学生トーク「真夜中編」

山田 武

学生トーク「真夜中編」



「真夜中……それは、秘密の時間」


「──分かる」


「マジで!?」


 今の今まで聞いたことの無いような反応に対し、発言を始めたのにも関わらず驚いてしまった少年。


「おいおい……もしかして、今日熱でもあるのか?」


「……俺のことを何だと思ってるんだよ。単に今回の話だけ、俺の興味をそそっただけだろ。で、具体的に何を話すんだ?」


「って言われてもな……まあ、真夜中に何をするかでいいんじゃないか?」


「俺もお前も同じじゃん」


「「──アニメだよな!」」


 声高々に叫ぶ……ただし、周りに配慮した声量でだが。

 お互いに共通の趣味があるからこそ、今回の一致は成しえたのだろう。


「時間帯的に音漏れを避けなきゃいけないから、普段よりボリュームを下げて観なきゃいけないドキドキ感がいいよな」


「まあ、ただテレビを観ているといいシーンで音を上げたくなるけどな……それがバレたらと思う不安もあるか」


「分かる分かる! たださぁ、いつまで起きていていいのかが問題だよなぁ。だって、翌日が休みでもない限り、余裕なんてまったくないわけだし」


「無いわけじゃなくとも、普通に健康を考えればな……いやまあ、それを言うと深夜帯にアニメを放送するのを止めてほしいけど」


 現在、深夜帯のアニメの多くがネット配信などで後日視聴可能になる場合が多い。

 ……だがそうではない、視聴者たる者放映日に見ておきたいという欲があるのだ。


「あとはアレだ、漫画もな!」


「……ん?」


「深夜は漫画を読みつつ、アニメをながら見する……これに限るよな!」


「──んなわけねぇだろ、バカ野郎が」


「……えっ?」


 突然の不和に首を傾げる少年、だが友人はこめかみをヒクヒクさせながら告げる。


「アニメを観ながら漫画を読む? ながら観に限る? コマーシャルの間に集中して読み進める? ……何言ってんだよ、お前」


「えっ? いや、最後のは言ってな──」


「そうじゃねぇだろうが! アニメはアニメで集中して観て尊さに浸って、そういうことは後回しだろうが! それをながら観? アニメ一本作るのにクリエイターの皆様がどれだけ時間を掛けてると思ってんだよ!」


「す、すんませんでした!!」


 慌てて謝るも時すでに遅し。

 彼の抱く制作会社への情熱は、休み時間が終わるまで続くのだった。


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学生トーク「真夜中編」 山田 武 @yahhoo

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