猫を拾った日
しのはら誠人
第1話
────冬
とても星が綺麗な夜だった。
「いい夜だ」
そんな気の利いた言葉が漏れるほど、いい夜だった。
俺は、仕事を終え、家路に急いでいた。
そんな良い夜なのに、俺の心は荒んでいた。
「まったく、丸山課長のばばぁと渡辺のコンビ、最悪のパワハラコンビだ」
良い夜なのに、俺の心は荒んでいた。
やっぱり星を見ているだけでは、この気持ちが収まらなかった。
「まあいいや、早く帰って飯食って寝よう」
はたから見たら不審人物のようにつぶやきながら歩いていた。
が、その時、
「おや?」
足元に何かが当たった。
恐る恐るのぞき込んでみると、どうやら猫だった。
「もしかして、死んでるのか?」
しかし、体は暖かくかすかながら息が有った。
「うん。まだ生きてそうだ」
俺は猫を抱え家に急いだ。
なぜだろう、この猫を見捨ててはいけない気がしたんだ。
「ただいま」
誰もいない家に挨拶するクセをどうにかしたいと思いつつ、いつものように一人であいさつして家に入った。
家についた俺は猫を座布団に寝かせ、冷蔵庫の牛乳を温め猫に与えてみた。
「みゃ……」
弱弱しくはあるが、少しずつミルクを飲む猫。
満足したのか、すぐ眠ってしまった。
「もしだめなら墓でも作ってやるか」
「でもまてよ、猫の遺体は役所に届けないといけなかったか?」
いろいろ考えが廻ったが、とりあえず明日考えることにして寝ることにした。
「────────これは夢か?」
此処は、そうだ。
子供の頃夏休みに両親に連れられて祖母の住むいなかにいた頃の夢だ。
そうだ、その時も足を怪我した猫を連れて帰った。
怪我が治るまで一生懸命看病した。
そして、治ったら何処かへ行ってしまったんだ。
そうだ、その猫の名は...
「.........たま」
「はい......」
返事が返ってくるなんて妙にリアルな夢だな
「たま」
「はい」
ん?なんだこのリアルさ。
そしてなんか暖かくて柔らかい物を抱いている感じがするしとてもいい匂いがする。
俺は恐る恐る目を開けてみた。
あれ?なんだろうねこれ?
目の前に女の子がいるよ。
しかも俺抱っこしちゃってるし、
女の子素っ裸だし、
何このリア充イベント
俺昨日何かしたかな?
いつの間にか抱きかかえている女の子と目があった状態で俺は固まっていた。
「お久しぶりです。幸人さん」
「え?なんで俺の名前を?」
「私はあの日、あなたに助けていただいた猫です」
「はい?」
何ですか?あの日助けた猫が人間になって恩返しに来るってやつですか?
いやいやいや、鶴じゃあるまいし。
「猫がなんで女の子の姿してんだ」
「うーん、この世界で言うなら…化け猫?猫又?」
「わかりやすく言うならジ○ニャン?」
「まって!それいろんな方面から怒られそうだからやめて」
「とりあえずここに住むことに決めたましたからよろしくおねがいいたします」
「ふぇ?!」
こうして僕と彼女との生活が始まった
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