何気ない一日

何気ない一日

　三月二十八日晴れ

　今日も仕事はいつも通り、とはいかずかなり怒られた。

　お客様に関する注意点を報告したはずなのに、聞いていないと言われてしまった。先方はカンカンだって。謝りにまで行かされた。

　課長め。自分の都合の悪いことは忘れるからムカつく。絶対に言った。

　今度はこんなことのないように、ボイスレコーダーでも忍ばせておこうか。

　でもなんだかんだと言って、こっちのせいにしてきそうだ。

　異動でも何でもして欲しいのに、ゴマすりが上手いから、ああいうタイプが出世するんだ。世の中は本当に不公平。

　でもいいこともあった。

　かなり絞られて、休憩室で落ちこんでいた時に、たまたま佐々木さんが励ましの言葉をかけてくれた。

　まさかあんな近くで、しかも話が出来ると思っていなかったから、もうドキドキして落ちこんでいた気持ちが一気に吹っ飛んだ。

　よく頑張ったなって言ってくれて、ミルクティーを買ってくれて、しかも最後に頭を撫でてくれた！

　もう一生頭を洗えないと思ったけど、さすがにそれは無理か。

　でもそれぐらい嬉しかった。

　やっぱり佐々木さんは格好いい。

　仕事も出来るし、理不尽に怒らないし、落ちこんでいたら励ましてくれる。

　女子社員が騒ぐのも納得だ。

　まだ独身だけど、そのうち結婚とかしちゃうんだろうな……。

　きっと彼女もいるだろうし……。

　……好きだって言ったら、困らせるかな。気持ち悪いって言われたら立ち直れない。

　今のこの状態で幸せだと思おう。

　遠くから見られるだけで十分。欲張っちゃ駄目だ。

　明日も頑張ろう。課長はカツラが吹っ飛べばいい。

　……そういえば、ミルクティーが好きだってこと、言ったことあったかな。覚えていないだけで、たぶん前に言ったんだろう。