第10話 呪いの刀の誕生(改訂版)

 昔、羽左衛門うざえもんという腕の立つ刀鍛冶がいた。

 彼には妻とかわいい一人娘がいた。

 ある夜、家の扉が打ち壊される。

 最初は熊かと思うが違うようだ。

 大きな人の形をしている。

 それは、娘の足を掴むと引きずって外へ出て行く。

 羽左衛門は刀を手に取りそれに向かっていく。

 刀で切りつけるが、キンと音をたて折れてしまう。

 「おっとー、助けてー」

娘の声がする。

 月明かりがそれを照らす、こぶだらけの赤い体に頭に角、鬼である。

 鬼は高く足を吊り上げるともう片方に手で片足と掴む

 娘の鳴き声が響く。

 鬼は上を向き口お開け、娘の両足を引き裂く。

 「きゃぁぁー」

娘が絶叫し、体が二つに裂ける。

 鬼は落ちてくる血と臓物を水でも飲むように飲み込む。

 そして息絶えた娘の体を食べ始める。

 羽左衛門と妻は肉を引き裂きすしゃくする音、骨をかみ砕く音を聞かされるが無力である。

 彼と妻は泣き続ける。

 鬼は食べ終わると万足気に立ち去って行く。


 羽左衛門は泣き続けた後、鬼への憎しみのみ残る。

 彼は刀を打ち始める鬼を憎み、呪いながら・・・

 妻は泣き続ける鬼を憎み、呪いながら、そして心が変化していく。

 強い思いの心は人でないものに変えていく・・・

 羽左衛門は命を削って刀を打っていく鬼を殺す刀に命を乗せる。

 刀ができた時、羽左衛門の妻は夜叉に変化している。

 羽左衛門は刀を妻であった夜叉に向ける。

 そして、刀で夜叉を貫く、刀が夜叉の体液を吸うように夜叉は干からびていく。

 夜叉がミイラのようになると羽左衛門は力尽きたように生涯を閉じる


 刀は人から人へと渡るが刀を握るものは気が狂ったように鬼を求めるようになる。

 鞘は護符に包まれ力の封印がなされるが持ち主は鬼に遭うと狂ったように刀を抜き鬼を殺した。

 このため、鬼切りの妖刀として貴族の蔵の中に仕舞われるがいつのまにか姿を消した。


 今、鬼切りの妖刀は、逢神おうがみの血族に憑りつき、持ち主となったものに力を与えるとともに鬼を狩らせ、そのものが死ぬと別の逢神の血族の元に現れるのである。

 逢神たけるは夢を見る、羽左衛門が見せる悲劇を、そして言うそばで寝ている鈴鹿を指しそこにも鬼がいるぞ。

 しかし夢はやわらかい暖かいものに包まれ消える、たけるが目を覚ますと全裸の鈴鹿がベットに入り抱き着いている。

 たけるは鈴鹿が刀の呪いから守ってくれたのかと考える。

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