再びの廃坑道へ
「えっと、今日はごめんね。私のわがままに付き合ってもらって」
「いや、サザンカさんの気にすることじゃないよ。俺もサイモンさんみたいに、サザンカさんみたいな才能がある人が燻ってるのは勿体ないなーって思っただけで」
はじまりの街、その西門から草原エリアに向かう俺とサザンカさん。
連絡を受けてはじまりの街に戻った際には、サザンカさんはサイモンさんと共に会話をしていた。
その際に、サザンカさんがサイモンさんから免許皆伝とはいかないものの、一端の鍛冶士としてお墨付きを貰っていた事を知る。
そして、俺が来たことでジョブ習得を決意したことを知ったサイモンさんは自身が使っていた火造り槌を譲ることにしたらしい。受け取れないと断るサザンカさんだったが、弟子は黙って受け取るもんだと言われて、感動のあまり瞳を潤ませて受け取っていた。
その後、サザンカさんの装備の準備などを整えてからジョブ習得に向かうこととなった。そう、廃坑道にである。
現在、サザンカさんは自分で用意した装備に固めている。防具のほぼ全ての部位でINTのマイナス効果があるが、その変わりにSTRとVITの上がり幅がサイモンさんの作った防具よりも高い。
サイモンの防具がプラス効果のみで、合わせて大体60程度なのに対して、サザンカさんの場合はだいたいプラス効果が80〜90程度となっている。その分、マイナスが30〜40くらいはあるのだが。
とはいえ自身が伸ばしてないステータスのマイナス効果はあまり気にならない場合もあるため、一概にマイナス効果があるからといってダメだという事はない。まぁ、HPやAGIなどはないと困るステータスなので、あまりマイナスになるのはオススメできないが。
サイモンさんもマイナス込みでもこれだけのものが作れればそれなりのもんだと褒めていた。何よりサザンカさんは外見も綺麗だからな。フルセットで売れば間違いなく数万FGはするだろう。因みにサイモンさんの場合は桁が違う。ホント良くあのとき請け負ってもらえたな俺たち……。
ということで現在のサザンカさんのステータスはこのようになっている。
――――――――――――――――
名前:サザンカ
種族:人間族
得意武器:槌
ジョブ:
HP:285 / 285〈+90〉
MP:145 / 145(-50)
STR:288(+250)
VIT:218(+180)
INT:0(-140)
MIN:38
AGI:18(-10)
DEX:378(+170)〈+50〉〔+10〕
SP:0
・アビリティ(9ポイント)
初期:【槌術 レベル5】【鍛治 レベル10 MAX】【鑑定 レベル7】【水生成】【焔術 レベル1 】
追加:【技量補正】【不屈】【耐久】
装備:【火傷耐性】
・スキル
鍛冶(『クラフト』『素材追加』『エンチャント』)・『メイクウォーター』・焔術(『種火』)
・アーツ
槌術(『ファーストブレイク』『クイックブレイク』『ノックバック』)・鍛冶(『鍛造』『仕上げ』)
〈ジョブ〉
・特性
習得時、DEX+10
補正効果、DEX+1、AGI-1
・ジョブアビリティ
【製作補正 レベル10】【耐熱】【相槌】【基本を極めた者】
・ジョブスキル
『補助者指定』『量産』
・ジョブアーツ
『追打』『火入れ』『相槌』
〈装備〉
・武器
メイン:星森の大軽鉄槌(STR+60 DEX+20 MP-50)
サブ:鍛冶士の火造り槌(STR+80 DEX+20)
・防具
頭:翡翠のイヤリング+(DEX+30)
胴体:星森の軽鉄鎧上◎(STR+40 VIT+40 INT-40)
腕:星森の軽鉄鎧上
手:鍛冶のハンドカバー(DEX+40 INT-20)
腰:星森の軽鉄鎧下
脚:星森の軽鉄鎧下◎(STR+40 VIT+40 INT-40)
靴:星森の安全靴(VIT+30 STR+30 INT-30)
外套:耐熱コート(VIT+40 【火傷耐性】)
・アクセサリー
鍛冶のお守り(DEX+40)
星森のペンダント(風玉)(DEX+30 INT-10)
器用の護符(DEX+10)
器用の腕輪(DEX+20、AGI-10)
