第15話 逢神直高と鬼切りの刀(改訂版)
剣の腕に優れ、逢神一族の中でも傑出している。
直高は元服すると貴族の娘、秋ノ葉の護衛の任に着く。
直高が秋ノ葉に口を利くことは許されていないが、美しい彼女の護衛に誇りをもって仕えている。
その頃、京では、貴族の屋敷に白羽の矢が立つと3日後に鬼が現れ、娘をさらっていく噂が立っている。
逢神一族の仕える貴族が襲われる、鬼に備えた武士も貴族も皆惨殺され娘はさらわれてしまう。
噂では鬼には刀も矢も効かないということである。
そしてついに秋ノ葉の貴族の屋敷に白羽の矢が立つ。
貴族は守りの武士を増やす腕に覚えのある者50名とその他の者50名の100名である。
3日後、鬼が現れる、鬼は鎧に刀を持ち武士の姿をしている。
だが、口には牙があり頭には角が生え、恐ろしい形相をしている。
直ぐ、武士たちと鬼は戦いを始める塀の上から武士が矢を射かけるが鎧に矢は刺さっても、鬼の肌には傷一つ付かない。
鬼は塀の上の武士に襲い掛かる。鬼の動きは早かった、武士たちは刀で頭を割られ、鬼の左腕で胸を貫かれて血を飛び散らせながら地面へ落ちていく。
塀の上の武士を片付けると鬼は屋敷の庭にいる武士たちと戦闘を始める。
秋ノ葉が直高に声をかける
「怖くはないのですか。」
「はっ、必ずお守りします。」
直高は、自分の番が回って来るのを待っている。
秋ノ葉を守るのは自分であると確信している。
鬼は庭の武士を片付ける、庭は武士たちの血でぬかるみと化し、武士たちの死体が転がる地獄となっている。
鬼は屋敷の中に踏み込む、武士、使用人関係なく殺していく。
そして貴族の所にたどり着く、鬼は言う
「娘をもらい受ける。」
そう言うと貴族の頭を左手で掴み握りつぶす。
そして妻を生きたまま食べ始める。
妻は悲鳴を上げるが誰もその悲鳴を聞くものはいない。
悲鳴に代って、鬼の咀嚼する音が鳴り響く。
鬼は秋ノ葉の所に着くが直高が立ちはだかる。
直高は素早く間合いに入ると鬼を袈裟切りにし後ろに飛んで距離を取る。
鬼の鎧が大きく裂けるが体には傷がない。
鬼は直高に右手の刀で切りかかる、彼は刀で太刀筋を変え、鬼の左腕の突きもかわす。
そして、左腕が伸びきったところを刀で兜割りの要領で切り落とす。
鬼は左腕を切り落とされたが、笑いながら言う
「少しは腕が立つようだな、お前も食って
やろう。」
直高は答えない、しばらくすると鬼の切り口から左手が生えてくる。
直高の頭の中では声が響き始めている
「鬼が憎いか、鬼を切りたいか、鬼を
滅ぼしたいか。」
「誰だ。」
「羽左衛門、鬼が憎い、憎い、
憎い・・・」
鬼が再び切り付けてくる直高はそれをかわすと上に飛ぶ、下を鬼の蹴りが空ぶる。
「鬼を切りたい。」
直高は声に答える
「ならば、願いをかなえよう、代わりにお
前と子孫は永劫の時を我と共に鬼を狩る
のだ。」
直高の血が騒ぎ出す、早く刀と取り、その刀に鬼の血を与えろと・・・
自然と刀の名前が口に出る
「羽左衛門ノ贄ノ夜叉」
直高は刀の名を叫ぶ
虚空から護符に包まれた鞘に収まった刀が虚空から浮かびあがる。
直高がが刀を手に取り、抜き祓うと、心の中が鬼への憎しみで満たされる。
直高の形相が憎しみに変わる
「鬼は切る。」
鬼は笑う
「刀を変えたところでお前の命運は変わら
んぞ。」
鬼が刀を振りかぶったところに直高は鬼の首に刀で突きを入れる。
首に傷はすぐに塞がるはずなのが塞がらないどころか、体液を吸われるように干からび、激痛を与える。
直高は次に刀を持っている鬼の右腕を切り落とす
「鬼切りの刀か。」
鬼は後ずさる
「見逃せば宝をやろう。」
直高には鬼の言葉は聞こえていない、心は鬼へに憎しみに満ちている。
鬼の左腕も切り落とされる。
そして鬼は直高に真っ二つに切られる。
しかし、鬼への憎しみは治まらない。
秋ノ葉は直高の名を呼び続ける。
彼が刀を鞘に収めると誰かが自分を呼ぶ声が聞えてくる。
そして、憎しみの心が収まってゆく
「直高、しっかりしてたもう。」
彼の意識が戻る
「秋ノ葉様お怪我はありませんか。」
「大丈夫じゃが、みんな亡くなってしもう
た。」
「では、私の家に来てください。」
「はい。」
直高と秋ノ葉は逢神の屋敷へ行く。
そして、秋ノ葉は直高の妻になる。
直高の鬼退治の功績が認められたのだ。
それからは直高の子孫には
羽左衛門ノ贄ノ夜叉
が憑りついている。
刀は子孫に鬼を切らせ続ける。
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