第34話 ユナとサナの学園生活Ⅳカイン魔法講師として犯人探しをする

 「うるさい。もう校長にもお前が犯人だと報告している。今すぐ出ていってくれ。」


 そう担任のルーカスが叫ぶと、ルノガ―校長が現れて、反論した。


 「ルーカス先生、そう結論を急ぐでない。急に部屋に入ってきて、カインが盗難の犯人なんでクビにします。と言われてもワシも生徒も納得せんじゃろう。」


 どうやら、ルーカス先生が勝手にクビと言っていたみたいだ。


 「すみません。状況が飲み込めていなくて、盗難が起こったんですか。」


 「白々しい奴め。そうだ。今の授業が終わって、生徒が教室に帰ったら女子生徒の制服が無くなっていたんだ。犯人は外部犯なんだ。カイン、お前以外今日は外部から来ている人間はいない。」


 ルーカス先生の謎の理論だ。なぜ外部犯と決めつけているのだろう、理解ができない。


 「待ってください。僕が犯人である証拠はあるんですか。」


 「さっきから言っているだろ。外部の犯行で、今日お前しか外部から入ってきている人間はいなかったんだぞ。逆にお前以外で誰が犯人なんだよ。」


 そう言うとルーカス先生は偉そうな顔をした。


 話が通じなさすぎて困る。よくこんな理論でドヤ顔になれるな。


 「すみませんが、僕は今日は教室に行っていません。校長に門で挨拶してから敷地内に入って、すぐに授業でしたので、直接訓練場に行きました。校舎にすら入っていないです。」


 「そうですわ。私が一番に訓練場に来ました、既にカイン先生はいましてよ。」


 サナが庇ってくれる。


 「ええ。私もサナさんと一緒に行きましたから、間違いないです。」


 ユナさんも同意する。


 他の生徒もそうだそうだと味方してくれた。


 「それに授業後も私たちとお喋りしていましたわ。アリバイは有りましてよ。ねえ皆さん。」


 残って話をしていた女子生徒たちが同意してくれる。


 「うるさい。そんなのカインが仲間に依頼して盗ませていたら、アリバイもなにもないだろ。それにな、その制服はお前のカバンの中にあるのを見つけたんだよ。」


 先程、オレ以外は誰も学校に入っていないと言っていた。矛盾している。


 そう言うと、訓練場の入り口に置いていた僕のギルド製のカバンを持ってきていて、ルーカスが開ける。たしかに中に魔法学校の制服は入っていた。


 生徒たちがザワつく。


 「そんな、お兄様がそんなすることありません。」


 勿論オレはやっていないのだが、こんな状況でも妹のサナは庇ってくれる。


 「ほう。カインを庇うのかサナ。それはカインがお前の兄だからか。まさかお前も共犯ということなのかもしれねえな。」


 めちゃくちゃな理論だと思うが、サナは唾を飲む。とばっちりだ。


 「それでは、犯人は僕かルーカス先生のどちらかですね。」


 ルーカス先生がハッとした顔で反論する。


 「なぜオレなんだ。証拠はあるのか。大人しく認めろよ。土下座して謝るなら大事にはしないぞ。」


 ルーカス先生の挙動がおかしい。間違いなく犯人は、彼だろう。


 「いえ。やっていないことはやったとは言えません。僕は今日、建物に入っておらず、授業が始まってからもカバンを触っていません。ずっと生徒と戦っていますから。生徒が覚えていると思います。」


 女子生徒たちが確かにそのとおりだと。応援してくれる。


 「それだけじゃ証拠にならないだろ。」


 ルーカス先生が嫌味な笑みを浮かべる。


 めちゃくちゃな理論で犯人扱いされるのは不服だ。


 こちらから攻めてみるか。


 「逆にお聞きしますが、ルーカス先生、授業中に教室から訓練場を見ていましたよね。教室で何をされていたんですか。」


 「なっ…」


 「その時間に授業があったら、生徒が証言してくれるでしょう。もし授業がないのであればその時間はどこで何をしていましたか。」


 ルーカス先生が口をモゴモゴしてなにか言っている様だが、聞き取れない。


 「どちらかお答え下さい。」


 念を押す。攻め時だ。


 昼休みということもあるだろう。ルーカス先生が大きな声で怒鳴っている。騒ぎを知って、生徒たちが集まってきた。


 「オレのクラスでルーカス先生が防衛呪文の授業してたけど、自習するようにって言って、少しだけ出ていったぜ。」男子生徒が答える。


 「だそうですが、間違い有りませんか。どこに出ていったかお答えいただけますか。」


 ルーカス先生の顔が青ざめる。


 「トイレだ。トイレ。アリバイだろ。」


 「なるほど。それでトイレに行った際、誰かにお会いしましたか。トイレの前にSクラスがありますが、教室には入りましたか。」


 「誰にも会っていないが、教室には入っていない。」


 確かにこれだけだと決定的な証拠にはならない。


 少しカマをかけるか。


 「分かりました。今ルーカス先生が女子生徒の制服を持っていて、私は触っていません。間違いないですか。」


 「そうだな。」


 ルーカス先生が笑う。追求から逃れられたと思っているのだろう。


 「ということは私の指紋がその女子生徒の制服から検出されれば、私が犯人ですし、そうでなければルーカス先生が犯人ですね。最近、工房のミラさんが開発した魔法具で指紋が検出できるみたいなんですよ。知ってました? 来週公式に帝国が発表するみたいなんですが。」


 これでボロを出してくれ。


 「いや、そこまで調査する必要はないんじゃないか。」


 「いえ。私が仮に犯人だった場合、学校と生徒のためにも講師をやめたほうが良いでしょう。それを証明するためにもぜひともルノガ―校長からミラさんに依頼して検査しましょう。」


 「うるさい。そんな必要はない。」


 ルーカス先生が怒鳴る。


 「確かにカインの言ったことのほうが理にかなっている気がするな。どれ、ワシから工房に依頼してみよう。ルーカス先生、女子生徒の制服はワシが預かろう。」


 ルノガ―校長がそう言うと、同意して発言する。


 「そうですね。お願いします。私にはアリバイがありますが、仲間と組んで盗難したのであれば、間違いなく指紋は出ると思います。まぁ外部犯の場合、私のカバンに入れるのは不可能だと思いますが。後、ルーカス先生の研究室と自宅も調べてもらいましょう。以前、ローブがなくなったとお聞きしましたが、あるかもしれません。」


 ルーカス先生が怒り出す。


 「うるさい。うるさい。元々お前が講師になったことが許せなかったんだ。」


 ビンゴだ。ついに本性を表したな。


 ルーカスが胸から杖を出して詠唱をする。至近距離からファイヤーボールをオレに放った。


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