第3話 無類の猫好き

金曜日の放課後。

テツが帰り支度をしているとヒロとタクヤがやって来た。気が合うようでいつもこの三人はつるんでいる。

「一緒に帰ろうぜ」と言いながらも帰る気配など一向に見せずにその場で話し出した。


「そういえば、凄かったんだぜ。昨日バス通りに新しくできたファミレス行ってきたんだけどさ、」

「あーガスポな」

「俺まだ行ってないや。で、どーした?」

「うん、料理をタブレットでオーダーするんだよ」

「え、そこ?」

「まぁ新しいファミレスはそんなもんだろ?」

「そしたらさ、何とオーダーした料理を猫ちゃんロボットが運んできてくれたんだよ!」

「何っ!猫ちゃんロボだとぉ?!」


ヒロの話を適当に聞いていたテツが食い気味に声を上げた。


「な、びっくりだろ?でさぁ、『お料理お持ちしましたのにゃ』『お食事楽しんでいってくださいにゃ』とか可愛い声で言うんだぜ」

「『楽しんでいってくださいにゃ』だとぉ?」


テツがわなわなと震える。


「無類の猫好きのテツくん、どうだい?明日ガスポに行ってみないかい?」


ヒロがニヤリと笑いながらテツに尋ねる。


「行かないという選択肢は無いな」


右手の中指でメガネをスッと持ち上げて偉人のような口調で語ったテツだが、すぐに素に戻ると「猫ちゃん猫ちゃ〜ん」と目にハートマークを浮かべながらニヤケ顔でとろけていた。


そしてその横には、盛り上がる三人に背を向け全く興味なさそうにしながらも耳がダンボになっているカナがいた。


「土曜日はうちの店に来るって言ってたのに……。フン、何が『猫ちゃ〜ん』よ。もぉっ、テツくんのバカっ!」

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