第38話 牛鬼1(改訂版)

 大浜おおはま町は南が海に面し牛が浜と呼ばれる砂浜がある。

 この砂浜に町の人は入らない。

 町には言い伝えがある牛が浜には牛頭ごずという化け物がいて、浜で泳ぐと引きずり込まれるというのだ。

 砂浜で泳ぐなど考えられないことである。

 ある日の夕方、、町の外から来たアベックが牛が浜で泳いで遊んでいる。

 日が暮れ、闇にが迫ってくる頃、アベックの男のほうが突然、海中に引き込まれる。

 女は驚きパニックになっていると牛の頭をした化け物が男のちぎれた足をくわえて水面に顔を出す。

 化け物の口には牙が生え足から肉をかじり取る。

 女は必死に海から上がろうと泳ぎ

 「たすけてー」

と叫ぶ。

 浜の外の道には人影がいくつもあるが反応はない。

 女は足がつく波間にたどり着き助けを呼びながら走る。

 もう少しで海から上がれる所にたどり着くが、左足を何かが掴み一気に海中に引きずり込んでいく。

 波間は赤く染まり、牛の頭をした化け物が女の内臓を食べるのが見える。

 道にいる町の人は見ているだけで何もしない。

 1人だけこの様子をスマホに撮影している。

 彼は映像をインターネットに乗せる。

 そして、牛が浜の化け物は有名になる。


 逢神おうがみたけると鈴鹿すずかは週に1回のオカルト相談コーナーのためにテレビ局にきている。

 控室には、稲荷の使いの美鈴みすずが当然のようにいる。

 そして、弁当と菓子が用意され、それに加えて美鈴が持ってきた供え物の饅頭がある。

 鈴鹿は、菓子と饅頭をあさっている。

 たけるは美鈴に言う

 「牛が浜の化け物は知っていますか。」

 「知らん、テレビは見ないからのう。」

 「それでテレビに出ているのですか。」

 「問題なかろう。」

美鈴は言い切る。

 フロアディレクターの清水えりなが入ってくる。

 えりなはみんなに言う

 「牛が浜の化け物は知っている。」

 「美鈴様が知りません。」

 「たける、我が無知のようではないか。」

 「なら、映像を見てもらうわ。」

えりなはネットに流れている映像をノートパソコンで再生する

 「牛鬼ぎゅうきではないか。」

 「鬼ですか。」

 「牛の頭に鬼の体をしておる。」

 「鬼か・・・」

たけるの雰囲気が変わる

 「今日の相談者はこの女性の妹よ。」

えりなが言う。

 オカルト相談コーナーの生放送が始まる。

 たけるが座り、その隣に美鈴が座る

 「相談者の方にお話を伺いましょう。」

たけるが言うとすりガラスの向こうに相談者が座る。

 そして、相談者はボイスチェンジャーを通した声で話し始める

 「私の姉は牛が浜で牛の化け物にころされ

  ました。」

 「あれは牛鬼じゃ。」

 「鬼ですか、退治してくれませんか。」

 「たけるは鬼切じゃ、退治してやろう。」

 「退治するのは私ですよ、美鈴様。」

 「この娘の希望をかなえてやれ。」

たけるは牛鬼を退治することになる。

 控室に戻るとえりなが水着をもってはいてくる。

 えりなは鈴鹿に

 「鈴鹿さんの水着ですよ。」

 「どうして水着。」

 「海に行くんだから水着でしょ。」

 「退治するのは俺ですよ。」

 「たけるは適当に水着を選んでおいて。」

 「視聴者サービスですか。」

 「鈴鹿さんの水着次第で視聴率が変わる

  わ。」

 「牛鬼退治は二番目かのう。」

美鈴が嘆く。

 えりなは鈴鹿の水着に白色のビキニを選ぶ。

 鈴鹿はたけるに聞く

 「どお?」

 「似合っているよ。」

鈴鹿の均整のとれた体に白色ビキニはまぶしかったがそれは言わない。

 「それだけ。」

 「きれいだよ。」

たけるは言葉を絞り出す。

 えりなが

 「そういうことは2人の時にしてよ。」

文句を言う。

 「そろそろ結婚してはどうじゃ。」

 「子供はどうするんですか。」

 「それはえりなに頼めばよい。」

 「美鈴様、馬鹿なこと言わないで」

えりなは赤くなる。

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