ハジマリノウタ

「今宵は七度生きた娘の話だ。はじまり、はじまり」


「あるところに生と死を繰り返す娘がいた」


「その娘は獣神様に大層気に入られていたため娘が娘たらしめるための記憶を持ったまま生き死にを繰り返していた」


「当然娘の心は耐えられない。死の記憶は娘の心を折るには十分だった」


「だから忘れようとした。娘はある一生で妖精とナニカを対価に娘の記憶を消す契約をしたのだ」


「娘は少しずつ記憶を失っていき最後には契約内容も契約したことすら忘れてしまった。だがそれも娘にとって幸せなことだっただろう」


「しかし終わりは唐突に表れた。娘は記憶が消えていくことに恐怖を感じ、妖力を対価に消えてしまった記憶を戻すように契約してしまったのだ」



「そして少女は思いだす」




「七度の人生と七度の死。そして以前交わした契約の対価を」


「娘は恐れ多くも獣神様の寵愛を対価にしていたのだ」


「娘はまたこれから先もずっと、永遠に獣神様に愛されるおもちゃにされるのだと絶望してしまった」


「娘は今もどこかで獣神様の無聊を慰めている」


人形師は最後の言葉を発すると黒く染まった上空の空間をそのまま自身が立つ舞台に降ろし、しばらくすると跡形もなく消えてしまった。


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