日記帳
綾月百花
日記帳
来週、私はお嫁に行きます。
家を出るので、部屋の片付けをしています。
懐かしい物を見つけました。
高校生の頃に書いていた日記帳です。
分厚いノートです。
表紙は厚紙でできていて、可愛らしいピンクの表紙です。
頁を捲ると、高校の入学式の感想が書かれていました。
制服が可愛い事や学校の机が今まで通っていた中学生の頃の物より、少しだけ立派だったこと。新しくできた友達のこと、引っ越しで新しい友達ができるか不安だったこと、部活のこと、彼氏のこと、進学のこと。
読み進めると、拙い文字で、文章も下手で、けっこう恥ずかしい。
途中で落書きもされている。
それでも、その年齢の時にタイムスリップしたみたいに、その頃のことが思い出される。
『10年後の私へ
何をしていますか?
どんな仕事をしていますか?
彼氏はできましたか?
今、幸せですか?』
ノートの最後の頁にそんなことが書かれていました。
高校生の頃の私へ
今、私はお嫁に行くためにお部屋の片付けをしています。
初恋だった涼君と来週、結婚するのよ。
あの日、あの時、痴漢に遭って、とてもビックリして、戸惑ったけれど、涼君が助けてくれた。
あれから、内緒で交際して高校生活を送ったこと。
大学生になって、私達は秘密の交際をやめた。
おおっぴらに涼君が、交際宣言をしたのだ。
同じ大学に進み、私達は愛を育んでいった。
大学生になっても、涼君はバスケット部を続けた。
私も新体操部を続けた。
互いに、大きな大会にも出た。
涼君の応援に行ったり、涼君が応援に来てくれたり、楽しく大学生活を送った。
相変わらず、涼君は人気者で、私は時々、不安になったりしたけれど、涼君はいつも、『好きな人がいるから』と断ってくれた。
私も告白されることもあったけれど、『好きな人がいるから』とお断りした。
充実した大学生活だった。
社会人になると、会社は別々になったけれど、それでも交際は続いた。
会社帰りに待ち合わせして、食事をしたり、素敵な喫茶店に寄ったりした。
自宅は近所だったから、一緒に帰ることも多かった。
そうしながら、愛を育んでいった。
私は去年のクリスマスの時に、涼君にプロポーズをされた。
もちろんに、即、OKした。
涼君は、すぐに私の両親に挨拶をしてくれた。
高校の時からお付き合いをしていたので、両親は安心したようだった。
私は日記帳を持ち帰る為の鞄にしまった。
これから、涼君と新生活が始まる。
共働きで、今までとは違う生活が待っているはずだ。
高校生の頃の日記帳を読み返せば、涼君と出会った頃の私に会える。
私の宝物にしようと思う。
日記帳 綾月百花 @ayatuki4482
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます