遥か高みの縁双者

黒井泳鳥

アナザー0 前

 シンクロニシティ。離れた土地に住む同種が同じような行動や進化が起きると言えば伝わると思う。

 彼……というよりも彼女かな。が、システムからの恩恵を受けた人物を倒してから、人類は進化を始めた。

 正確には魔力迷路――抑制概念が外れて、全人類が既存の人域魔法師としての素質を手に入れたと言うべきかな。

 概念世界では私がつっついてはいるけれど、いずれ物理世界での勢力戦があると踏んでいるから、戦力増強できそうで嬉しいよ。

 私は常々国のあらゆる水準レベルの高さは頂点より底辺や平均の高さがモノをいうと思っていてね。民度とか文化レベルとか。

 これは力にも言えることだと思う。軍隊は誰か一人めちゃくちゃ強いよりも平均が高いほうが良い。

 まぁ、私がやろうとしている戦争は少数精鋭を想定しちゃあいるから関係ない話になってしまいそうだけども。

 でも、彼らだけじゃ心許ないのも確か。超越者イロアスは多いに越したことはない。至らずとも張り合える人材がほしい。

 目ぼしいのは何人か紅緒ちゃんが確保し始めているけれど、数名人域魔法師側だから引っ張るのが大変ね。

 ……はぁ、本来は召喚魔法師のがメジャーになるはずだったのになぁ〜。未だにシステムの影響が強い。中央……世界政府の人間がほとんど抑えられてるのが痛い。

 でも全人類にグリモアを発現できるようにはしたし、もうしばらくすれば使ってくれるでしょう。

 というか、相性の良い因子配列をした別世界の存在を引き寄せる為に生み出した概念なんだもの。使ってくれなくちゃ困る。

 世代を重ねれば因子はどんどんわかれていっちゃって弱くなっていっちゃうし、早くどんどん繋がって強くなってね人類。

 皆が皆、才君みたいに因子のほうが勝手に元気になっちゃうような逸材なら良いんだけどね。そうも行かないのが実情。

 まぁ、元気になってマナボコボコ湧いちゃうのは花菜因子が惚れた男の中に入ってるからだしね。彼だけのボーナスさ。

 お陰でシステムからの制約はキツくて上手く力が使えない期間があったようだけど。リリンちゃんの持つ因子とくっついての相乗強化と、派生進化したより強い人類に肉体を作り変えたことで今に至る前に解決してくれたし。これ以上を求めるのはむしろ過ぎた願いかな。

 んま、あと一年ちょっとは時間があるし、気楽に構えようかな。

 ふふ、さぁ人類よ。より高みへ至ってくれたまえ。神の触れぬ処で。

 そして共に穿とうじゃないか。神を。

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