揺蕩う季節に君想う

Kさん

揺蕩う季節に君想う

春。僕は大学1年生になって初めての彼女ができた。


僕にはもったいないくらい美人で人気者で、今だになんで告白を了承してくれたのか答えはわからない。

僕が彼女の彼氏だとわかれば他の人たちはため息が出てしまうだろう。

それくらい僕にとっては高嶺の花だった。


彼女とは学科も違うしサークルも違う。

入学式の日にたまたま席が近くなってたまたま話せる機会があった。それが始まり。

高校まで女の子とまともに話したことない僕はとにかく緊張していた。

拙い部分が露呈していたはずなのに、彼女は僕の話を聞いてくれてすごく笑ってくれて。

経験のない僕にとって、好きになる理由なんてこれで充分だった。


本当に幸せに絶頂だった。


***


夏。彼女の美人さと人気を実感する事になる。


いい意味、というわけでもない。

夜な夜な開かれる大学生特有の飲み会。僕と彼女は基本的に接点がないだけに、別々の飲み会の席にいることが普通だった。


簡単にいえば嫉妬していた。

彼女は先輩、同級生にかかわらず男人気があって、告白されることもあった。

それだけでも辛いのに彼女はそのことをどこか誇らしそうに僕に連絡してくる。

それがどうしても許せなかった。

他の奴となかよくなっていく彼女を見ていられなかった。

だから嫌われると分かっているのについ束縛してしまう。

そんな僕に嫌気がさしたのだろう。


8月の最後の日、彼女は僕の元を去っていった。


***


秋。もう僕の元に彼女はいない。


だけど大学が同じ以上彼女と顔を合わせることは避けられない。

僕は気まずい思いをしている。だけど彼女はそんな素振りは見せない。

まるで僕との過去なんてなかったかのように、そしていつものようにいつも誰かに囲まれて楽しそうで。


もうやめよう。

僕の生活の中に彼女が刷り込まれている。

リハビリにはまだ時間がかかることを僕は思い知る。


***


冬。本屋でたまたま彼女と遭遇した。

彼女の方も一人だったようで流石に気まずそうにしてくれた。

してくれた・・・。と思っているあたり、僕の気持ちが変われなかったことを証明している。

そういえば入学式の後に彼女と遭遇したのもこの本屋だった。

彼女を好きになったのはここだった。入学式で話しをした後、舞い上がっていたがどこか冷静だった。今後の人生でこんな人とはねせる機会なんてそうそうない。彼女とは別世界の人間だと確信したからだ。

だけど、この本屋で僕の好きなミステリー小説を読んでいた彼女を見た時、僕は告白することを誓った。


今日は僕らの好きなミステリー作家の新作発表の日。

発売と同時に買いに来る彼女を知っているのは僕だけだ。

他の誰も知らない、彼女の本当の趣味。


***


ダ・カーポだ。こうして僕の気持ちはループする。


何年経ってもそれは変わらなかった。

相変わらず僕は彼女の近くにいる。

だけど僕は彼女のそばにいることは叶わない。

そんなことはもう分かりきっている。


それなのに・・・。


君との春はもう来ないのに、、、


どうやら君への感情に「秋」もきてくれない。

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揺蕩う季節に君想う Kさん @kocoa568

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