違法記憶を所持していることを認めないの?

ちびまるフォイ

そんな記憶を持っているなんて!!

「なぜここに連れて来られたかわかるか?」


「わかるわけないでしょ!? いったい俺が何をしたっていうんですか!?」


「それはお前のこころに聞いてみるんだな! お前は知っているはずだ!」


「はあ!?」


必死に考えてもそれらしい出来事に思い当たらない。

もしかして、本当は罪状なんかなくて、こっちが勝手に自白することを待っているのでは。


「……ちゃんとあてがあって、俺を逮捕したんですよね?」


「当たり前だ! お前の容疑は……違法記憶所持だ!!」


「聞いたことないですよ!」


「見てはいけないもの、聞いてはいけないことを

 勝手に記憶した罪としてお前はここに連れてこられてるんだわかったか!」


「ますます不確かじゃないですか。

 だいたいどうして俺が違法記憶を持ってるなんていえるんですか」


「ふふん。それはこの記憶検知マシン【のぞくんです】のおかげさ。

 見てみろ。お前をマシンに通すと違法記憶のアラートが出るだろう?」


たしかにマシンのカメラの前に立つと、【違法記憶アリ】と表示されている。


「こんなの機械の故障かなにかでしょ!

 とにかく、俺は違法な記憶なんてもってない!」


「まだしらばっくれるつもりか!! この!!」


警官は頭を掴むと、勢いそのままに机に額をぶつけてきた。


「痛っったぁ……!!」


「痛いか? 痛いだろう。だがお前が自分の記憶をちゃんと話すまで続くからな」


「機械の検知ミスってこともあるでしょう!?」


「この"のぞくんです"が間違うわけ……ないだろ!!」


今度は警官の鋭いこぶしが飛んできた。

顔をなぐられ壁に背中をぶつけてうずくまると、

まるまった体を何度も足でふみつけられる。


「言え!! お前はなにを見たんだ!」


「だから何も知らないんですって!!」


「だったらこうだ!!」


今度はどこからか持ってきた洗面器に顔をつけられる。

呼吸もできずにパニックになるが、強く押さえつけられて顔をあげられない。


「ゴバゴボゴボ!?」


「さぁ意地をはらずに自白するんだ!! お前の見てきたことを!!」


やっと顔をあげられるともう抵抗する力もなくなるほどボロボロだった。

これ以上いためつけられると命の危険すらある。


「はぁ……はぁ……あの……」


「なんだ? やっと正直に話す気になったのか」


「さっきから……ずっと自分が悪いことを記憶してないか考えたんです。でも……やっぱり見に覚えがなくて……」


返事をきいた警官がわかりやすく怒りの表情の切り替わった。


「なるほど。お前はどうしても罪を認めたくないというわけだ」


「本当に覚えてないんですよ!」


「罪を認めたほうが罪は軽くなるが、どうしても話さないというならこちらにも考えがある」


「今度は何をする気ですか……!?」


「なにもしないさ。ただ、この"のぞくんです"にはまた別の機能があってね」


警官はマシンを愛おしそうになではじめる。


「人の記憶を写真として出すことができるのだ。

 お前が必死に口を割るまいと努力していても無駄というわけだ。

 写真ができあがるまで時間がかかるのが弱みなんだがね」


「そんな……!」


「さあ写真ができたぞ。もう言い逃れはできなくなる。

 お前が所持している違法記憶の証拠をつきつけてやる!」


のぞんくんですから1枚の写真がはきだされた。

警官は誰が見ても違法だとわかる証拠写真をつきつけた。


「やっぱり違法記憶を所持していたじゃないか!!」



写真には警官が力まかせに拷問している数分前の記憶が映し出されていた。

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違法記憶を所持していることを認めないの? ちびまるフォイ @firestorage

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