東京

曖昧

叙文

なぜ、私は東京に居ることにこだわっているのか。


無職になって恋人もいない。


これ以上東京に住んでいることに意味はあるのか。


ブリティッシュショートヘアの約1歳のオスと25歳無職の男が東京の世田谷区渋谷から各駅停車で10分ほどのところで暮らしている。


家賃は7万6千円に加えブリティッシュショートヘア(名はでんわ)のローンも毎月1万3千円ほど払っている。


他、光熱費やインターネット回線料、食費、Spotify、Netflix、アメトークClub等のサブスク費用、(アメトークCLUBは2週に一回しか見ない為解約しようと思うが、見てみるとお笑いが今の私を救ってくれるかなと感じてしまい解約出来ず)、煙草代、酒代、この辺の嗜好品は削れるが削らない。煙草も今年の10月からまた値上げし愛用であるハイライトもついに500円代に達成するらしい。煙草を辞める理由が健康の為なら辞めた方がいいと思うがお金を理由で辞めるなら煙草代も払えない自分の不甲斐無さを感じてしまうから余計辞められない。もし、私が全くお金に困っていないのであれば煙草を辞めるなんて考えが一切浮かぶはずもない。


費用の話に戻ります。


その他、食費、交際費など雑費を含めた上に、無職である為に年金や保険、住民税など生きているだけ摂取されるお金もかかる。


現状、1番お金がかからない方法は、九州の端に位置する鹿児島県霧島市にある実家に引きあげるのが最善だと思う。


霧島は温泉が有名で次点にお茶やお酒などが有名だったと思う。


実家が鹿児島だと人に話すと「いいね、行ってみたい」などと言われるが、私よりも遥かに貴方達の方が鹿児島の魅力を知っていると思うしなにより帰省は旅行でもない為、楽しみやワクワク感なんてものはない。


最近帰省をしたが、地元の友達が全くいない私は1週間で東京が恋しくなった。


どうして、帰る場所でもない東京が恋しくなったのか。


鹿児島から東京に向かう飛行機で屋上に出てた母と妹が手を振っている姿がSKY309の19Aの座席の小窓から見えた。母に「見えてるよ」とラインを送り手を振り返したら大きく手を頭の上まで上げているのがよく見えた。母と妹の隣で赤いタオルのようなものをブンブンと激しく振り回している隣の人の方が目立っていたが彼?彼女の激しさが家族の姿を見つけられた為、感謝を述べたい。いつか会ったら今治の赤いバスタオルを送りたい。


飛行機は離陸した。


そういえば、鹿児島空港で搭乗ゲートを潜って喫煙所に行った時に青いBIGのライターが着火せず隣にいた青年に火を貸してくださいと言おうと見たところ、彼の銀色に輝くジッポライターも火花を申し訳なさそうに出すだけで着火してないようだった。


二人してマスク越しにも分かる


「火を貸して...あっ」ってのを喫煙者テレパシーで感じ取ったしなんなら聞こえてた気もする。


もし、このまま飛行機内で何か異常な展開が巻き起きても私は死ぬ前に煙草を吸えないのか、どうして機内に持ち込めるライターが1つだけなんだよと少し不機嫌になったしイラついた。


煙草が吸える環境にあるのに煙草が吸えないと喫煙者はすぐ機嫌が悪くなる。良くない。


機内では久々に家族と過ごした時間を思い出して少しだけ目頭が熱くなった気がしたがいつのまにか寝てしまった。


20分くらいコクコクとしていたら、客室乗務員の方からキットカットとポケモンの柄のマスクを貰った。


その後すぐにホットコーヒーの無料サービスがあったが、行きの飛行機でもらったコーヒーが熱くて飲めなかったのとそもそもホットが苦手だったのとただ味がアレなアレだったものと熱くて飲めないにも関わらず紙コップの回収を回る時間が早くて急かされる感じがした事もあり今回は「大丈夫です。ありがとうございます」と多分発声している声としては極小のエアコンで掻き消されるような掠れた声と微笑と会釈で丁寧に断った。


