鬼のごんちゃんうさぎのたぁくん

良駒津シータ

鬼のごんちゃんうさぎのたぁくん

鬼のごんちゃんは体は大きいけど、いつもめそめそ泣いていました。

お話の中では鬼はいっつも悪者だからみんながごんちゃんをいじめちゃうの。

ごんちゃんが泣いているといつもどこかからかウサギのたぁくんがぴょんぴょん飛んでやってきます。


たぁ「こらー!弱いものいじめするんじゃないやい!」


たぁくんは体はちっちゃいけど、とっても強い。

ぴょんぴょん飛んでみんなをやっつけちゃうのです。


ごん「たぁくん、ごめんね。」

たぁ「謝るくらいならいじめられるなよ!」

ごん「うぅっ…」

たぁ「そうやってすぐ泣くからいじめられるんだぞ!」


ちっちゃいけど怒ると怖いたぁくん。

でもごんちゃんはたぁくんが大好きでした。


たぁ「ほら、帰るぞ」

ごん「うん」


たぁくんはいつもごんちゃんと手を繋いで帰ってくれるから。

ごんちゃんの手はとても大きくてゴツゴツしてて、他の子はみんな気味悪がっちゃうんだけど、でもたぁくんはいつも思いっきり背伸びをして、ごんちゃんと手を繋いでくれるのです。


ごん「たぁくん、いつもありがとう」

たぁ「ありがたくないやい」


たぁくんはいつもそう言います。

そう言った時ふわふわのたぁくんの手がいつもちょっとだけキュッとしました。


次の日もまた次の日もごんちゃんはいじめられて、その度にたぁくんは助けに行きました。


ごん「ねぇ、たぁくん。たぁくんはどうしてそんなに強いの?」

たぁ「強くないやい。」

ごん「強いよ。いつも助けてくれるもん。ぼくは鬼なのに弱くって…」

たぁ「ごんは弱くない。ごんはそのままで良いんだ。ケンカなんかしなくって良いんだ。おれが守ってやるから」

ごん「でもずっとそのままじゃたぁくんが」

たぁ「それで良いんだ。」


ある時、いじめっ子はごんちゃんをいじめる前にたぁくんをいじめて大けがをおわせました。

「鬼を守るウサギなんて変だ。悪い奴だ。」

って。

ごんちゃんはこれまで一度も怒ったことがなかったのに、たぁくんが自分のせいで大けがをしてしまったのが、悲しくって辛くってとってもとっても怒りました。

そして、ごんちゃんはいじめっ子達をペロリと食べてしまいました。

いじめっ子を食べたごんちゃんはもう弱くありません。とってもとっても強いのです。とってもとっても怖いのです。


たぁ「なんで食べちゃうんだよ。お前は弱いままで良かったのに。」


ごんちゃんははじめてたぁくんが泣いてる所をみました。


たぁ「ごめんなさい。ごめんなさい。おれが弱くてごめんなさい。」


たぁくんはいつも以上に小さく見えました。


たぁ「おれが弱くてチビだから、お前の親は退治されちゃった。おれが勝手に怖がってびっくりして、勘違いさせちゃってお前の親は退治されちゃったんだ。ごめんなさい。」


ごんちゃんはニコニコ笑って言いました。


ごん「ねぇたぁくん、なんで泣くの?なんで謝るの?ぼくね、やっとね、たぁくんを守ることができるってわかってとっても嬉しいの。」


たぁくんは首をぶんぶん横にふりました。


たぁ「逃げよう。ごん。ごんが退治されちゃう。」


ごんちゃんは笑って言います。


ごん「平気だよ。みんな食べちゃうから。」


たぁくんは泣くのをやめません。

ごんちゃんがニコニコ笑っていてもたぁくんは泣きやみません。


ごん「そっか。食べちゃうのはたぁくんが悲しくなっちゃうんだね。ごめんね。」


たぁ「逃げよう、ごん。」


ごんちゃんはたぁくんの小さい頭をなでなでしました。


ごん「たぁくん、泣かないで。たぁくんの嫌なことしてごめんね。」

たぁ「…早く逃げて…」

ごん「ぼくね、たぁくんとお友達になれて嬉しいんだ。だからぼく、たぁくんを守れるくらい強くなりたかったんだけど、違ったんだね。」


鬼は怖いから、鬼は危ないからとっとと、退治をしなくちゃね。

退治屋さんはとっても早い。

だって小さなウサギが食べられちゃうかもしれないから。

小さなウサギは守ってあげなくちゃね。


ごんちゃんはあっという間に退治されてしまいました。

小さなウサギのたぁくんは

「おれは鬼を殺したとっても怖い怖ーいウサギなんだぞ」

って毎日、威張って声を張り上げてるんだけど、小さなウサギの言うことなんて誰も信じなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鬼のごんちゃんうさぎのたぁくん 良駒津シータ @yokomatsushi-ta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る