真夜中の集会

茜カナコ

第1話

 真夜中に目が覚めた。


 私はいつもより重い布団に違和感を覚えた。

「うん? 何だろう……熱でも出たのかな?」

 布団は重いだけでは無くて、大きくなった気がする。


 私は何かの気配を感じて、目だけを動かしてその方向を見た。

「……!?」

 そこには、家の飼い猫のおかかがいた。

「いつまで寝てる? そろそろ集会の時間だよ」


 おかかがしゃべったことで私は、「あ、これは夢なんだ」と思った。

「行かないのか?」

「……行く」

 私はおかかの後について、家を出て猫の集会場に向かった。


 猫の集会場は家の近くの公園だった。

「遅いぞ、おかか。……連れてきたのは新しい奴か?」

「ああ。名前はミカだ」

 飼い猫に呼び捨てにされるとは、変な気分だ。

 私が戸惑っていると、おかかは言った。


「ほら、自己紹介して」

「えっと、私はミカです。いつもおかかと一緒にいます」

「その割には集会は初めてのようね」

 年老いた白猫が私に話しかける。

「ミカは体が弱いから」

 おかかがかばってくれた。


「それじゃ、今日のミーティングだ。議題は川縁の同胞毒殺事件についてだ」

「毒殺!?」

 私が思わず声を上げると、おかかがちいさな声でたしなめた。

「しずかに、ミカ」

「夜は、川辺に餌が置いてあることもあるが、けして食べないように」

「はい」

 集まった猫達が一斉に返事をした。


「……猫の世界も大変なのね」

 私がおかかにそっと言うと、おかかは難しい顔で頷いた。

「まあね」

「それじゃ、他の議題は?」

 リーダー格の猫がそう言って辺りを見回すと、茶色い猫が尻尾をあげた。


「最近、虫取りがうまくできなくなって来ました」

「それは、お前さん年を取ったからだよ」

「あはは、そうか、そうか」

 さっき私に話しかけた白猫が、会話を聞いておかしそうに笑っている。


 突然、強い眠気が私を襲った。

「どうしたの? ミカ? ふらふらしてるよ?」

「おかか、私眠い……」

「そうか。じゃあ、もう先に帰りな」

「うん」

 私はおかかに連れてきて貰った道を戻って、玄関の猫用ドアから家の中に入った。


「うーん、ベッド、まだ暖かいや」

 私はベッドの中に潜り込んで丸まった。

 そして、朝が来た。


「あーあ、なんか怠いな。そういえば昨日は変な夢を見たっけ」

 ベッドに腰かけて、のびをしてから両手と両足がざらざらしているのに気付いた。

「あれ? 土? ってまさか昨日の夢は現実!? そうなの? おかか?」

 私のベッドの足下でスヤスヤと寝息を立てているおかかに問いかけても、真相は分からない。

「あ、もう時間だ。会社に行く準備をしなくちゃ」

 私は汚れた手足をシャワーで洗ってから、急いで朝食を作り始めた。


 真夜中の集会は、猫達の秘密がつまっている。

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真夜中の集会 茜カナコ @akanekanako

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