東京、鹿児島間は約2時間で移動できる。飛行機は離陸時と着陸時の事故が多く離陸3分と着陸8分が危険で『魔の11分』と言われているらしい。


離陸時と着陸時に機内の照明を暗くするのは、乗客の目を暗順応させる目的があるようでそれを知ってから飛行機に乗るときに自分が死んだ時の事を考えるようになった。今はもう親しい間柄の人がいないが以前までは親しい人に対して自分が死んだ時の為に通帳、印鑑の場所、火葬時に入れて欲しい物、お葬式かけて欲しい曲、高く売れそうな品物のリストを書いてメモに残しいつでも送れる状態にしておいた。飛行機に乗るたびに遺書を書いていた。


いつでも死ねるように死んだ後に後悔がないように。


どうせ死んでなくなるのにこの世に後悔なんてものはあるのだろうか


あるとしても化けて出るほど活発な幽霊になれる気もしないから、今夜死ぬにしても最高の人生だったと思って死にたい。


あ、でも火葬ってやだな。でも日本って火葬が99%ほぼ確実に火葬だ。あるとして土葬かな。


土葬って条例によって土葬禁止区間が設けられていて一部の県(山梨、茨城、北海道など)で認められているみたいだが一度も訪れたことのないところで死んだ後に眠っているのって嫌だなぁ。もう早速死後に後悔がありそう。


どうせなら、死んだあとはもう骨も残らないほど何かに食べられて何かの動物の栄養にでもなって欲しい。骨の灰なんて何かの植物の栄養にでもなってプランクトンにでも分解されたい。分解してくれるのかな微生物さんどうですかいけそうですか。


ミニマリストってのも流行っているし持ち物は軽くして燃えカスなんて有効活用していこうや。


そして臓器提供意思カードを掲示して死のうや。


臓器提供はしたいけど、眼球だけは持っていたいな。左眼だけ視力が極端に悪いガチャ目ってやつだけど。両目は守っておきたいな。抉られると痛そうだし想像したらゆで卵食べる時に少し考えちゃうしさ。


