Thank you Forever

夕日ゆうや

日記

 四月九日。

 わたしは広君と出会った。捨てネコを拾う彼は普段と違って優しくみえた。


 四月十日。

 わたしは彼と一緒に里親探しをすることになった。それまでは広君の自宅で育ててくれるらしい。でも彼の母親はアレルギーらしい。


 四月十六日。

 ネコの里親が見つかった。わたしたちは喜んだ。学校でよく話をするようになった。


 四月二十日。

 彼とデートの約束を取り付けた。強面の彼だ。みんなから注目を浴びていた。


 四月二十七日。

 初デート。近くの遊園地で満喫した。


 四月三十日。

 彼と喧嘩した。ちょっとしたすれ違い。でも本当は仲直りしたい。もっと話をしたい。


 五月六日。

 仲直りするためにクッキーを焼いてプレゼントした。最初はぎこちなかったけど、仲直りできた。良かった。


 五月七日。

 わたしは広君と付き合うことになった。嬉しい。


 五月二十一日。

 わたしは重い病気にかかった。心配そうに見つめる彼がなんだかおかしかった。


 五月二十三日。

 気絶していたらしい。でもすぐに目が覚めたから大丈夫だよね?


 五月二十四日。

 病気が進行しているらしい。彼は学校を休んでまで、わたしの看病をしてくれる。申し訳ない。


 五月二十五日。

 別れ話、切り出そうかな。このままじゃ、彼に迷惑がかかる。一生消えない傷が残る。なら、フリーになって違う子と結婚すればいい。


 五月二十六日。

 痛い。胸が痛い。昨日、他の子との結婚を考えたけど、それから胸のあたりが痛む。

 こんなに好きになっていたんだ。

 本当はわたしと結婚して欲しい。


 パタリと日記を閉じる。

 早坂はやさかさんはこんなにも苦労して俺と付き合っていたのか。

 涙があふれ出る。

「早坂のお母さん、お父さん」

「なんだい?」

 お父さんの方が反応した。

あいさんと結婚させてください」

「愛はもう……」

 悔しそうに呟く早坂父。

「最後にウエディングドレスを着て欲しいのです」

「……そういうことなら、いいだろう」

 病院から見える木が一枚の葉を散らす。

 病院内で結婚式を挙げる。それは異例なことなのかもしれない。

 でも、早坂愛さんには幸せで居続けてほしい。

 そのために、俺は愛さんと一緒に。

 意識がもうろうとする新婦・早坂愛。新郎の俺はベッドで横たわる愛さんと口づけをかわす。

 これがファーストキス。

 俺が奥手だから遅れてしまった。でも満足そうににこりと笑う愛。

 人工呼吸器が外せない彼女との一瞬のふれあい。

 こうして結婚式はつつがなく終わりを迎えた。


※※※


 一年後。

 俺は墓参りに訪れた。

「ありがとう。ありがとう」


 一人の死が一人の人間を助ける。

 心臓移植に成功した愛は車椅子でそばに寄り添ってくれる。

「ありがとう。わたしに心臓をくれて」

 俺は愛と添い遂げる。

 この命を大切に。

 ありがとう。生まれてきてくれて。

 ありがとう。命をくれて。

 ありがとう。

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