無職なのにKAC2022を完走できませんでした

鮎河蛍石

去年はアルバイトしながら完走できたのに

 時間はしこたまあった。

 今日もそう。

 無職です。

 前職の牧場にて来年の契約更新は無しと九月に言い渡され、すべてが馬鹿馬鹿しくなり、翌日に仕事を辞めてから七ヶ月にわたって実家で穀潰しをやってます。

 愚かな決断を下す速さにかけては、一族で一番秀でた深窓の愚息に先祖が、親が泣いています。

 現状金は無いどころか、事故で買い替えた車のローンと赤算に滞納している去年の年金を合わせて、マイナスが三百万位あります。

 こうやって日記をヘラヘラ書きちらす心の余裕があることに、内心驚いています。

 いや、嘘です。

 ちょっと指が震えてます。

 終点が死の坂道を緩やかに転げ落ちてる感じがして、なんとも心地が悪い。


 尻の骨の髄まで灰になるくらい人生が燃え尽きかかっている中、去年の暮より小説をいくつか書いていました。

「日本には四季がある」といった空虚を皮肉るスラングがあります。

 そして無職には時間がある。

 何もしていなければ気でも狂ってしまいそうなくらいに有り余った時間を創作に充てていました。

 ピクシブにて百合姫が主催の第四回百合文芸コンテストに、約四千字の短編一本と約三万字の中編一本。同じくピクシブにてスキイチpixiv特別企画「バレンタイン2022」に約五千字の短編を一本。カクヨムにて「戦うイケメン」中編コンテストに二万字の中編を一本。計四本の作品を投稿しました。

 百合文芸コンテストと戦うイケメンコンテストの締め切りが、KAC2022の開催時期と被り、それらを全てをこなす丹力や技量が私には無かったので、日記のタイトル通りの結果と相成りました。

 KAC2022は去年よりも参加賞のリワードが圧倒的に美味しい数字だったのですが、入賞しなければ一銭の利益も生まない賞レースの方を必死に取り組んでいました。


 振り返ればアドリブで、一ヶ月に三万字と、九日で二万字の中編を二本も書けたことに驚いています。

 これらの中編はペース配分を誤って締切目前に、日産で四千字だの六千字だのと書きあげました。

 普段は日に四時間程度、机に嚙付き二千字から四千字の短編を三日がかりで一本やっと書きあがるスローペースの私からすれば、スターウォーズのミレニアムファルコン号や、スタートレックのエンタープライズ号のワープ航法もかくやの速度です。

 それらの作品の仕上がりは正直、満足のいくものではありません。

 例えると耕運機の轍ができた未舗装の農道にも劣る仕上がりです。

 荒々しいったらない。


 


 時間が膨大にある筈なのに、余裕を持った創作すらままならない所に、私が抱える欠落の本質を見たようで、なんだかくよくよしちゃうなぁもう。

 頭がかゆくなっちゃうよ。


 ですからそろそろ仕事探しをして、非日常から日常に回帰しないといけません。

 物語の基本的な筋立ても日常から始まり、非日常に飛び込み、日常へ回帰する訳じゃないですか。

 人生を物語として捉えるならば、日常への回帰、すなわち何らかの職に就き社会と接続しなければなりません。

 借金、税金、年金、社会保険の凶悪なるしょっぱい現実四天王と早く戦わなければ。

 

 無職といった時間系のチートは命を削る禁忌です。

 常人の精神では耐えられん。

 腐った死体の冒険はここまでです。


 以上、三十歳独身無敵の人の日記でした。

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無職なのにKAC2022を完走できませんでした 鮎河蛍石 @aomisora

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