アスクレピオス対策課
噛み砕いた粒ラムネを呑み込んだアヤノは、話を続けた。
「酒呑坂めいさん。単刀直入に言わせてもらうけど、あなたはアスクレピオスに狙われているの」
「あー……やっぱり? 何となくそんな気はしてましたね」
「……えっ、驚かないの?」
アヤノはめいの反応が予想外だったようで、めいの顔を覗き込んできた。
「組織の名前はそりゃあ知らないですけど……今までダンクルオステウスだの、サイボーグのサメだの、ニンジャだのと戦ってきましたから……狙われてないって思う方がおかしいというか……しかも友達が今まさに変な組織に連れ去られてて……」
「むむむ……あわよくば相手の知らない情報を開示して驚かせることでマウントを取ろうと思っていたのに……不覚……」
「何ならこの右腕の傷もさっきヒグマと戦ったからで……あっ、ヒグマは関係ないですか?」
「ヒグマは……どうかしらね……てか寒っ! 北海道寒っ!」
びゅうっと冷たい風が吹き寄せて、アヤノのセミロングの金髪をなびかせた。その冷たさが身にしみたようで、アヤノは肩を縮めてぶるっと震えた。そんな様子を見ていためいは、この人大丈夫だろうか……と、早くも心配になった。
「で、インターポールさんは何をしに来たんですか?」
「酒呑坂めいさんが意外と好みの女性だったからお茶の誘いに……じゃなかった、アスクレピオスに狙われていることを伝えるのと、連絡先を交換するために来たの。あっ、連絡先の交換っていうのは、別にヘンな意味はないから安心して」
安心して、と言われても、別の意味で安心できない。この人を見ていると、国際刑事警察機構という組織自体が心配になる。
けれども……比奈救出のためには、この人と協力しておいた方がよさそうだ。こちらには手がかりが何もないのだから。
めいはスマホを差し出し、アヤノと連絡先を交換した。心なしか、アヤノの表情がウキウキしているように見える。怪しい人物とはいえ、美人に気に入られることに悪い気はしない。そう思ってしまう辺り、自分も面食いなのだろうか……と、めいは自嘲した。
「また後で連絡するから、それまで右腕を労わってね。それじゃあ、アディオス!」
そう言って、アヤノはいつの間にか駐車場に停められていた銀色のスポーツカーに乗り込み、牧場を後にした。そういえば、この人はちゃんと許可を経て牧場の敷地内に入ってきていたのだろうか。一応、警察組織なら話をすれば通してもらえるだろうけれども……そんなことを考えながら、めいは走り去るスポーツカーを見送った。
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