深痕のミシア ―4.コノハ編「私の故郷の森は、100年に一度燃え尽きるの」―

真田 了

序(語り:オーメム)

薄暗い小さな部屋に、3人のエルフ人の女性がいた。


1人は床に横たわって眠っており、縄で縛られている。

他の2人は眠っている女性の前に立っていた。


立っている女性のうちの1人が、もう片方の女性に話しかける。

立っている女性「こうなったら、お願いしますわぁ、オーメム様」

オーメム「本当にやらないと駄目か?…あれって、けっこう痛いんじゃが…」

立っている女性「でも、ここまでした以上、そのまま放免というわけにはいかないやないですか」

オーメム「まったく、面倒じゃのう」

立っている女性「いやいや、オーメム様のせいでこういう事になったんですからね?」


縛られている女性「…う…」

眠っていた女性が、目を覚ました。そして、オーメム達を見上げる。

縛られている女性「…あなたたち…これは、どういう事なの?!」

オーメム「わらわは、オーメム。お前達のあるじじゃ」

縛られている女性「何をバカなことを」

オーメム「すぐに信じるようになる」


オーメムはそう言って、縛られている女性の口の中に指をつっこんだ。

縛られている女性「?!…ひゃひふるほ、ははひははい(何するの、離しなさい)!」

縛られている女性は抗議するが、オーメムは動かない。


縛られている女性「(それなら…)」


がぶっ!

オーメム「いったーー!!」


縛られている女性はオーメムの指を思いっきり噛んだ。

しかしオーメムは涙目になりながらも、指を抜かない。

指から血が流れ、縛られている女性の舌の上に落ちる。

血の苦い味が口の中に広がっていく――と思いきや、意外にも血は美味しく感じられ、血の触れたところが温かくなってくる。


縛られている女性「…?!」


縛られている女性は、思わず血を飲み込んでしまった。

温かい血が喉を下りていくのを感じる。

普通は感覚が無い胃ですらも、温かくなってきた。

その温かみはえも知れぬ快感を伴い、お腹全体に広がり、胴体に広がり、手足に伝わり、全身に流れていく。

頭も痺れるような快感に覆われ、目がとろんとしてきた。


オーメムは指を口から抜いた。

噛まれて出来ているはずの傷口は何故か見当たらない。


オーメム「わらわは、オーメム。お前のあるじじゃ」

縛られている女性「…はい、オーメム様…」

オーメム「うむ」

オーメムは満足そうにうなずいた。


オーメム「さて、早速じゃが、色々と話を聞かせてもらおうかの」

縛られている女性「…はい。何なりと、オーメム様」

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