第5話「複製された男」
『
2012年に講談社から刊行された田原総一朗の自伝である。「
田原――『個性のディープフェイク』によって偽造されたアナザー田原は、
「そうだ! 田原さん、喜寿おめでとうございます」
「喜寿じゃない。米寿、88歳。喜寿は77歳だろ」
「元々はKADOKAWAが始めたことなんです」
「KADOKAWAと株式会社はてなが共同開発した小説投稿サイト――カクヨム上で田原総一朗さんを題材にした二次創作が解禁されました。存命中の人物の二次創作というタブーへの挑戦、というのが解禁に至った経緯です。そのベースとしてカクヨムが作家たちに用意したのが、公式HP上で全3回にわたって連載されたインタビューです。ところが、このインタビューの大部分――というより、そのほとんどが『
田原総一朗は文筆活動でも知られ、様々なエッセイ・教養本の著者でもある。その著作は2022年現在、ゆうに200冊を超えている。自分の原点となる体験の話ともなれば、何度も何度も言葉にすることがあるだろう。複数の媒体で内容が被ったり、記述が重なるのも当然のことである。しかし、このインタビューは……。
「エピソード単位で符合する、という問題ではありません。細かい言い回しの細部にいたるまでが、一冊の自伝本の引用で構成されているのが明らかなのです。例を挙げれば、インタビュー第1回で軍国少年として育てられた田原少年が教師に言われる言葉。『今度の戦争はアジアの国を解放・独立させるための聖戦である。君らは大東亜戦争に参加して、アジアの捨て石になれ』というものですが、これは『
これは参考にした、というレベルでは済まされない。実際のところ、これはインタビューというよりも、インタビュアーによる自伝本の要約といった方が正しいものとなっている。果たしてこのインタビューは実際に行われたものなのだろうか?
「私は『
二次創作のベースとして用意された一次資料――カクヨム公式によるインタビュー記事そのものが、二次創作という
「まずは土俵をつくろう。そこが田原ドキュメンタリーの原点です。『個性のディープフェイク』によって生み出された高度なアナザー田原は、現実の田原と区別がつかないはず。まずは手始めに『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます