第157話

「申し訳ない。」

「いやいや、領主様のせいではありませんから。だから頭を上げて下さい。」

「いや、魔道国の貴族の1人として謝らせて欲しい。本当にすまない。」


領主館に着いてさっき訪れたばかりの執務室に案内されて今この状況です。まぁねぇ、気持ちは分からんでも無いよ?


「それで、決闘の日時やルールは決まっているのですか?」

「決闘は都合がつき次第すぐに行う手筈になっている。ルールは1対1の代表戦、指定されたメンバーの中から1名を選出して決闘場での戦いとなる。今回は騒ぎを起こした旅人のリーダーと、問題貴族が用意した1名との戦いだ。勝敗は相手を戦闘不能にする事もしくは場外だ。時間切れ等も設定されていない。」

「使用武器に制約は?」

「武器や防具は持ち込みだ。貸し出しは無い。自身で持ち込んだものならどんな物でも使って構わん。」


おやおや、大分向こうに有利になるよう組まれてますなぁ。俺の情報が漏れてるとは思わないけど、だいぶ厳しいね。だって俺攻撃出来ないもん。


「友魔の扱いは?後気になるのはスキルの使用についてですかね?」

「参加不可だ。必ず代表者1人が戦う。スキルについては使用に制限は無い。いくらでも使って貰って構わない。」


狙うなら場外の一点のみかなぁ。うーむ、受けたくは無いけど受けるしか無いしなぁ。


「俺達が負けた場合はどうなるんです?」

「・・・君達全員の奴隷落ちが向こうの要求だ・・・。」


うっは、すがすがしいほどのクズ貴族!!だったら俺達にメリットになるように要求釣りあげちゃる。


「決闘を受けるのは構いませんよ?ですが俺達が勝ったら相手の財産は全部俺達の物にする事と貴族籍の剥奪。一族全員の奴隷落ちを約束させてください。この決闘に異議を申し立てない時点で同罪ですしね。」

「ちょっとルドさん!!決闘を受けるってルドさんは攻撃が・・・。」

「まぁ最悪場外で良いなら何とかなるさ。」

「解った。条件を相手に伝えよう。一族全員の奴隷落ちだけは勘弁してくれないか?中にはまともなのも居るのだ・・・。」

「でしたら犯罪に関わった物全員の奴隷落ちで良いですよ。」

「感謝する。では首都に移動しよう。こちらに転移魔法陣が在る。」


ハジンさんに案内されて転移部屋に移動した。いつか見たような魔法陣が床で光を放っている。


「首都の私の別荘に繋がっている。安心して欲しい。」

「領主様の事は信用していますよ。」

「お待たせいたしました。」


首都に行くのは俺達のPTとハジンさんとレイハさん、それとブリックスさんとアンジェリカさんに護衛の騎士達だね。レイハさんは今回の騒動に決着をつける為に何やらドレスアーマーを着こんで戦闘準備万端だ。レイピアの様な剣も腰から下げている。ブリックスさんやアンジェリカさんもバッチリ武装してるよ。


「レイハ、お前が戦う事は無いんだよ?」

「いいえお父様。都市の中での襲撃を体験したばかりです。相手が何をしてくるか分かりません。準備は万全にしませんと。それにお父様もその服の下には装備を着こんでいるでしょう?」

「ははは、バレたか。さすが私の娘だ。」


うっそそうなの?言われないと全く気が付かなかったよ。領主様も国境都市の住民が被害に遭って内心怒り心頭みたいだなぁ。


「それでは旦那様、転移を開始いたします。」

「あぁ頼む、残った者は都市の中の不穏分子の炙り出しと、これ以上騒ぎが起きないように警戒を頼む。ブロックス、頼んだぞ?」

「はっ!!行ってらっしゃいませ。」


魔法陣から光が溢れ、俺達の視界は一瞬だけ白く染まった。


「到着いたしました。」

「ご苦労。さぁ、王城に行くとしよう。」


光が収まるとハジンさんは俺達を城に案内する為に歩き出した。どうやら連絡や細かい手続きは終わっているみたいで、俺達は馬車に乗せられて城まで行くことになった。うーんこのデジャビュ感。アンザ家の人達の事を思い出すね。


「決闘場は王城内に在る。今回は直接向かう事になっている。到着したら君達の要望を伝えて相手が了承したら決闘が始まるだろう。準備は大丈夫かね?」

「了解です。準備はいつも万端にしているから大丈夫ですよ。」

「頑張って下さい!私達も応援していますから。」

「まぁ精一杯やってみますよレイハ様。」


城の門を潜りしばらく進むと、広い場所に出た。そしてその中央には石畳で出来た舞台が存在していて、その脇に何やら意地の悪そうな男がニヤニヤしながらこっちを見ている。その男の後ろには鎖につながれて目隠しされた大きな人が涎を垂らしながら唸り声を上げていた。


「あれが問題の貴族ですか?」

「あぁそうだ。ザコーノ男爵だ。」

「目線が気持ち悪いですわ。」

「ルドさん・・・。」

「大丈夫だ、俺達が居るだろう?それに俺が戦ってる間はシアに守らせるよ。」

「しあにおまかせ!!」

「僕も頑張ります!!だから安心して下さいリダさん!!」


うん、女性陣を舐めるような視線で見る男の視線にリダのトラウマが刺激されちゃったんだな。男の俺から見ても分かりやすい視線だなぁ。気色悪い視線で俺の仲間を見るなよぶっ飛ばすぞ♪


ガゴンッ!!


とりあえず男の視線を遮る為にあえて大きな音を立てながら盾を地面に突き刺した。女性陣の皆さんはその影に隠れてても良いですよー。おうおう、明らかに不機嫌になりやがった。


「お待ちしておりましたぞゴレオン殿。」

「ザコーノよ。女性をじろじろと眺めるのは貴族の礼儀に反するぞ。」

「いやはや、美しい物を愛でるのは貴族の努め、決してやましい気持ちはありませんとも。」

「ふん、どうだかな。それで、その後ろに居るのがそちらの戦士か。」

「はい、こやつはなんとあの伝説の巨人の血を引いた者になります。苦労して手に入れたのですよ。」

「貴様!!人身売買はこの国では違反だと知っての行動か!」

「おっと早とちりなさいますな。不当に奴隷とされていたこやつを私は救ったにすぎません。その恩を感じてこうして私の役に立とうとしてくれているのですよ。」

「何処に協力者を鎖で縛る者が居る!!戯言も大概にしろ!」

「ですが証拠はありませんでしょう?証拠が無ければ魔法を行使するしかない。しかし私はこれでも貴族、いわれなき罪で魔法を使われるいわれはありませんので。」


うっわぁ、勝ち誇ったようにニヤニヤしてるのが本当に気持ちわりぃなこいつ。それに巨人の血を引いている?そりゃ体はデカいけど2mほどよ?巨人の血が入ってるなら3mが最低ラインじゃなかったか?それとも俺みたいにサイズ補正付いてるのか?


「それで?私を嵌めようとした者はそちらの男ですかな?」

「どの口でそれを言う。嵌めようとしたのではなく全てお主の犯行であろうが。」

「まぁまぁ、ハジン様落ち着いて。俺が代表だ。文句あるか?」

「ふん、下民が頭が高いぞ。お前の様な奴は我が戦士が簡単に捻りつぶしてくれよう。」

「お前みたいな貴族もどきに下げる頭な無いね。」

「何だと貴様!!」

「貴族として扱われたいなら国境都市に配属される位になって貰わないとなぁ。」

「貴様!!不敬罪だぞ!!今すぐ処罰してやる!!」

【そこまでだ。両者控えろ。魔導王陛下の御来場である。】


まるで拡声器で大きくしたようなこえが決闘場に響いた。そして、決闘場を見渡す位置にあるテラスから大きな杖を持った人が出て来た。


周りには縁を金で彩ったローブを着た人達が固めている。杖を持った人は青い髪に金色の瞳、そしてすらっとした体を持つまさに少女漫画とかに出て来そうなイケメンだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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