イベント開始、バトルロイヤル!

イベント受付開始

 運営イベントである『バトルロイヤル』が行われる当日、その日は朝から第二の街は賑わっていた。


 まぁ、それ以前から人はかなり多いんだけど、辿り着いてから即レベリングとか始めちゃったから、あまり見て回ってはいない。とにかく赤いものがいっぱいある感じの街という印象だ。


 そんな第二の街であるが、今日は感謝祭の日でもあるらしく、街中はより赤い感じに染まっているし、NPCもお祭り騒ぎとなっている。


 その中でコロシアムを使った催し物が、コロシアムから特別なバトルフィールドに転移して戦う運営イベント『バトルロイヤル』と、普通のコロシアムを使ったNPCの武闘大会の2種類がある。


 前者の方は来訪者限定の大会ということでNPCが乱入することは基本的になく、また後者の方は基本的に事前申込だったという体でプレイヤーは参加できないことになっている。


 観戦自体はどちらでもできるので、敢えてNPCの武闘大会をスポーツ観戦感覚で見に行こうとするプレイヤーも多そうだった。以前から武闘大会に参加したりしていたプレイヤーによると、見世物としてはかなり満足度の高い試合が行われているらしい。気になるが、俺はバトルロイヤルに参加するので見れない残念。


 そんなバトルロイヤルであるが、続々と参加者がコロシアムの方へと集まっているらしい。参加受付開始時間である7時には、ここ第二の街に辿り着いていた戦闘職が詰めかけたという。


 時を同じくして、はじまりの街やその他の噴水がある小規模市街地エリアでも移動が開始され、一気にコロシアム内の人数が増えることとなる。


 とはいえ、このコロシアムはたとえ1万人入ってもまだまだ余裕があるというレベルでデカいため、NPCの武闘大会観覧者の邪魔にもなっていない。そもそも、第二の街に辿り着いていないプレイヤーはここから出られないので、それなりに広くなくては困るのだが。


 そして俺もだいたい8時位には参加申込を済ませることとなった。まだどの組になるのかは発表されていない。基本的に受付終了後に抽選されて通知されるようだ。


 この第二の街到達者は優先的に割り振られるらしいが、レンたちとかち合うのだけは避けたいところだ。


「おや、ユーク殿ではありませんか!」


 コロシアムで発表時間を待っていた時、ふと俺に話しかけてきたのはクラウスであった。


「クラウス! 久しぶり……なのか?」

「ハハハ、ここでは体験が濃厚ですからね。時間の感覚を忘れてしまってもおかしくないですな。まぁ3日前ならば久しぶりなのかもしれませんね。しかし、何故初期装備で?」

「あはは、それはちょっと色々あってな?」


 案の定、クラウスが俺の装備に対して疑問を抱いたので軽く流すことにする。まぁ、知ってるプレイヤーにはあまり意味のないハッタリではあるが。


 そうか、俺の初めての依頼も、もう3日前になるのか……。あの時も壮絶だったからなぁ……クラウスが目の前のモンスターをバッタバッタと殴り倒していくさまは、まさに破壊って感じだった。


 そう思うとクラウスとも当たりたくないな……。


「そうですか。しかし、ユーク殿も大会に参加されるんですな。ということはゼファー殿やミュア嬢、グレイ殿と一緒に?」

「まぁそうなるな。今はコロシアムを見に行ってるから居ないけどね。ホントはもう一体、クラウスと別れた後にテイムしたんだけど、今は別の用を頼んでて居ないんだ」

「成程……。色々あったのですね。その新しい従魔の方とは後日お会いしたいものです」


 その後、クラウスと他愛無い話をしていると、ふと離れた場所でやんややんやの大騒ぎ、かなりの喧騒が聞こえてきた。


 プレイヤーたちもなんの騒ぎかと野次馬のように集まっている。まぁ、その声には聞き覚えがあったんだが……。


「まさか、ここでも喧嘩してるのかあの二人……」

「おや、ユーク殿もお知り合いですか、あの二人と」

「まぁね」


 そう話をしながら騒ぎの現場に向かうと、そこにはこの前と全く同じ様子で喧嘩をしているナギサとシグねぇの姿があった。


「オーホホホホ! 今日こそあなたの無様な負けっぷりを衆目に晒して差し上げますわぁ!」


「あのねぇ……? あんまりそういうのは大きく言うものじゃないのよ? 実現しなかったとき、物凄く後悔するんだから」


「なんですってぇ!?」


 聞くに堪えない二人の言い合い……というよりも、一方的にナギサが罵倒したのに対して的確にシグねぇが言い返した言葉がナギサにクリーンヒットしているといった状態だが、とにかく騒ぎになって人が集まっているために受付に行くことができない人が出てき始めている。


 うーむ、ナギサは別に知り合いでもないのでどうでもいいのだが、このままではシグねぇが悪く言われてしまいかねないので、取り敢えず止めに入ることにしよう。


「すまん、クラウス。ちょっとあの二人止めてくる」

「それならば私もお手伝いしましょうか?」

「……いや、クラウスが入ると余計に悪化するかも。俺に任せてくれ。取り敢えず、シグねぇは止めてくるからさ」

「はぁ……分かりました」


 クラウスが止めにかかろうとして暴走したらどうしようとかは決して思ってないのだが、取り敢えずシグねぇだけなら俺で何とかなるからな。


 まぁ流石にナギサの方は知らん。


「「ちょっと、二人共やめなよ、そんな不毛な言い争い……ん?」」


 俺が注意しようと二人の前に出てきてその台詞を言うと、まさか隣にいた小柄な女性プレイヤーも一言一句違わぬ文言を口にしていた。

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