言語オタクの彼と

香居

『日記』から始める

「〝書くこと〟に関する連想しりとり?」

「うん」

「おもしろそうだけど、私そんなに語彙力ないわよ」

「気楽にやろうよ。勝負じゃないから」

「ん〜……わかった。わからない言葉は教えて」

「もちろん」

「私からでいい?」

「いいよ」

「じゃあ行くわよ。『日記』!」

「『記述』」

「つ……『追記』!」

「『揮毫』」

「何それ?」

「毛筆で絵や字を書くこと」

「へぇ〜。う……う……『写し』!」

「『執筆』」

「また『つ』? えぇ〜……つ……『つ』ぅ?」

「出ない? 降参?」

「爽やかにニヤニヤするんじゃないわよ! ムカつくわね! 絶対絞り出してやるから! つ……つ……『綴る』っ!」

「おぉ〜。よく出たじゃん」

「……優しい顔して、頭撫でんじゃないわよ」

「嫌?」

「イヤじゃないわよっ。お兄さんぶってるのがムカつくだけっ」

「実際5つ上だし。都羽とわちゃん、頭撫でられるの好きでしょ?」

「……好きだけど」

「何? ご褒美ならキスのほうが良かった?」

「ばっ……ばっかじゃないの!? さっさと次の言葉出しなさいよ!」

「真っ赤になっちゃって、か〜わいい。……ん〜、『類書』」

「すぐ出てくるのもムカつくっ」

「ダテにオタクじゃないですヨ。ほら、都羽ちゃんの番だよ」

「『書類』っ!」

「あっはっはっは! そう来たか! 『石刷り』」

「何それ?」

「拓本のことだよ」

「へぇ〜。り? り……『臨書』!」

「『しょ』攻めかぁ」

「『よ』でもいいけど?」

「俺はいいけど、都羽ちゃんもルール適用になっちゃうよ?」

「ゔ……っ。じゃあ、『しょ』でいいわよっ」

「ありがとう。『書字』」

「じ……じ……『字句』!」

「おぉ〜。よく出たなぁ。ん〜……『口伝』」

「それ、書かなくない?」

「口で教え伝えることを書き記した書物のことも言うんだよ」

「へぇ〜。……あれ? 『ん』がついたから終わりじゃないの」

「……あ」

「あはははっ」


 勝った!

 気分は良いけど、ちょっと抜けたところも好き、なんて言ってあげない。

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言語オタクの彼と 香居 @k-cuento

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