なし
〈称号〉
なし
――――――――――――――――――
戦闘職ではないはずなのだが、装備のおかげかかなりの火力を持つサザンカさん。
サイモンさんが託した火造り槌はかなりの性能を持つが、かなり小型の槌なので敵に当たりづらいということから普段はサザンカさん自らが作ったハンマーを使っている。MPのマイナス効果は鍛冶スキルを使うときは不便そうだが、別に戦闘中じゃないのでMP回復薬を使いながら行えばいい。
なお、生産を行う際にはSTRではなくDEX、VITではなくMINが上がる装備をメインに用いているらしい。DEXは生産成功率などに効果があるが、MINは何故かというと炉で作業する際に発生する炎熱ダメージ対策らしい。火傷耐性を持っていてもかなりダメージを食らうが、それは属性ダメージ扱いなのでMIN値を上げておくと少しは緩和されるらしい。
取り敢えず、ジョブの方は……見ればわかると思うがこれがクラス1の性能である。とても弱い。
どのジョブの条件も満たせなかったプレイヤーか、そのジョブで経験を積みたいというプレイヤーくらいしか、習得することはないだろう。サザンカさんの場合は、前者であり後者でもある。
元から鍛冶士になろうとしてゲームをプレイした為に、鍛冶士しか目的がなかった。結果としてチュートリアルクエスト終了後は鍛冶以外の行動をほとんど行わずにレベル10になり、クラス2の戦士系ジョブの条件すら満たせずに鍛冶師になったらしい。因みにクラス2の戦士系の習得条件は基本的には『5回以上の戦闘経験』となる。
とはいえ、鍛冶を行う際に槌を用いたことで戦闘技能である【槌術】の技能が上がっているので、最低限のアーツは使用可能となっている。しかし、槌術は杖術よりも予備動作が多い為隙が多くなる。
AGIが低いサザンカさんが安定して倒せるとなれば、より素早さの遅いストーンゴーレム辺りが無難だろう。なので、草原エリアの西側にある廃坑道を目指すこととなった。
「それにしてもこんな大きな狼を従えるなんて、従魔士って凄いんだね」
「まぁ、こいつはゼファーやミュアの協力があってこそだったからなぁ……」
「へぇ~……ゼファーちゃんもだけど、そのミュアさんも結構強いんだね。でも、やっぱりミュアさんが従魔なんて信じられないなぁ……」
「ウフフ。これでもハーフエルフらしいので。精霊に近いみたいなんですよ?」
サザンカさんは俺と共に歩くグレイとミュアを見比べて呟く。ゼファーはパーティーにだけ見えるように半透明化しているらしい。ミュアとは親しげに話しているようだ。
現在はサザンカさんとパーティーを組んで、草原エリアを移動中だ。
色々面倒なのでサザンカさんには今のところミュアのことは軽くしか説明できていないが、まぁ問題はないだろう。流石に隠しイベントのことを事細かに説明するのは難しい。
因みに現在の移動はサザンカさんの速度に合わせているためかなり遅い。本来なら今の俺たちのレベルでも十数分で着くのだが、もうしばらくかかりそうだ。
こういうとき、大型従魔のグレイにまたがって移動できればいいのだが、残念ながら現状でそれをやると間違いなく振り落とされる。モンスターに乗ることができる【騎乗】アビリティを所有してないので自力で耐えるしかないのだが、グレイのAGIに対して俺のSTRが低いため、十中八九耐えられないのだ。
グレイのテイムでジョブレベルは上がったのだが、それでも現状はレベル14程度。グレイに乗れるようになる【騎乗】が習得できるのはレベル20とまだ先になる。あー、早くレベルアップしたいものだ。
因みにジョブアビリティ以外で騎乗系のアビリティを習得するには、現時点では騎士団での騎馬隊訓練に参加するという方法があるが、その場合は馬限定となる【騎馬】アビリティとなるため、狼であるグレイには乗れないのだ。
そんな道中、サザンカさんのAGIでは対応できないホーンラビットや草原ラットは、グレイとミュアが倒していった。俺、今のところ出番なし。
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