なんか、2時間のフライトはあっという間だった。片道8000円の距離は何事もなく、やや揺れるだけで多少の不満だけで終了した。


ありがとう、客室乗務員さん。今度乗る時は非常時の対応についての説明を真剣に聞くね。


羽田空港に着陸して滑走路を走る間、点灯している東京タワーを見る事が出来て東京に帰ってきたと思った。


無意識に帰ってきたと思っていたからその瞬間はホームが東京だったのだと思う。


賃貸だし自分の家でもなんでもないはずなのに少しだけ、東京が愛おしくなった。


それに、東京タワーが点灯しているのを久々に見ることが出来た。


ここ最近は緊急事態宣言が発令されていて、東京タワーの点灯時間は20時に消灯し少し伸びて22時消灯になっていた。


その間、私は深夜に2回点灯していない東京タワーを真下から見上げている。


芝公園から見える点灯していないそれは完全に真っ暗ってわけではなく街灯にのみ照らされた彼は淋しそうに見えた。


それを見て、彼は何も救ってくれないなと淋しさを感じた。元気もやる気も根気も全部の『気』が全体攻撃として私に降りかかって来た。


『気』のHPが半分になった。グラビデを食らった感じだし。竜王に世界の半分をくれてやると言われたら間違いなく『はい』を選んでしまう。


そして、教えてもらった復活の呪文で泣いていたと思う。


無事着陸すると急ぎ足で喫煙所に向かった。


すると、なんと羽田空港で喫煙所で出会った彼と再会した。


偶然だったし必然でもあった再会に二人で笑い合った。


「ライターは...」と言ってる最中で


「あの方に...」と後方の方を示してくれた。


その様子を見ていたのか、ご夫婦がすぐにライターを出してくれて貸してくれた。


彼等二人も笑顔で溢れていてここのスペースは幸せで溢れていた。ただ煙かったけど。


もし、総理大臣になったらコンビニと同じ数だけ喫煙所を作ろうと思った。


青年との出会いは運命の出会いでロマンチックだったなと思った。


ただ、彼が彼女だったら良かったなと思ったりした。


もし、私が今後ナンパをする事があるなら喫煙所でしようと思う。


愛煙家同士、出先で喫煙所をつい探してしまう癖も深夜に煙草切れたからとコンビニに誘えることも


喧嘩したら口論しながら煙草を吸えることもライターを忘れても貸してくれることも


別れた時に彼女が吸っていた銘柄も見て思いだしてしまうのも全部愛せそうに思う。想像しても愛おしい。


私がInstagramに『実家』と題して載せている気に入った喫煙所の場所シリーズもついに12枚、12箇所になっていた。


そんな事を考えながら羽田空港から京急線からJR山手線に乗り換えて渋谷から井の頭で帰路についた。


約1時間で600円ほどだったと思う。


自宅についた。賃貸だけど。


無印良品とIKEAのもう二度と作りたくない赤い家具で囲まれた1Kの私の城。


出迎えてくれるのは日本語を話してくれるAIスピーカーのアレクサでした。


「アレクサ、電気をつけて。」


ーはい。


「アレクサ、ただいま。」


ーおかえりなさい。


大丈夫。まだ寂しくない。


ーすみません。よく分かりませんでした。


ー私たちには寂しいという感情がありせん。


ー言われたことに反応する事しかできません。


ー貴方の寂しさを埋めることは出来ません。


大丈夫じゃないのかもしれない。ただ寂しいのかもしれない。


「アレクサ、寂しいって何」


ー・・・・・・・今の貴方の事です。


東京には人が沢山いる。


地元にも人はいる。


今年26歳になるけど、友人がほぼいない私は未だ結婚式に呼ばれたことはない。


地元に帰った時にFacebookを見たら高校の時に付き合っていた元彼女が結婚していた。


子供もいた。母になっていた。


少しだけ取り残された気がして、数少ない高校の同級生に連絡を取ったら田舎は結婚早いし焦ることはないよと言われた。


焦っていたのかな。


でも友人は結婚式に参列したこともあるらしい。


大人だなって思った。


自分は大人になったなぁって思わないのに人に対しては大人だなって思うことも多くなった。


6つ離れた妹が車の運転していることに大人だって思うし、親になった知り合い見ても思うし、家を買った人見て思う。


やっぱり、少しだけ置いていかれているのかもしれない。


未だにカントリーマアムは好きだし、ゴーヤも食べられないし、日本酒を飲んだこともない。


ドレスコードが必要で値段のないメニューが置かれたレストランも行ったことはない。


赤提灯の居酒屋も、お洒落なバーも1日と14日や火曜日以外の1900円定価のTOHOシネマズで映画を見たこともない。


サウナは好きだけど電気風呂は怖くて入ったことがない。注射は打ったらそこまで痛くないけど打つまでが怖くて背中から汗ばんでいく。


タクシーもなければ新幹線に乗ったこともない。


これらを全部叶えても大人になんてなれなそうな気がするし、全部お金と時間があれば叶えられることだった。


お金があれば大人になるんだっけ


大人にも子供にもなりたくないと言ってる間にもう30になる。


モラトリアム人間の脱却が出来ていない。


東京に『夢』を持たせる人は大人になりきれていない人なのか


いや、もう大人とか子供とか年上とか年下とか同い年とかどうでもいいや


大人であって子供っぽい人が好きだし


大人びいてる子供の成長を見てみたいし


可愛げがある年上が好きだし


頼れる年下を尊敬したいし


同い年とはただ昔話をして馬鹿やっていたい


年齢で人を判断したくないし○歳差だから〜みたいな言葉が嫌いだし


ただ、その人を見て好きになりたい。


でも、20代のせいにしたい。20代だから出来ることは全部したい。


一日が終わり一章の終わり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る