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王生らてぃ

本文

   [▶︎]



 映ってる?

 もうちょっとカメラこっちの方がいいかな……よしっ。



 えー、こんにちは。

 って、なんで改ってんの、わたし……えーこほん、親愛なるまりちゃん。お元気ですか? まりちゃんが入院して、もう2年くらい経つね。東京の大きな病院に入院したんだって聞いた。

 ……入院してるのに、『お元気ですか?』って、変だよね。ごめん。元気じゃないよね。

 また、大きな手術、するんでしょ?

 頑張ってね。応援してるからね!



 ……わたしね、ずっとまりちゃんに謝りたかったの。

 まりちゃんが倒れる前の日、宿題のことでケンカして、わたし……その、ひどいこと、言っちゃったよね。まりちゃんのこと、泣かせちゃった。

 だから、まりちゃんが倒れたのは、わたしのせいなんじゃないかって……

 …………、

 ごめん。

 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。退院して元気になったら、また、一緒に遊ぼうね。美味しいもの食べたりしてさ、ね?

 それじゃあね、まりち



   [◼️]



   [◀︎◀︎]



   [▶︎]



 だから、まりちゃんが倒れたのは、わたしのせいなんじゃないかって……

 …………、

 ごめん。

 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。退院して元



   [◀︎◀︎]



   [▶︎]




 めん。

 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。退




   [◀︎◀︎]



   [▶︎]



 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。



   [◀︎◀︎]



   [▶︎]



 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。


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   [▶︎]


 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。


   [◀︎◀︎]



   [▶︎]


 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。


   [◀︎◀︎]



   [▶︎]


 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。






     ◯






「ね、思い出した? 悠子はこんなにわたしのこと、好きだったんだよ」



 画面の中の悠子は、今より髪が長くて、肌も白い。でも、まだまだ子どもだ。画面の中の悠子もすてきだけど、いまの悠子ももっとすてきだ。



「こんなに、こんなにわたしのこと、好きでいてくれたのに……どうしちゃったの? なに、この映像? ウソ言ってたの? ダメだよ、嘘ついちゃ」



 悠子の左手の薬指にはまっている、小さなダイヤモンドの指輪を、わたしは外す。



「嘘つき〜。もう、悪い子なんだから、悠子ちゃんは! もう〜。しょうがないなぁ、また見せてあげるね」



   [▶︎]



 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。


   [◀︎◀︎]



   [▶︎]


 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。


   [◀︎◀︎]



   [▶︎]


 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。



「このビデオレターが届いたときね、わたし、もう長くないって言われてたの。でも、そのあとの手術がうまく行って、奇跡だって、先生も言ってた。だから、わたしをよみがえらせたのは……あなたなんだよ、悠子」



 ボタンを押しては巻き戻し、押しては再生し、押しては巻き戻し、押しては再生し……



「だから、ね。また一緒に遊ぼうよ悠子。あのときみたいに、ふたりだけで一緒に遊ぼう? ね? いいでしょ? ダメなわけないよね? だって悠子はわたしのこと大好きなんだもんね?」


   [◀︎◀︎]



   [▶︎]


 わたし、まりちゃんのこと、大好きよ。



 映像の中の悠子が、わたしに、にっこりと微笑んだ。

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