖然とするザコーノ。俺は場外に出したやつを巨大化したまま抱き上げて、ルゼダの元に運んだ。


『ルゼダ頼む、多分薬物だ。』

「任されましたわ。『清涼なる朝露』これで大丈夫ですわ。」

「あら?この人女性だったんですね。筋肉量が凄くて気が付きませんでした。」

「僕何か着る物を貰ってきます!!」

「おっきーい。」


恐らくザコーノが手に入れる前に薬を使って肉体改造されたんだろう。じゃないとあの色ボケが手を出さないはず無いと思う。ルゼダに魔法で薬を抜いて貰うと本来の体型に戻ったみたいだ。


黒ずんでいた髪は赤毛で、筋肉質ではあるけども女性的な部分はしっかりとその主張をしている。体中に古傷が在るけどどれもそこまで深い傷じゃない。それと一部が大変巨大です。まさにジャイアントサイズ。こらシア飛び跳ねて遊ぶんじゃありません。


『目を覚ますまで頼むな。』

「どこに行くんですか?」

『悪あがきしてるようだから止め刺してくる。』


俺の目線の先ではザコーノが喚きながら捕縛しようとしている騎士達を牽制していた。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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