息子へ(日記)

しょうわな人

第1話 就職する息子への思い

 私は四十九歳になった。


 息子長男は今年、大学を卒業して就職する。もう、卒業式も終わり仕事が始まる四月一日まで、実家で過ごしている。


 私はそんな息子を見ながら思う。


 私は父親を出来ていたのだろうか? と。


 思えば私の父は既に亡くなっているが、私も父と同じように我が子に接してきた。絶対にこんな親にはなるものかと思っていたが、気がつけば父と同じである。そこまで考えて少し落ち込んだが、それで良かったのだとも考え直した。

 

 私は息子が幼い頃から仕事の愚痴は子供には聞かせない様にしてきた。人生の伴侶である妻には少なからず愚痴を吐いた事もあるが、それも数えられる程度だ。


 何故、子供に愚痴を聞かせなかったのか。それは私の父がそうだったからだと思う。私自身が父から仕事の愚痴を初めて聞いたのは、私も就職して仕事をして五年過ぎた頃だったと記憶している。


 そんな父を見て育ったので、私も愚痴を子供には聞かせないようにしていたのだろう。


 そんな息子も四月から仕事を始める。息子の愚痴は聞いてやろうと思うが、私自身の愚痴は父と同じように五年間は聞かせないでおこうと思う。


 今なら父の気持ちが分かる。五年の間、職種は違えども働けば、どんな仕事でも大変な事はあると理解しているから、そこでなら愚痴を聞かせても子供は真剣に聞いてくれるだろう。そんな思いもあった筈である。


 私は今は【私の心の中にある日記】に子供達の事、妻の事、仕事の事を毎日何かしら記している。


 いつか、それを酒を酌み交わしながら息子とノンビリと話をする事を楽しみに、今夜も晩酌を楽しんでいる。


 心の中の日記を日々更新しながら……

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