第85話
あの後、撤退していった赤いゴーレムはそのまま帝国領内にまで逃げたそうだ。これを受けて王国では対空戦法を考える必要に駆られた。まぁすでに相手側に制空権を握られている状態だからな。急務でしょ。
そう思っていたらどうやら王国では自力で空を飛べる人なんてのが居るみたいで、そこまで深刻ではない模様。空を飛ぶ技を広める事で対処するそうな。
「しっかし、狙いはやっぱり村長だったか。」
「そうですねぇ。今後は戦場に出ないように言わないと。」
「だよなぁ。」
「フゴーッ!!フゴーッ!!」
んっ?なに?今の声は誰だって?あぁ、助けたお礼にって裸で俺に突撃しようとした師匠だよ。リダさんにどこから取り出したのか分からない麻布と紐でぐるぐる巻きにされて転がされているのだよ。
「自業自得です。良いですか?ルドさんに対しての過度なスキンシップは禁止です!!分かりましたか?」
「フーッ!!フーッ!!」
「ご理解いただけてないようなのでこのまま村まで運んでください。」
「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」
簀巻き師匠は自警団(女性)にそのまま担がれて連れてかれましたとさ。
「リダの嬢ちゃんが居れば俺も安心だなぁ。」
「えぇそうねぇ。しっかりしてるもの。良いパートナーだわぁ。」
「そそそそっそんあことは・・・。」
「噛んだ。」
「噛みましたね。」
「噛んだな。」
「もう!!皆してなんですか!!」
親父とカマーンさんの言葉に動揺したのか?大丈夫!!リダさんは唯一無二の俺の相棒だから安心しろ!!さてさて、今後の話をしますかね。
「ルドさんのその顔にもの申したい所ですが今は辞めておきます・・・・。それで次回攻めてくる時は多方面からの進軍でしょうか?」
「この村に村長が居る事が知られてしまいました。村を包囲してからの殲滅戦になると思われますわ。」
「こちら人数足りなくないですか?今回の件も僕達ギリギリだったのにこれ以上となると・・・。」
「一度撤退して立て直すのに時間も掛かるだろ。それまでにこちらも体制を整えれば良いんだよ。そんなに気負うな。」
まぁその意見にも賛成かな?それにゴーレムの素材が沢山手に入ったからね。防衛陣地を作り込むことも出来るだろうし。
「おーい、こっち手伝ってくれー!!」
「この素材を使って砦を作ります!!手伝って下さーい!!」
「よっしゃ、そういうのは得意だ!!」
「いつも発展クエストやっていますもんねぇ。」
「そういえば今回シアちゃんを見ませんでしたね?」
「あぁ、シアなら村の防衛に力を貸してもらってる。村の茨の防壁はシアが居ると強度と自由度が上がるんだよ。あの茨で攻撃出来たりするからな。」
「なるほど。」
さてと、それじゃあゴーレムの素材を回収して、砦建築と参りましょうか。しっかし結構な量あるなぁ。今日中に終わるのかこれ?
~・~・~・~・~・~・~
ニノヒ帝国の城内、ゴーレム格納庫。
「なんですって!!失敗したのですか!!」
「申し訳ありません。使用した旅人の力が弱く、思ったより戦果を挙げられませんでした。」
「ぐぬぬぬぬ。」
部下の報告を聞き、爪を齧る主人。しかし確認しないといけない事は多く、すぐにその所作を辞める。
「投薬の方は万全なのですね?」
「はい。奴らは我らの操り人形となっております。」
「亜空に逃げられることは?」
「ありません。ゴーレム内に復帰用の神器を仕込んでおりますれば。しかしよろしいので?旅人は神より遣わされた使者であったはず。このような扱いをしては。」
「構いません、赤落ち等使者でも何でもありませんから。これからもゴーレムのバッテリー兼補助頭脳として使い潰します。」
「御意に。」
2人が目線を向けた先、そこには逃げた赤いゴーレムと合体を解除したゴーレム達が居た。その背中は今開かれていて。その中には沢山のチューブに繋がれた赤落ち達の姿が見える。それはかつて武術大会でゴーレムに乗って暴れた副長とその仲間達の姿だった。
「まったく、自分の頭脳は明晰だというからこのゴーレムを任せたというのに。」
「とんだ期待外れでしたね。」
「しかし重要な情報を持ち帰ってくれました。」
「リク・ラカーの所在ですね?」
「えぇ、ゴーレムに仕込んでいた魔道具が彼奴の居場所を突き止めました。長年探していた人物の所在を掴んだのです。この件が終ったら解放してあげましょう。“首輪”付きで。」
「それも赤落ち故ですか?」
「えぇ、神より不要とされた者、どのように使おうと自由でしょう?」
高笑いを上げながらその場を後にする女、そんな女を見送りながら部下は背中に冷たい物が流れていくのを感じていた。
そして女は別のゴーレム格納庫に足を向ける。そこには女性的なフォルムで真っ白なゴーレムが鎮座していた。
「次は私自らが指揮を執ります。待っていなさいリク・ラカー。」
女の顔には隠し切れない笑みが浮かんでいた。
~・~・~・~・~・~
ふぃ~、疲れたぁ~。やっとゴーレムの素材集めと砦作りが終ったよ。今回の防衛線を行った所から村を囲う様にぐるりと砦を作れるくらい、ゴーレムの素材が在った何てびっくりだねぇ。まぁ20メートル級の岩巨人が数えきれないくらい居たんだからそうなるか。砦作るのにリアルで三日掛かったよ。ってかこれもう砦じゃなくて城塞だな。
城塞には村長が作った警戒用の魔道具と空中迎撃用のバリスタなんかが備え付けられたんだよね。ゴーレムの素体は城壁に、内部構造は武器になったって訳。
でそれらを一斉に制御するのはあの誘拐事件の時の神器です。いやぁ騎士団が村長に見て欲しいと運び込んだのは良いんだけど。扱えるのは村長だけになっちゃってね?
