15-4
この日、アーデルトラウト王国国王直属騎士団はまたひとつ功績を立てた。国と脅かす可能性のあった「ルーヴレヒト騎士団」を、ひとりの欠落もなく捕らえたのである。それは、ベルンハルトが団長になってからの最高位の功績と言える。癒し手がユグドラシルの召喚に成功したことは、功績には含まれていない。彼の存在を公にすることは、彼にとって不都合なことだからである。
ルーヴレヒト騎士団、その総勢およそ三十余名。アーデルトラウト王国国王直属騎士団及び国王直属魔法隊を合わせると、ルーヴレヒト騎士団とほぼ同じ勢力となる。しかし、戦力という点に関してはまったく異なる。ルーヴレヒト騎士団はごろつきの集まりでしかなく、精鋭の騎士、魔法使いたちに敵うはずもなかったのだ。しかしそれも、騎士隊と魔法隊がルーヴレヒト騎士団のごろつきたちを傷付けることが許されていた場合の話だ。
殲滅命令であったなら、騎士隊も魔法隊も苦せずして任務を終えるころができただろう。そもそも、捕縛命令でなければ、総勢およそ三十余名のごろつきに、騎士二十余名、魔法使い十数名も必要ないのだ。
ルーヴレヒト騎士団を一網打尽にした魔法をエメが発動させたことは、アーデルトラウト王国国王直属騎士団及び国王直属魔法隊にとって僥倖であった。ただし、それを口外することはできない。箝口令が敷かれており、軽々とそれを破れば、犯人捜しが始まるからだ。犯人捜しは巻き込まれた人間の恨みを買う。不要な物を買う必要はないのだ。
ルーヴレヒト騎士団を傷付けずに捕らえること、それは王令である。これは、前回の作戦時に発覚した事実を基にしている。それは、傷の回復の遅さである。
前回の作戦で捕らえた盗賊団は、騎士隊により受けた傷の回復が異様に遅かった。これは、エメの力を利用していたためと思われる。スキルに頼って傷の回復を繰り返した結果、自身の治癒力が衰えたのではないか、と。それはルーヴレヒト騎士団とて同じ可能性がある。要は、捕虜の傷を癒すために手間をかけていられないのだ。
その結果、苦戦することにはなったが、騎士隊及び魔法隊にはほぼ被害はない。厳しい任務であっても遂行できるのが国王直属騎士隊及び魔法隊である。
だが、その事実を知るのはラース、ニコライ、エミルだけだ。エメのスキル【癒し手】を知る者は多いが、大々的に公表することはできない。無傷で捕らえよという命令の意味を、明確に伝えることはできないのだ。それでも任務をこなすのが、国王直属騎士隊及び魔法隊の役目である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます