僕は幼馴染に裏切られた。俺はもう自分を偽らない。

お狐丸

1章 決別

第1話 僕はこうしてできた


佐伯涼真さえきりょうまと幼馴染の神崎唯奈かんざきゆいなは物心つくころからずっと一緒だった。

幼稚園、小学校、中学校、高校までずっと同じ場所に通い、毎日の登下校も離れることはなかった。あの日までは。



僕たちは家が隣でお互いの両親が仲がいいということもあり、生まれる前から関りがあったらしい。


そうすると自ずとその子供である僕たちは幼稚園も同じ場所に通うことになる。そして、僕たちは幼稚園でもずっと一緒にいた。このころはまだ仲のいいお友達だと思っていた。


小学校に入るといろんな子が増え、運動も勉強も得意だった僕の周りには女の子がいっぱい集まってきた。


そして僕と同じように唯奈の元にもいろんな男の子が集まってきていた。


そんな僕たちが付き合いだしたのは、小学校1年生のころからだ。


唯奈が側にいることが当たり前だった僕は、この感情が好きという感情なんだと思い、唯奈と付き合うことにしたのだ。


だから恋人というものはよくわからなかったけど唯奈のお願いはなんでもかなえることにしたのだ。


そして、付き合った日に唯奈はある要求をしてくる。


「りょうくんは、わたしとこいびとになったんだから、わたしのことをいちばんにかんがえて。」


「うん。わかった。ゆいなちゃんのことをいちばんにかんがえてこうどうするよ。」


「ほんと?じゃぁ、これいじょうりょうくんのまわりにおんなのこがこないように、ゆいないがいのおんなのこがきらいってまわりにいって」


「わかった。あしたほかのこにきちんというよ」



今思えば最初からおかしかった。でもその時の僕はそこに気づけなかった。

そこからは僕の周りには男の友達以外近づかなくなった。学年が上がるにつれて、いろんな女の子と話すことがあったが、すべて唯奈のいう通りに唯奈以外の女の子は嫌いだからと遠ざけていた。


そんな小学生時代を過ごし、中学に上がった時に新たな要求をしてくる。


「涼は頭もいいし、運動神経もいいから、テストでは平均点、運動も平凡な評価にして。絶対に目立っちゃダメだよ。あと前髪を伸ばして顔を出さないようにして。」


「うん。わかったよ。」



中学に入ったら、唯奈に告白する人が増えた。

僕は地味な恰好にさせられていたから、そんな恰好で唯奈の側にいる僕は周りの男子から嫌われていた。


それでも一緒にいてくれた友人がいたから過度ないじめを受けることはなかった。けど、そんな友人とも唯奈を優先しなければいけないため、あまり遊ぶことはなかった。


そして高校に入る前にまた変な要求をしてくる。


「明日から高校だけど、このつけ髭をつけなさい。ある程度買っておいたけど無くなりそうになったら買い足しておいてね。ちょっとでも不潔にみられて他の子が近寄らないようにしないと…。あと涼は背が高いから猫背でオドオドした感じで過ごしなさい。」


「あぁ。わかったよ。」



ここまでいろんな要求をしてくるのも僕のことが好きだからなのだろうと受け止めていた。

いや、この時にはもうそんな感情もなく”唯奈の言うことは絶対”だという洗脳状態にあったのだろう。そして、何の疑問を持つこともなく言うことを聞いていた。


そんな見た目のまま入学した僕はクラスでも浮いた存在になった。

僕と唯奈は同じクラスになり、いつも一緒に登校してくることで男子の反感を買ってしまった。


それでも中学の頃から僕と一緒にいてくれたある友人のおかげで、いじめと呼ばれるようなことはなかった。

ただ、隣のクラスや別の学年の先輩などから呼び出されて見えないところを殴られることはあったが。


そしていつものように過ごしていた5月頃、突然唯奈からの連絡が素気なくなったのだ。僕は少し気にはなっていたが、元々そんなに連絡を取ることは好きではなかったので、自分の時間が増えたとプラスに捉えていた。

そして数日後、決定的な出来事が起こることになる。


『忙しいから先に帰ってて。』


ある日唯奈からそんな連絡がきた。

今まで連絡が少なくなってきてもどれだけ用事で遅くなろうとも登下校だけは毎日一緒だった。

周りからは不釣り合いだとか馬鹿にされていたがそれでも唯奈と一緒に帰ることはやめなかった。というより唯奈がそれを許してくれなかった。


だからこそスマホに届いたメッセージに疑問をもった僕は、ふと窓から校門を覗いてみたのだ。


すると、そこにはかっこいいと噂されている男子に駆け寄る唯奈の姿があった。

その男子は、別のクラスから複数人で僕たちのクラスによく遊びに来ていたうちの一人だった。

うちのクラスに来るときは決まって唯奈と話していたのを見たことがあった。


そんな二人が一緒にいることを怪しく思った僕は、鞄を持って急いで二人を追いかけることにした。




この僕の行動によって僕たちの関係は大きく変わってしまうことになる。



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