どうもそこら辺、秘匿技術の知識を持っているかどうかで判断されてたみたい。村長が神器から出された問題をポンポン答えて行ったらそうなっちゃったのよ。
慌てたのは騎士団の人達、ひとまず村長を王都まで連れてこうとしたんだけど、それは俺達ルド村の全員が拒否!!村長居ないと村が回らん!!んでもって村長も拒否した。
で、まぁ王様の所に直接書状を持っていって貰ったらそのままそこに居てOKが出たんだ。その代わり、村の防衛力をしっかり上げる事が条件って事で。ゴーレム式防衛システムが構築されたのだ。もうこれ村じゃなくて城塞都市だよ。
「村の範囲が広がって村長は喜んでいましたけどね?」
「その分土地が空きまくっててすっかすかだけどな。」
「城塞都市ルドと言う名前にするそうですよ?移民も受け入れるとか。ギルドホームの建築も出来るそうです。」
「あら、都市の方が先に城塞を引き継いでしまいましたわね?」
うるせぇやい!!この3日、ゲーム内では約18日間はこの砦の建設と物資搬入で忙しかったんだい!!あっギルドホームっていうのはギルドを作る時に一緒に出来るギルド専用の建物の事。
街や王都なんかはギルドホームを建てる土地がほとんど余って無いんだけど、今この場所には沢山土地が余ってるからね。有効活用をしないとって事で誘致を始めたんだと。まぁ防衛線に参加しなかった奴らは軒並み締め出されたけどね。複数のギルドから移転やギルド登録の話が出ているのを見たよ。建物の自由度が高いのが魅力なんだってさ。
「仕事は良いんですか?」
「盆休みだから無問題。」
「それ1週間も前ですよ?」
「忙しい人はずらして取るのよ?」
観光業や自営業、商店なんかは盆休み稼ぎ時だしな。まっ俺はどれでも無いんだけど。ちょっと仕事のスケジュールがずれちゃって・・・。
「まぁ良いじゃありませんか。そのおかげでこんなに早く出来上がったんですから。」
「相手さんもそろそろ動き出す頃だろうしなぁ。」
国境警備の騎士団が又帝国のゴーレム部隊が集まってるのを確認している。今度はなんと白いゴーレムらしい。しかも女性型。どんな性能なんだろうね?
「それでルドさん。例の薬試しました?」
「あー、一回だけな。もうちょっと練習が必要そうだ。」
「僕たちの切り札何ですからちゃんと使える様にしておいてくださいね?」
「ここで練習しても良いのでは無いですか?」
うーん、ここだとせっかく作った城塞が壊れる可能性があるからなぁ。うん、出来ないな。
「助けたあの薬師のお婆さんが送ってくれたんでしたわね?」
「そう、名付けて『巨人化薬』」
「そのまんまです。」
「そのままですねぇ。」
巨人化は元々してたじゃないかって?あれは元の体に戻ってただけで、実は巨人化でも何でも無いのだ!!小さくなった状態がデフォルトになってきているのは認めるけどね。
そんでもって送られて来た巨人化薬はなんと巨人の血に反応して体を大きくする効能を持っている。その大きさなんと21m!!ゴーレムとほぼ一緒だね。ご都合主義だね。
薬師の婆さんの秘密のレシピみたいで、村の防衛をしている事を聞いて何かの助けになればとお礼に送ってくれた。近々お弟子さんが城塞都市に引っ越してくるからいつでも手に入る様になるってさ。
体の大きさが変わるからちょっと動きに違和感が出るんだよね。3mならいつもの姿だから違和感ないんだけどさ。と言う事でちょくちょく練習してます。50本程貰ったからね。まだ余裕は在るよ。
「国境より連絡!!ゴーレム部隊動き始めました!!」
「防衛体制に移行!!城塞都市ルド起動するぞ!!」
防衛線に参加してくれた騎士団はそのままこの城塞都市の騎士として雇用されました。代表?村長だよ。いや今は領主って言わないとか。ここら一体のまとめ役に抜擢されちゃったからね。
「さてと、今回もうまく事が運べばいいけど。」
あっシア、街の事よろしく。
(´;ω;`)<マタデバンナイ
ゴーレム相手だからね、仕方ないね。
うあ゙ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゙ぁあぁ゙ああぁぁうあ゙ぁあ゙ぁぁ
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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