まよなかのほん

犬鳴つかさ

まよなかのほん

 かみさまが

 めをゆっくりとじる。


 ふりそそぐかがやきが

 だんだんと

 だんだんと

 ちいさくなって──。


 よるが

 はじまる。


 よるがはじまると

 かみさまのかわりに

 めをあけるなにかがいる。

 さて

 なんでしょうね?


 わからないよね。

 かみさまじゃないからね

 しかたない。


 あなたも

 めをさます。

 おとうさんも

 おかあさんも

 おきていない

 まよなかに。


 トイレにいきたくなって

 のどがかわいて

 なんだかよくわからないけど

 めがさめる。



 ゆめにいるようなきぶんで

 ぼんやりあるいてる

 そのとちゅうで

 はっとしてふりかえる。

 だれもいないよ?



 したいことがおわって

 あなたのあたまはすこしおちつく。

 じぶんのへやにかえりながら

 あたりをみる。

 なにもいない。

 おとも

 じぶんのあしおとと

 れいぞうこの

 じーーというこえいがい

 なにもきこえない。

 それでも

 あたりをみる。

 それでも

 なにかにみられている。



 じぶんのへやにもどってあなたは

 すこしあんしんする。

 ねどこにはいって

 めをとじる。

 でも

 ねむれない。

 とけいのおとがきになって

 からだとあたまがむずむずして

 ねむりかたをちょっとわすれちゃって

 やっぱりなんだかみられているきがして

 ねむれない。



 だれが

 どこから

 みてるんだろう

 あなたはどうしても

 きになって──きにしちゃだめなのに

 さがしはじめる。

 めをぱちぱちさせて

 ぼうっとしていたみみをすます。


 とけいのおと。

 あなたのこきゅう。

 しんぞうのおと。

 みみなり。

 クローゼットからきこえる

 かたん

 というおと。



 そこ、そこだよ。

 でも

 みちゃだめだよ。


 それでもあなたは

 クローゼットにむかってあるく。

 だめだってば。


 なのにあなたは

 あけてしまう。

 おそるおそる

 ゆっくりと

 そのとびらを。

 あーあ。









 ほら、








 いる。








 こわいおじさんが──あなたをみてわらっている。




















 きょうのまよなかに──おもいだしてね?

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まよなかのほん 犬鳴つかさ @wanwano_shiba

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