暗闇
「それで、お前はなんで俺の家の前に座り込んでたんだ?そんな疲弊しきって。」
「うん。その前に自己紹介をしてもいいかな?」
と、彼から提案された。
確かに自己紹介は大切だな。人とそこまで話してこなかったせいか、会話の手順など気にもしてなかった。
そんなことを考えていると、彼が再び口を開いた。
「僕の名前はノエだ。よろしく。」
「ノエ…?日本人ではないのか。」
白髪ではあるが、肌の色などは日本人と遜色はない。てっきり日本人だとばかり思っていた。
「うん。僕は正確には半分日本人だよ。ハーフってやつかな。」
「なるほど。あぁ、俺は暁山遠。高校2年生だ。」
「あきやまとお…?面白い名前だね。とりあえず、君の家の前に来るまでの経緯を話そうか。」
「簡潔に手短で頼む。」
「うん。分かった。」
ノエは深く1呼吸し、話し始めた。
「僕はね、逃げてきたんだ。何も分からない。暗闇の中から。変な話だよね。でも、本当なんだよ。何も分からないまま、気づいたらその暗闇の空間の中。僕は怖くてね。必死で走って、最後は周りの何も見えなくなるまで、ずっと走った。そして、辿り着いなのが、遠の家だ。」
…は?
こいつは何を言っているんだ。簡潔に話せと言ったのは俺だが、何?
暗闇? 気づいたら変な空間?
何を言っているんだ…?走りすぎて頭狂ったか。
ただ、
「面白い話だな。それは。」
「信じてくれるんだ。」
彼はうっすらな笑みを浮かべ、安堵の様子だった。まぁ、問題はここからだけどな。
「ノエ、お前の作り話にしては、だけどな。」
「作り話なんかじゃないよ。あれは紛れもない現実だ。」
「あのな、おかしいんだよ。お前が何もわからなくなるまで走り続けたってんなら、なんで俺の家の前なんだ。」
「どういう…」
「ここはアパートだぜ?なんでわざわざ2階の俺の部屋まで来るんだよ。」
ノエが僅かに動揺した。それに少し顔が下を向いている。当たりだな。
ノエは微笑を浮かべ、
「うん。やっぱり君は面白い子だ。」
と、小さく呟いた。
ガチャリ。
額に金属のようなものが当たった感触がした。
ノエは微笑を浮かべ、
「君は変わらないな。遠。」
と、小さく呟いた。
「俺の額に銃口なんてものを向けて、何のつもりだ。お前。」
「それは、これから分かることさ。」
額から冷たい感触が流れてきた。
死が目の前にあるのはこんな感覚なのか。
いきなり目の前に現れて、助けたつもりが、僅か数十分後に殺されるなんて。
一体どんな世界だよ。
「また会おう。」
ノエの静かな囁きと共に、ドンッ!という音が耳に響いた。
視界がぼやけていく。死ぬってのはこんなんなのか。あぁ、もうちょっと、楽しい人生を送りたかった。
視界が真っ暗になり、俺は倒れた。
「君には期待してるよ。」
ノエは遠の死体の上からそう呟いた。
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