アンドロイドはたまにしか笑わないが笑うとすごくかわいい
ヴァンター・スケンシー
第1話 幼馴染はアンドロイド
このままだと地球の環境が悪くなって人間が住めなくなるかもしれないらしい。
温室効果ガスを減らし、再生利用エネルギーを有効活用しながら生活をしていかなきゃいけないらしい。
どっかの国はミサイルを造って飛ばしてみたり、どっかの金持ちが自分のお金でロケットを造って宇宙旅行に行っているみたいだけど、まあそれもきっと人類の未来の為なんだろう。
人種差別も性別差別もなくして、見た目が男でも女と言ってる子は女の子と認め、色々長い名前の病名の病人はいたわっていかなきゃいけないらしい。
人工知能が人間を凌駕して人間の仕事は減っていくみたいで、これからは仮想空間で今の生活より愉快な生活ができるようになるらしい・・・・・・
そんなの、どーーーーーーーでもいい。
平凡な毎日をダラダラ楽しく過ごして何が悪いんだろう?
どうせあと何十年したら私は死ぬのに、必死に何かを変える元気や気持ちはどこから出てくるんだろう。
同い年くらいの環境活動家の女の子はすげーと思うけど、あの人の人生は本当に楽しいのかな?
TikTokでクソみたいな動画をあげてチヤホヤされるのも別に良いことだとは思ってないけど、少なくともブサイクな自分が可愛くなって喜んでる同級生の方が幸せに見えるのはなんでだろう?
来年私にも選挙権が与えられる。
『若者の選挙離れ』が問題で、若者が選挙に行くと世の中が変わると言っているけど、私は小さいころから多数決が嫌いだった。
小学校6年の頃学級委員長を決める時に、どう考えてもしっかりしてるヒロシくんより中学受験のためにどうしても委員長になりたかったヒロコが、スクールカーストを利用して学級委員長になったのをみて多数決ってなんてバカバカしいんだろうって思った。
ヒロシくんに投票した私と璃子とスガワラくんはクラスメイトのチクリでその後いじめにあった。
スガワラくんはサッカーをやっていて、元気で真面目で、すごく明るい子だったのに、夏休み明けから学校に来なくなった。
私もいじめを受けたけど全然平気だった。
学級委員長はヒロシくんのほうが絶対良かったと思っていたから文句を言われる筋合いもなければ、いじめを受ける筋合いもないし、そして、私には璃子がいたから平気だった。
私一人でいじめられたらスガワラくんみたいに円形脱毛症ができて、学校に来れなくなったかもしれなかったけど、璃子と二人だったから平気だった。
折原璃子とは保育園からの幼馴染だ。
私のお母さんも、璃子のお母さんもシングルマザー、しかも他のお母さんたちより圧倒的に若くて水商売をしていたから、周りからあんまりよく見られてなかったみたいだった。そんな雰囲気を感じて意気投合したお母さんたちはすぐに仲良くなった。
お互いお母さんが仕事をしていたから、都合が悪い時は璃子の家で晩御飯を食べたり、璃子がうちでご飯を食べたり、お泊りに行ったり、小さい頃は友達っていうか、同じ歳の姉妹みたいな感じだった。
でも正直言うと初めは璃子のことがあんまり好きじゃなかった。
無口だし、無愛想だし、はしゃぐこともしないし、何を考えているかよくわからなかった。
そんな璃子が初めて見せたはしゃいだ姿を忘れられない。
私がTVを見て小島よしおの真似をしてるのをみて笑っていた。
璃子はそれまでほとんど笑わなかったから、笑ったのがうれしくて
「りこちゃんもいっしょにやろうよ〜、ねえ、ほら」
嫌がる璃子の手を取り無理矢理
「ほら、そんなのかんけーねー、そんなのかんけーねー」
「はい」
「おっぱっぴー笑」
恥ずかしがりながらだけど、楽しそうに笑った璃子はすごく可愛かった。
璃子はたまに変なことを言う子だった。
保育園でもみんなと一緒にかけっこをしたりおにごっこしたりはしなくて、いつも鉄棒の前でぼーと立っているか、お砂場で一人遊んでいた。
「ねえ、りこちゃんなんでみんなとかけっことか、おにごっこしないの?」
「璃子ね・・・みんなとちょっと違うの。お母さんは段々慣れてくるから平気だって言ってくれてるんだけど、まだ上手くみんなと一緒に遊ぶの難しいんだ」
「りこちゃん、びょうきなの?」
「ううん、璃子ね。アンドロイドなの。」
「あんどろいど?」
「うん、見た目はみんなとほとんど一緒だけど、みんなとは違う生き物なの」
「へー・・・・」
子供ながら『ちょっと変わっているな』とは思ったけど、璃子は自分で言う通りに無愛想で無口なだけで他の子とそんなに変わらなかった。
ある日、お砂場でマコちゃんが何人かの子に砂をかけられていじめられていた。
マコちゃんは・・・・発達障害で何かといつもいじめられていた。
その日は砂場で3人の男の子に罵られて、砂をかけられていた。
『子供だから』『良くわかっていないから』そういう見方もできたかもしれない。
「なんでまこちゃんはみんなとおなじことができないの?」
「ままがいってた、まこちゃんはったつしょうがいなんだって」
「なにそれ?」
「しらない。けど、ぼくたちとちがうんだって」
「へー」
「はったつしょーがい」
そういってオサムくんは、足で砂を蹴ってマコちゃんにかけた。
マコちゃんはうずくまって大きな声で泣いていた。
私は気づいたらオサムくんを突き飛ばしていた。
オサムくんはすぐに立ち上がって、顔を真っ赤にして私に殴りかかってきた。
私はほっぺを殴られてマコちゃんの隣に倒れてしまった。
その瞬間・・・・・・
私の頭の上をものすごいスピードで飛び蹴りの姿勢で飛び越えていく璃子の姿が目に映った。
ぐちゃっ!!
