試運転
その後、実際に戦闘面においてアップデート等で変わった点がないかどうかを確認するべく、俺たちは第二の街の近くのフィールドエリアである平原エリアへと足を踏み入れることとなった。
当然ながら、レンとリーサのパーティーと、俺と従魔たちのパーティーとでパーティーコネクトを行っておく。これをやらないといざというときが面倒だからな。
そういえば明らかにピンチの場合は自動で救援要請状態になって、通りすがりのパーティーやプレイヤーが救助参戦することができるようになったらしい。そういう事態にはならないようにしたいが、いざというときにパニックになって誰も助けに入れないという事は無くなりそうだ。
さて、運営イベント前のレベリングの際にこの辺りのモンスターとはちょくちょく戦ってきたのだが、この辺りには基本的にホーンラビットの派生のカラーラビットと、平原ラットや草原ラットなどのラット系が出現する。
この付近のモンスターの厄介なところは、最初は数体で出現するのだが即座に仲間を呼んで『群れ』を形成するというところだ。これは第二の街の付近、というよりも第一エリア寄りでない平原エリアでの現象らしい。モンスタースレで検証されていた。
故に俺たちは大量に増えた平原ラットとカラーラビットの群体と相手をしていた。
因みにこの群れ現象、一回の戦闘で多数のエンカウントを行うため継戦ボーナスが発生するのだが、それによって経験値量も通常よりも増える他、ドロップアイテムも通常よりも豪華なものになる……事もあるらしい。なので、比較的多くのプレイヤーからは好意的に捉えられている。
「あーん! 中々すばしっこいわねこのネズミ! フィーネ、全部ぶち抜いて!」
『
リーサとフィーネは大量に出現した平原ラットの動きに翻弄されていた。とはいえ、ラット系は結構すばしっこい相手だが直線的な攻撃しかしてこないため、落ち着いて対処すれば特に問題なく倒せるだろう。
結果としてリーサはフィーネにミサイルをばら撒いて攻撃する範囲攻撃の『ミサイルサーカス』を使わせることで一網打尽とした。そういえばリーサたちの戦闘はしばらく見てなかったが、結構意思疎通ができている感じじゃないだろうか。
「ユーク! そっちに赤兎が向かったぞ!」
そんなリーサたちの勇姿に見惚れていたら、前衛でレッドホーンラビットとイエローホーンラビットの群体と対面していたレンが俺に向かって叫ぶ。
当然ながらカラーラビット《こいつら》も相当すばしっこいので前衛からすり抜けて後衛に向かっていく時もある。そういう時は慌てず騒がず、従魔に命令して対処だ。
「分かった! ゼファー、『
「任せとけ! 『
そう言ってゼファーは掌から小さな稲光が固まった弾丸のような物を作り出すと、その弾丸はかなりのスピードでレッドホーンラビットに向かい、そのまま命中。一瞬にして弾け飛んでしまった。
うーん、流石の属性相性といったところか。
カラーラビットは、レッドは火属性、イエローは土属性とそれぞれの色に対応した属性を持っており、その属性に合わせて攻撃に属性効果を付与してくるのだ。
物理攻撃のダメージはVITで軽減するのだが、属性効果によるダメージは魔術系統と同じでMINによって軽減する仕様である為、片方に偏っていると攻撃を受けた際に思わぬ大ダメージを食らう可能性がある。
特に自身に特定の属性を付与する『属性防具』を装備していて、それがたまたま敵が得意とする属性だったときは、それこそかなりの大ダメージとなるだろう。
……まぁ、その場合も当らなければどうということはない、で済む話なんだけどな。
そもそも属性系防具の作成には【中級鍛冶】以上の技能が必要らしく、またNPCの店売りとかでも第二の街に入ってからようやくしょっぱい性能のものを見かけるレベル(しかも結構お高い)なので、今のところは杞憂といえるだろう。
このカラーラビットと対面する際に問題があるとするなら、それはこちらが属性攻撃を放つ際に効きづらい場合があるという点だろう。
前にシグねぇたちと鉱山ダンジョンに入った際に触れたが、敵が弱点属性ならダメージが増加し、逆に耐性属性ならダメージが減衰するという仕様の事だ。
特によく出現するレッドホーンラビットは火属性を持つのでゼファーが得意とする風属性の攻撃は耐性となるため、威力が減衰してしまうわけだ。
因みに火属性の弱点となる属性は水属性と雷属性であるため、ゼファーのもう一つの得意属性である雷属性の攻撃はレッドホーンラビットにはよく効くということになる。それがさっきの弾け飛んだ兎が出来上がった所以となる。
「ユークさん! 向こうからまたホーンラビットの増援です!」
取り敢えず俺は後衛として、レンやリーサたちのうち漏らしを対処したり、範囲外の敵に攻撃したりしていたのだが、そんな最中にグレイに跨って同じく離れた敵を対処していたミュアが幾度目かの敵の増援を報告してきた。
「またかよ! レン、早いところ群れのボスを倒してくれ! もう十分戦っただろ!」
「分かってるよ! ただ、新しいやつと混ざってどれが最初の奴か分からねぇんだよ!」
「はぁ!?」
この群れ現象だが、最初に出現した個体を倒し切らないと延々と増援を呼び続ける仕様となっている。
流石に上限はあるが、それでも結構な数を倒す事になる。継戦ボーナスを稼ぐためにそう設定されているのだが、ここまで混戦してしまうと途中で止められなくなる為、壊滅の危険性もある。
最初に出現した個体は【観察眼】みたいな視覚系のアビリティで判断できるが、それがないと少しばかり面倒なことになる。
対処ができれば問題ないが、想定以上に増えすぎて手がつけられなくなってしまったようだ。俺が指摘できればいいが、後衛からだと確認できないんだよなぁ……。
こうなるとレンには大魔術みたいな範囲技で一気に全滅させるか、逃亡用アイテムで逃げ出すという手段しかないが、前者は近接戦闘メインのレンにはない手段だし、後者はせっかく倒したモンスターの経験値やアイテムが無駄になってしまうのでできるなら使いたくない。そもそもレンが持ってるかどうか知らないし(俺は持っていない)。
……となると、俺が前に出る必要があるわけだ。
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(1/6)『キャラメイク』において、近況ノートにも書きましたが内容が長かったので、途中から別ページとして分割しました。内容は3ページに分割しています。また一部内容を改定しました。
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