璃子の飛び蹴りはオサムくんの顔面に炸裂した、オサムくんは漫画みたいにぶっ飛んで、鼻血がいっぱい出た。
あまりの出来事に周りに一瞬の静寂が起きた後、先生が叫びながら駆け寄ってきた。
すぐに先生に呼ばれて色々話を聞かれた。
先生「はぁ・・・今からお母さんたち来るけど・・・りこちゃんなんであんなことしたの?先生に教えて」
璃子「オサムくんたちが、マコちゃんをいじめてたの。それを彩ちゃんが止めに入ったら、オサムくんが彩ちゃんを殴ったから、璃子がオサムくんを蹴った」
先生「・・・オサムくんは先に彩ちゃんが突き飛ばしたって言ってるよ?」
彩「え・・だって・・・」
先生「彩ちゃん・・・突き飛ばしちゃダメでしょ?」
彩「・・・でも・・・」
璃子「砂をかけたり、マコちゃんのこと発達障害ってバカにしてもいいの?」
先生「え?」
璃子「マコちゃんいっぱい泣いてた。彩ちゃんはマコちゃん助けるために男の子3人に向かって行ったの。そしたらオサムくんが彩ちゃんを殴ったんだよ。彩ちゃんは悪くない」
先生「・・・それでも・・・先に手を出したらダメなの!!!」
璃子「先にいじめたのオサムくんたちだよ、言葉だったら暴力じゃなかったら何をしてもいいの?」
先生「・・・・・・・」
今思い出しても璃子は保育園児だとは思えない。
先生が璃子の言うことに反論できなくなっていった、お母さんよりもTVで話している大人よりも璃子の言っていることは正しいと思ってしまった。
璃子はカッコよかった。
ガチャ!!「すみません!!!!!」
お母さんが息を荒げながら走って職員室に入ってきた。
しばらくして璃子のママも来て、私と璃子とお母さん、璃子ママで先生に叱られた。
璃子はその間、一言もしゃべらずにずぅーっと不貞腐れた顔をしていた。
いっぱい叱られたあと、4人で一緒に帰った。
彩母「いっぱい怒られちゃったけど・・・彩よくやったね、彩はがんばったよ」
先生には叱られたけど、璃子とお母さんが私のやったことを間違ってないって言ってくれて嬉しかった。お母さんと手をつないで歩きながら、涙が溢れて声を出して泣いてしまった。
璃子「ねえママ、なんでマコちゃんはいじめられるの?」
璃子ママ「なんでだろうねぇ、マコちゃんはみんなとちょっと違うからなのかなぁ」
璃子「じゃあ、璃子もアンドロイドだからいじめられるのかなぁ」
璃子ママ「どうかなぁ・・・そうかもしれないね」
璃子と璃子ママが小さな声でそうやって話している声が聞こえた。
しばらく歩いていると、璃子が小さな声でつぶやいた。
「そんなのかんけえねぇ・・・」
それを聞いた私は
「そんなのかんけーねー」
「そんなのかんけーねー」
「はい」
「おっぱーぴー」
二人で小島よしおの真似をして大爆笑した。
璃子と一緒に小島よしおの真似をした後に行ったサイゼリアの晩御飯は美味しかった。
私は璃子とミラノ風ドリアを食べながら話をした。
「ねえ、りこちゃん、あんどろいどってなに?」
「うんとね、人間じゃないけど、人間に似ている生き物だよ」
「ふーーーーん・・・・・・・でも、そんなのかんけいないね笑、りこちゃんはりこちゃんだもんね」
「うん」
私の幼馴染はアンドロイドだ。
でも、そんなのかんけーねー笑
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